安全保障関連法は19日未明に採決されたが、連日国会議事堂前や全国各地で反対のデモが開かれている。デモに集まる人は無数におり、来た理由もさまざまだが、このデモをつくりだしているのは、誰か。私たちはどのような社会をつくってきたのか。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

18日夜、時折雨が降ったが、安保法デモに集まった人の熱気は増すばかり=9月18日、国会議事堂前で

18日夜、時折雨が降ったが、安保法デモに集まった人の熱気は増すばかり=9月18日、国会議事堂前で

学生団体SEALDs(シールズ)などは9月18日、国会議事堂前で安全保障関連法案に反対するデモを開いた。複数の団体が反対の声をあげるなか、シールズよりも若い高校生の団体がいた。その団体を立ち上げた高校2年生は、「大学生が声をあげる姿がかっこよかった。高校生でも何かできないかと思った」と話す。

高校生からなる団体の名称は、T-ns SOWL(ティーンズソウル)。代表は高校2年生で16歳のジョーさん(仮名)。ジョーさんは友人に連れられて、安保法デモに参加したとき、「声をあげる姿がかっこいいと思った」と話す。高校生世代としても動きたいと思い、7月初旬に団体を立ち上げた。SNSを使ってメンバーを募り、今では60人弱が所属する。

「安保法は、大学生よりも高校生にとって重要な気がする。冷笑しているだけではあぶない」と一人ひとり考えて、声をあげることを同世代に訴えた。

6人に1人が月14万円の家庭

ジョーさんは「首都圏高校生ユニオン」の立ち上げにかかわったメンバーの一人。首都圏高校生ユニオンでは、高校生からアルバイトに関する悩み相談などを行う。アルバイトでノルマを求められたり、強制的にシフトを入れられたり、賃金の不払いなど、高校生の無知につけこむ「ブラックバイト」へ対抗する。

高校生からなる労働組合(ユニオン)ができたのは初めて。このような組織ができた背景に、貧困がある。働く高校生たちの多くは、一人親家庭で、経済的な事情を抱えている。ネット上では、「アルバイトなのだから辞めたらいいのに」という意見もあるが、家庭の経済的事情を抱える高校生からすれば、「親の負担をできる限り軽減させたい」と、毎月の収入が途絶えることは厳しい。

日本の子どもの貧困は、16.3%(厚生労働省)で、年々割合は増えている。貧困の基準は、親と子どもの2人世帯で年に173万円(月約14万円)で、このような収入で暮らしている子どもが6人に1人いる。この割合は先進国の中でもトップクラス。子どもの貧困は次の世代にも連鎖し、少子高齢化など社会問題を生み出している。

国からの支援も乏しく、対GDP比における公的教育支出は、2005年から2011年までOECD(経済協力開発機構)のなかで、最も低い。

デモに集まる人の理由は、「戦争反対」だけではない。「民主主義のあり方を問いたい」という人もいれば、「友人に誘われたから」「今日仕事が早く終わったから」などという人もいる。そして、その無数にある理由の背景の一つに、「貧困」がある。デモをつくっているのは、誰だろうか。

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