すると混雑の渦中で、声を張り上げて、「家族計画」についての説明をする助産師の姿が。しかし、それに耳を傾ける人はほとんど居ない…。スタッフの男性が、名前を呼んで、登録の済んだ家族カードを返しながら、予防接種の部屋へと案内していくが、人ごみはなかなか減る様子はない。混雑への不満をドクターに投げかける女性もいて、殺伐とした雰囲気が流れる。

ようやく隙間が見えてきたのは、昼の12時を過ぎた頃だった。結局、(実質の)閉院時間の昼の2時になるまで、人は絶えることがなかった。「どうしたら、この混雑を緩和できるだろうか」という思いと共に、「わが子に予防接種を」と言う子どもへの愛情をひしひしと感じた一日だった。

保健センター内の掲示板

保健センター内の掲示板

僕らの受け入れ先であるマンベジ保健局は、マンベジ郡にある20ヶ所の保健センターを統括している。それぞれの保健センターでは、簡単な治療、予防接種、家族計画、妊産婦健診、歯科、健康教育といったサービスを提供していることになっている。家族カードさえ見せれば、薬も含め、全てが無料という素晴らしいシステムだ。しかしながら、多くの人は保健センターではなく、民間のプライベートクリニックに行く。理由はその質にある。

病人が来た際、ドクターは診断をして薬を渡す。しかし、難しいものについては、マンベジ市にある公立病院への推薦書を書いて渡す(紹介書がないと病院での治療は受けられない)。だが、保健センターはもちろん、病院でさえも薬が十分でないのが実情だ。人口10万人をカバーする大きな保健センターでさえそうなのだから、人口4000人の小さな保健センターでは薬など無いに等しい(そういうわけで、町の至る所や病院の近くには薬局があり、患者は自腹で薬を買っている)。

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