アクセンチュアはこのほど、大手企業とベンチャー企業の協業に関する調査結果を発表した。同調査では、82%の大手企業がスタートアップやベンチャー企業から「デジタルを強みとした企業へと転換する方法を学びとることができる」と答えたが、ベンチャー企業では、大手企業との協業に関して課題を持っていることが分かった。オープンイノベーションを阻害する要因とは。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

アクセンチュアはG20若手起業家連盟と共同調査を実施し、ベンチャー企業と大手企業の協業や、イノベーション創出に対する視点や傾向を調査した。調査はオンラインで行い、1002名のベンチャー企業社員と1020名の大手企業役員を対象とした。加えて、20人の企業経営者へインタビューした。

大手企業とベンチャー企業とのコラボレーションは、大手企業による単なる資金援助に留まらない。社内ベンチャー制度の導入や、育成モデルが取り入れられ、今後はデジタル領域における協業が進展することが予測されている。しかし、大手企業とベンチャー企業では協業に対して異なる課題がある。

同調査では、78%の大手企業が「ベンチャー企業との協業は自社成長・変革に重要、または必須である」と答える一方で、同様の回答をしたベンチャー企業は67%だった。41%の大手企業が、「ベンチャー企業は本気で自社の成長に向けた支援をしてくれている」と答える一方、「大手企業は自分たちの成長に向けて真剣に取り組んでくれている」と回答したベンチャー企業数はわずか24%となった。

さらに、「相手企業が協業に貢献していない」と答えた大手企業は7%に留まっているのに対して、同様の回答をしたベンチャー企業数は4倍(29%)に達した。

同調査では、このギャップが存在する一因として、企業文化の違いを挙げている。75%の大手企業が「ベンチャー精神に対して十分に理解している」と回答している一方、大手企業での勤務経験を持つ75%のベンチャー起業家は「大手企業を退職した理由は、起業文化を育成する環境が無かったため」と答えた。

アクセンチュアの試算では、G20各国における大手企業とベンチャー企業の間で、デジタル領域における協業が進展すると、世界のGDPの2.2%に相当する1.5兆ドルの成長機会をもたらすことが判明した。協業を成功させている上位20%の企業群は高い収益成長を実現しており、もし全てのベンチャー企業と大手企業が上位20%と同等レベルの協業を実現させた場合、ベンチャー企業の収益性は3~18%、大手企業も2~16%の収益増加が見込まれる結果となった。

アクセンチュア オープンイノベーション部門のマネジング・ディレクターを務めるジテンドラ・カヴァテカルは、同調査結果を受けて、「オープンイノベーションは、協業が自社のやり方や前提、あるいは自社の利益のみを追求すると続かないという事実を、大手企業が理解することから始まる」と述べた。「デジタルによる創造的な破壊を成功させるためには、広範なパートナーとの協業を進化させて多くのアイデアを具現化させ、ベンチャー企業が直面する課題から多くを学び取る姿勢が重要である。変革を実現するためには、デジタルで連携されたネットワークに多くのプレーヤーが集まることも必要」。

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