東日本大震災――この時、国内だけでなく海外からも様々な支援が行われていた。慈済基金会そのうちのひとつだ。慈済基金会は被災者の手に直接見舞金を渡していた。慈済基金会とはどんな団体なのだろうか、そんな疑問を持ち、私たち被災地支援のための市民メディアプロジェクトは、この慈済基金会の方々にお話しを伺うため台湾へ向かった。(学生による被災地支援のための市民メディアプロジェクト支局=細川 楓・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

静思語といわれる證厳法師の言葉が記された貯金箱

静思語といわれる證厳法師の言葉が記された貯金箱

市場に買い物に行くときに5銭を節約して竹筒に貯金する。月の終わりに集まったお金で貧困で苦しむ人に手を差し伸べる。このほかにも、ご飯を炊くとき、一握りのお米を壺の中に入れる。こうして貯められた壺のお米は食料で困っている人に分けられる。

證厳法師が立ち上げたこの慈済基金会は、50年ほど前に4人の弟子と30人の主婦が行っていたこの小さな行いから、現在では台湾で仏教をベースにした巨大なボランティア組織へと成長した。

竹筒貯金は今でも形を変えて行われており、貯金箱にお金を入れいっぱいになったら慈済基金会に持ってくる。こうして集められた資金は災害地域の援助等に役立てられている。決して、慈済基金会を支える尼僧が使うことなく、すべて支援にあてられるそうだ。

では、尼僧はどのように生活しているのだろうか。

200名ほどの尼僧全員が生活する「静思精舎」という場所を訪れた。尼僧は毎朝3時に起床し、4時20分からお経を唱え、5時20分からは證厳法師の説法が始まる。6時20分に朝食をとり、7時には世界中で行われているボランティアについての話し合いを行う。日中はそれぞれ日ごとに決められた担当の作業に取り掛かかり、掃除や炊事、畑仕事だけでなく、台湾各地に存在する支部での説法や、静思精舎への来客のもてなし、隣接している工場での作業など様々である。

畑仕事をする尼僧

畑仕事をする尼僧

工場では石鹸やろうそく、アロマグッズ、提灯、災害時にガスや電気が無くても食べられるアルファ米などを製造し、尼僧が生活するために必要な資金を得ている。

工場で生産された食品

工場で生産された食品

そのため、畑には食事に使われる食材以外にも、石鹸やアロマに使用するハーブなどがたくさん育てられていた。また、調理の際に出る生ごみや、枯葉などを集め、肥料にする。これを利用し、つくられた作物は、化学肥料を使っていないため、体に安全な作物ばかりである。その他にも不要になった袋をごみの分別の袋として利用するなど、普通ならごみになってしまうものさえ再利用し、ものを大切にすることが徹底されている。

慈済会ではリサイクルが徹底されており、尼僧にはリサイクルの作業も存在する

慈済会ではリサイクルが徹底されており、尼僧にはリサイクルの作業も存在する

このようにして、静思精舎ではものを大切にし、自給自足の生活を送っている。これを「自力更生」という。自給自足で得たお金の一部は尼僧の生活費にもあてられるが、使わなかったお金は寄付しているそうだ。

寄付したお金が確実に支援に利用されるという透明性から安心して支援のためのお金を託すことができる。そのため慈済基金会ではお金の管理がとてもしっかりしているのだという。

私たちは取材時に竹筒に見立てた貯金箱をいただいた。私たちが「日本支部へ届けます」と言うと、慈済基金会の方は「集まったお金は慈済基金会ではなく他の慈善団体に寄付してもいい」と私たちに言った。私はとても驚いたが、それは、「困っている人を助ける」という同じ思いが根底にあるからではないかと感じた。

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