Magadipita連載記事第三弾は、パタゴニア日本支社長辻井隆行氏の講演レポートと講演後に行った本社での取材の模様をお送りする。パタゴニアのこれまでの環境保護に関する取り組みを通して、現代社会に求められる視点は何なのだろうか。(MAGADIPITA支局=久保田 惟・慶應義塾大学総合政策学部1年)
■Patagoniaのいままでの取り組み
〈前回のインタビュー記事〉「なぜイヴォンは日本に支社をつくったのか」
辻井氏が前回のインタビューの中でも、パタゴニアの理念に対する思いを述べている。講演の中で語られたのは、「企業としての責任(CR)」(https://www.patagonia.com/jp/environmentalism)に基づくパタゴニアとしての強い想いだ。アウトドア用の衣服メーカーとして、活動を続けている限りは、環境に何らかの影響を与えている。だからこそ、常に環境に対する配慮はもちろん、環境保全活動の支援を収益に関係なく続けていかなければならないと辻井氏は話す。
パタゴニアは1990年代初頭から、オーガニックコットンへの移行を進め、96年以降はオーガニックコットン100%の製品を消費者に提供している。(動画参照)グローバル企業としての規模が大きくなればなるほど、サプライチェーン全てを管理するのは難しくなる。その中で、Patagoniaは「ビジネスを使って環境問題に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」というミッションを掲げ、サプライチェーンの環境負荷を最小限に抑える努力を続けてきた。
(オーガニックコットン100%:https://www.youtube.com/watch?v=Ls6ZWsEFBXA)
講演では、前回のインタビューでも語られていた長崎県石木ダムへの啓発活動を取り上げ、事実を知ってもらうことの必要性が語られた。建設を推進している行政の主張と、客観的なデータが示す事実には大きな隔たりが生まれている。そのような現実の対立をどのように知ってもらうのか。この問題に対して、当事者である個々人が考え、思考することが重要になる。何かを得るということは、何かを失っているということ。そんな当たり前なメッセージに考えさせられた人は多いだろう。
■人が持つ利他的な性質に火をつける
今回、社員の方々にもお話を伺う機会をいただいた。プライベートでもアウトドアスポーツを通した交流があるそうで、辻井氏の人柄やビジネスだけではない暖かな人間関係を感じることができた。社員の多くはアウトドアスポーツに親しみ、環境問題への意識も高い。
辻井氏によると、個人が持つ価値観と組織全体の理念とのつながりを発見することで、多様なアプローチを生むことが可能になるという。そのために、辻井氏は個々人とのコミュニケーションを重視し、そこから意見を直接吸い上げることが必要になると話す。人助けをする、環境を守る。これらは、深層的な利他的な想いから生まれているのだ。利他的な想いに本人が気付き、アクションするか否かに大きな違いが生まれてしまう。それに気づくきっかけは、人との対話や本、映画など様々だ。その中でも、他者との交流を通しての変化を促すことが重要だ。組織のトップが一人で全ての社員との交流を持つことは難しい。そのような意識を持つ上司の存在を増やせるような仕組みが必要になる。組織規模が拡大してもオープンなコミュニケーションを保ち、個々人との対話を生む組織作りが今後の課題になると辻井氏は話す。
■これからを生き抜くための「バランス感覚」
辻井氏は、自分らしい支援を続けることの重要性を述べていた。エシカルな商品を使うことで得られる自己満足や、「いいこと」をした時の満足感は矛盾を抱えていることも大いにある。正しい、間違っている、そんな視点で物事を判断するのは簡単だろう。そのアクションは、どのような目的意識のもと生まれたものなのか。中庸という考え方のもと、共存を生むことで、それぞれが持つ目的に近づいていくことが重要なのだという。
自分のアクションを0か100で考えるのではなく、自分なりのバランスを見つけることが重要になる。自分自身にその時の行動の意義を問いかけ、思考する時間を作ることが、利他的な想いの火種を見つけるきっかけにもなるのだろう。まず、自分らしくできることを見つけて、一つずつ自分の考えに落とし込むことが、自分の人生をより良いものにするためには必要になると強く思った。次回は、1月10日にANA「Blue Wing」の深堀昴さんの講演をリポートする。
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