東京の大企業に就職することが人生の成功だった時代は変わりつつある。大企業も安泰とは言いきれない現代では、自分のスキルをどれだけ高められるかが自立の鍵だ。「都市は依存型、地方は自立型」と言われるように、なんでも自分でやる地方での働き方が、己のスキルや生きる力も高めることにつながるだろう。厚生労働省は、地方人材還流促進事業、通称「LO活(Local+就活)プロジェクト」をスタートし、地方就職に特化した情報サイト「LO活」や、地方就活セミナーを開催。地方就職に関心のある学生へ適切な情報を届けるサポートを行う。(辻 陽一郎)
■地方就職のきっかけになる情報サイト「LO活」
情報サイト「LO活」は、道府県の企業情報だけでなく、地方で就職した先輩のインタビューも多数掲載しており、現地へ行かなくても働くイメージを持つことができる。就活を始めたばかりの学生向けに、タイプチェックや地方就活ノウハウの情報もある。
LO活の事業監督者である野原斗夢さん(インテリジェンス NEDディビジョン 公共事業部)は、「東京や大阪の就職・企業情報は取得しやすいですが、地方の情報は圧倒的に不足しています。LO活を見て地方就活ってありかなと思ってもらえるように、必要な情報を送り届けることが目的です」と話す。
以前に比べ、現在は、社会に貢献したい人や自分の成長につなげたい人が地方を選ぶ傾向にあるという。
例えば、LO活の悩み相談企画に登場した女子学生は、「一次産業を盛り上げたい」と、大学で農業を学びながら将来は地方へのIターンを検討している。
東日本大震災の被災地や、衰退する地元を見て、自分の手で盛り上げたいとUターンする学生も増えている。金銭的なことだけではなく、自分の生き方、働き方を大事にする人が地方就職を選択しているのだ。
■地方就職のメリット・デメリット
地方は給料の面で、都市と比較して低い傾向にある。だが一方で、野原さんは金銭的なメリットもあると言う。「まず、家賃が安いことはメリットです。地域によりますが、東京の半分くらいで住むことができる地域も多いですね。それから、奨学金の返済免除など自治体ごとに金銭的な支援制度も充実していることも魅力だと思います」。
地方の企業で働くメリットとして、「地方では人が少ないということもあり、能力がある人にはどんどん仕事が任される傾向にあります。若いうちから多くの経験を積むことができるので、実は、地方の方が成長スピードが早いとおっしゃる方も多いですよ」と説明する。
暮らしの面でもメリットがある。家賃や物価が高く、出費がかさむ都市では、稼がないと不安になってしまう方が多いのではないだろうか。しかし、地方では比較的出費を安く抑えることができ、地域の人間関係が密であるので、子育てをしやすいと感じる方も多いようである。
また、「情報格差があるのでは」という心配の声も聞くが、最近ではインターネットや交通機関の発達によって、情報格差は小さくなってきたと考えられる。
■地方就活をはじめるために明日からできること
「就職活動で一番もったいないと感じるのは、限られた選択肢の中でのイメージだけですべてを決めてしまうことです。自分の視野を広げて、将来の選択肢をたくさん持つことを意識してほしいと思います。その過程で、業種や職種を選ぶのと同じように、はたらく場所についても広く考えて選んでほしいですね。結果的にそれが自分の価値観により合った選択に繋がると思います」と野原さんは言う。満足のいく就職をするためには、「なんとなく人気がある企業を選ぶ」のではなく、一人ひとりが自分の価値観にあった仕事を選ぶことが大切だ。
最後に、野原さんから就活のアドバイスを聞いた。「家族や先輩など身近な人だけではなく、10年以上働いている社会人からの話も意識して聞いてみることが大切です。身近な人と違って、仕事について客観的に教えていただけるケースが多い。それから、なるべくキーワードでインターネット検索をしないことも大切ですね。キーワード検索だと、自分が関心のある分野の情報収集に閉じてしまいがち。新聞を呼んだり、ニュースサイトを読んでみたりと、自分の行動を変えることを意識してみるといいですよ」。
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