業務用音響機器・映像機器メーカーのTOAは1月28日、子どもが生演奏に合わせて自己表現するワークショップ「TOA Music Workshop」(以下TMW)を、川崎市の夢見ヶ崎小学校で開いた。社会貢献活動の一環で、実施は通算82回目。韓国の伝統打楽器に乗せて子どもたちが体を動かすユニークなワークショップは、自分の殻を破って自己表現できるのが特徴。参加した小学生は「ダンスは苦手だったけど、今日は面白かった」と笑顔を見せた。(オルタナS関西支局長=神崎 英徳)

楽器の奏者とダンサーが一体となって会場を盛り上げる

楽器の奏者とダンサーが一体となって会場を盛り上げる

■生きた音楽に合わせ、自然と体が動き出す!

「今日は、いつもと同じ体育館がダンスステージに変わります。心も体もいっぱい使って、楽しい時間を過ごしましょう」。プログラムの開始とともに、シンギングボウルの音だけが静かに鳴り響き始める。まずは演奏が流れる中で心を静める「リラックス」のパート。次に2人のダンサーにリードされながら、子どもたちが音に合わせて体を動かすパートへと移る。やがて演奏に乗って歩く・止まるを繰り返す「リズム」、ダンサーを真似ながら踊る「マネダンス」、そして自由なダンスで自分を表現する「クライマックス」へとのぼりつめていく。「動いて、動いて!」「ホップ、ホップ!」。リズムと動きとダンサーのかけ声に導かれて90分を終えたとき、最初は固かった子どもたちの心と体は、すっかりほぐれている。

このワークショップが異色なのは、単にダンスを踊るのではなく、音楽に合わせて自分の心を解放し、「新しい自分」を発見していく点。生の音楽とダンスに引き込まれ、仲間との盛り上がりを経験するなかで、自然と心身が解きほぐされるところが人気を呼んでいる。

夢見ヶ崎小学校でこのワークショップを実施するのは、今回が2度目。前回のワークショップで、子どもたちがはじけ方や殻の破り方を覚え、その後の学校行事でもクラスの一体感が高まったことが、再度の実施につながったとみている。

韓国打楽器プクは、日本の祭り太鼓に近い音。子どもたちもノリノリに

韓国打楽器プクは、日本の祭り太鼓に近い音。子どもたちもノリノリに

■ライブという「体験型音楽」を味わってほしい

スマホや音楽ダウンロードが普及し、音楽は「テレビやオーディオで楽しむもの」になった。しかし、TOAが2011年に行った意識調査によると、親が子どもたちに体験させたいのは、メディアを通じての音楽ではなく、ライブやホールなどで体感する臨場感のある音楽。また、そうした音楽を体験できる場として期待するのは、「学校」が61% と最も多かった。

加えて、2011年以前の意識調査では、心の豊かさを育てる教科として「音楽」が1位になっている。心の豊かさは子どもの生きる力につながることから、学校を舞台にしたTMWのような取り組みが、今後さらに注目を浴びそうだ。

夢見ヶ崎小学校の教師の一人は、「子どもたちが生演奏の迫力に引き込まれるなかで、しっかりと自分の表現をしていて驚きました。子どもたちそれぞれが、何かを発散できたのではないか」とコメント。TOA横浜営業所所長の岡崎和徳さんは、「自分たちが提供する音響機器や音楽で子どもたちが喜んでくれたことを実感できました」とうれしそうな様子だった。

同社は、音響機器メーカーの特色を活かした社会貢献活動として、子どもたちに音楽を届ける活動を1998年から行っている。TMWはその一つで、2008年には、NPOと企業の優れた協働事業を表彰する「パートナーシップ賞」(主催:パートナーシップサポートセンター)を受賞。2010年には、芸術・文化の振興活動を評価する「メセナアワード2010文化庁長官賞」(主催:企業メセナ協議会)を受賞している。

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