今年でスタートから10年目を迎える「キッズデザイン賞」(主催:特定非営利活動法人キッズデザイン協議会)。子どもの創造性を育て、子育てしやすい環境づくりに貢献した商品・サービスを表彰する制度だ。2月2日には、関西初となるシンポジウム「キッズデザインミーティングin KANSAI」がグランフロント大阪で開かれた。企業関係者ら約120人が参加し、「優れたキッズデザインとは何か」について考えた。(オルタナS関西支局特派員=小倉 千明)

会場の別スペースには、キッズデザイン賞受賞作品を展示。実際に手に取ることができた

会場の別スペースには、キッズデザイン賞受賞作品を展示。実際に手に取ることができた

■「成長する力を育てる家」「子どもの事故を減らす車」

キッズデザインが掲げるのは「安心・安全」「創造性と未来」「産み育てやすさ」の3つのデザインミッション。シンポジウムの冒頭、主催のキッズデザイン協議会会長 和田勇氏(積水ハウス会長)は、「キッズデザインの視点で世の中を捉えることは、日本の産業や社会にも役立つ。10年という節目の年にあたり、関西にも広めていきたい」と、意気込みを語った。

シンポジウム前半では、キッズデザイン先進企業でどんな取り組みが行われているかが披露された。 積水ハウスは、2000年から子どもの安全に特化した研究をスタート。その取り組みが評価され、9年連続で「キッズデザイン賞」を受賞している。シンポジウムで紹介されたのは、「子どもの生きる力を育む住まい」をテーマにした家づくり「コドモイドコロ」。発達段階に合わせて子どもの居どころをデザインし、子どもに備わっている「自ら成長する力」を育む住空間を提案している。

阪急阪神百貨店の「うめはんママプロジェクト」は、一般から募集した子育てママモデルとともに、ママを応援する商品や売場作りをするプロジェクト。自分らしく子育てする今どきのママたちが、自らイベント情報を発信したり、商品企画に携わることで、子育てを楽しんでもらうことが目的だ。百貨店の店員ではなく、一般のママがママのために子育てアイテムをセレクトするなどの斬新な取り組みが報告された。

マツダは、子どもの安全・安心に配慮した自動車技術「マツダ・テクノロジー・フォー・キッズ」を紹介。子どもの巻き込み事故を減らすサイドモニターやドアミラーなど、子どもの事故を減らすものづくりが注目を集めた。

各社のプレゼンテーターたちが登壇し、ディスカッションは白熱。ミーティング後は、集まった参加者同士の交流会も開催された

各社のプレゼンテーターたちが登壇し、ディスカッションは白熱。ミーティング後は、集まった参加者同士の交流会も開催された

■キッズデザイン視点から描かれる豊かな暮らし

後半には、「キッズデザインで実現する暮らし・地域・社会」をテーマに、発表企業3社と経済産業省がディスカッションした。3社は、前半の発表内容をもとに、働く母親が活躍できる社会への期待や、安心で安全な子ども向け商品の確立に向けての近況を意見交換。これを受けて、経済産業省生活文化創造産業課の藤原宗久良氏は、「アジアの中で日本は、社会全体で子どもを大切な存在と捉える考え方が進んでいる。子ども目線でのものづくりは、アジア圏内で最も期待したい取り組みのひとつだ」と話した。

キッズデザイン協議会の高橋義則理事は「キッズデザイン賞により、自治体と企業との連携や、異業種同士のコラボレーションが活発化している。商品やサービスだけがキッズデザインではなく、子どもの未来を考えた社会づくりもまたデザインのうち。今後は『地域との関わり方』がキッズデザインの大きなテーマになりそうだ」とコメントし、シンポジウムを締めくくった。

第10回キッズデザイン賞の公募は、3月3日に開始。前年を超える1000点の応募を目指している。

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