植物工場という言葉をご存知だろうか。植物工場とは、土がなくても特殊な養液を与えることで栽培が可能になる「水耕栽培」という方法を利用した生産施設だ。土が要らないため、建物の中でも栽培が可能になり管理も比較的容易になる。ガーデニングや家庭菜園など、土に触れる機会を求める人が多くなる一方で、こうした近代的な農業の開発が進んでいる。
インターネットを経由したクラウド技術によって、水量や温度、栄養分が自動的に管理されるため、手間も掛からない。また、こうしたクラウド技術を菜園用だけではなく、太陽光発電パネルや他の家電管理とも組み合わせることによる、「家まるごと」IT管理を目指して開発が進められている。
装置の大きさは約1坪ほど、コンパクトでキッチン等にも設置できる。栽培できる野菜はレタスなどの葉物野菜が中心となる。種をまいてから収穫できるまでの期間は約40日間と、従来の栽培方法より約3割も短縮が可能だ。さらに、この装置を使って栽培したレタスには通常の約2.5倍のビタミンCが含まれていることがわかるなど、栄養価の向上も期待できる。
パナソニックと提携して開発を進めているみらい(千葉県松戸市)の嶋村友裕さんは、「従来よりも手間がかからないため、ペット感覚で野菜を育てる体験が出来ると評判で、現段階で既に注文も入っていると聞いている」と今後の展開に期待している。
食の安全や食育のことを考えると、「やっぱり自分の家で野菜も育ててみたい。でも手間を考えるとなかなか踏み切れない」という方も多いのではないだろうか。このミニ植物工場では、従来の手間を緩和しながら、自分の手で栄養価の高い野菜を作ることが出来る。コストには課題が残り、当面はリースでの提供が主となるが、この「近未来型家庭菜園」が一家に一台当たり前、という日が来るのかも知れない。(オルタナS特派員=原田恵)