フィリピンで路上生活をする子どもたちが3月15日、首都マニラでカフェをオープンした。同国では25万人以上の子どもたちが路上生活を余儀なくされており、定職をつけることで貧困からの脱却を目指す。開店を支援したのは名古屋市の認定NPO法人アイキャンで、2011年から子どもたちに職業訓練の取り組みを続けてきた。(辻 陽一郎)

カリエカフェグランドオープン

カリエカフェグランドオープン

「Kalye Café(カリエカフェ)」という店名で、マニラ都心のディリマン地区にオープンした。パンの製造や経営、会計などすべて路上生活をしている子どもたちが行う。子どもたちが自らの課題を、自分たちで解決していけるようにと、アイキャンは、2011年に子どもたちの協同組合を設立しトレーニングを続けてきた。組合には路上で暮らす子供たちが80人ほど登録している。

アイキャン海外事業部の中村由実子さんは、「路上でその日暮らしをしてきた子どもたちにとって、将来のために訓練するということは難しかった。時間はかかったが、確実に成長していった」と話す。

現在19歳になったメンバーの1人は、「路上にいたとき、大人から『君は、路上生活者だ。その生活はこれからも変わらない』と言われた。でも、僕は、この活動を通して変わることができた」とアイキャンのスタッフに話した。

フィリピンは経済発展が進み、高層ビルやショッピングモールが立ち並ぶ一方、富裕層と貧困層の格差が広がっている。マニラで路上生活をする子どもたちの多くが物乞いや売春をして、1日50~100ペソ(約100~200円)ほどを得て生活をする過酷な状況だ。

アイキャンは、こうした子どもたちに対して、日々の生活を支援するのではなく、生活自体を改善することを目的に活動してきた。カリエカフェがオープンしたことで、将来的には、フィリピンの最低賃金である500ペソを稼ぐことを目標としている。

カフェのオープンに携わった20歳の少年は、「路上にいた仲間と一緒にカフェをオープンできて、とてもワクワクしています。カフェは自分にとっての希望で、新しい人生の始まりです」と意気込んでいる。

カリエカフェの取り組みはまだ始まったばかりだ。これから多くの課題に直面するかもしれない。しかし、課題を自分たちの力で乗り越えていくことで、自信や生きがいにつながっていく。

中村さんは、「路上で虐げられてきた子供たちは自信を持つことが難しい。しかし、トレーニングを通じて一つずつできることが増え、自信につながっていく」と話した。

今後は、協同組合カリエが独立して運営していく。中村さんは、「この取り組みが路上で暮らす子供たちの希望となってほしい」と期待を込めた。子どもたちは手書きの新聞をカフェに置き、路上生活の子どもたちでも訓練次第で自立ができることを伝えていく。

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