「福島の復興にはムヒカさんの言葉が必要だ」――世界一貧しい大統領として知られているホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領に、アポイントなしで会いに行き、1時間に及ぶ独占インタビューを敢行したフリーライターがいる。ウルグアイ大使館やムヒカ氏の秘書に手紙で思いを伝え、約1カ月ねばり続けた結果、ムヒカ氏の私邸に招かれた。インタビューでは、福島と自然エネルギーなどをテーマに考えを聞いた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

マテ茶を飲みながら出迎えてくれたムヒカ氏。マテ茶は毎朝飲んでいるという 写真:平井有太

マテ茶を飲みながら出迎えてくれたムヒカ氏。マテ茶は毎朝飲んでいるという 写真:平井有太

ムヒカ氏へインタビューしたのは、フリーライターの平井有太さん(40)。平井さんは昨年11月、ムヒカ氏に取材を依頼するため南米に渡った。アポイントは取っていなく、ツテもなかったため、滞在期間は最長で1カ月と決めていた。

ウルグアイに着き、ムヒカ氏の私邸を訪ねたが、ちょうどそのタイミングで、トルコ、コロンビアへの長期外遊中だった。そこで、秘書に手紙を渡し思いを伝えた。その手紙には、どうして日本から取材しに来たのか、その理由をつづった。

平井さんは2012年から2年半、地産地消ふくしまネットの特任研究員として福島県福島市に住んでいた。放射能の影響で苦しむ生産者を間近に見てきて、「福島の復興にはムヒカさんの言葉が必要だと思っていた」と話す。

ムヒカ氏と会えたのは、予定していた滞在期間の3日前のことだった。夜に平井さんのもとへ1本の電話がかかってきた。電話をかけてきたのは、ムヒカ氏のガードマン。「明日の朝なら家で休んでいるから会える。来てみろ」という内容だった。平井さんは繰り返し、私邸に通い続けていたため、ガードマンとも顔なじみになっていた。

次の日の朝、ムヒカ氏の私邸を訪ねると、ガードマンの小屋に通され、そこにムヒカ氏はいた。「マテ茶を飲みながら迎えてくれた」と話す。インタビューの時間は1時間に及んだ。当初は30分を予定しており、取材の途中で、妻で上院議員のルシア・トポランスキー氏が「議会に行く時間よ」と止めに入ったが、「今、大切な話をしている。あとで行くから先に行っていてくれ」とスペイン語で返したという。

インタビューでは、福島県で起きた原発事故についてやエネルギー政策などについて聞いた。ウルグアイは欧州経済の低迷を利用し、自然エネルギーへの転換を実現した。同国の電力の約95%はクリーンエネルギーでまかなっており、世界屈指のエネルギー先進国だ。

福島の原発事故を起こした当事者の責任を追求できていないことに対しては、「市場原理が政策を支配する」とした。しかし、事故が起きるリスクがある原子力に頼ることへ疑問を投げかけた。「日本には優れた人材があります。技術力もあり、経済力もあります。それなのに、いまだに原子力を取り入れたエネルギー政策を続け、代わりとなるエネルギーの開発に消極的な事実に驚かされます。ドイツは思い切った決断をしました。ましてや原爆投下を被り、広島と長崎の悲劇を経験した日本が、経済的な要素を重視し、国民の想いを考慮しないエネルギー政策を進めていることは、信じられないことです」。

ムヒカ氏へのインタビュー記事は、みんな電力(東京・世田谷)が運営するウェブサイト「ENECT(エネクト)」で掲載されている。全部で3本あり、2本はすでに掲載されている。最後の記事は、ムヒカ氏が初来日する4月5日に掲載される予定だ。

・ムヒカ氏のインタビューはこちら

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