岡山県倉敷市は国産デニム発祥の地だ。同市の瀬戸内地域には、半世紀前から続く伝統ある工場が多く存在し、高級ブランドからの発注も受けている。しかし、ファストファッションの煽りを受け、それらの工場で働く生産者の待遇は、悪化する一方だ。この現状を打破するために、生産を請け負う工場自身がマネタイズやブランド戦略を行う動きが起きている。(MAGADIPITA支局=久保田 惟・慶應義塾大学総合政策学部1年)

瀬戸内の技術力を世界に発信するEVERY DENIM

瀬戸内の技術力を世界に発信するEVERY DENIM

生産工場には、華やかなデザインを実現するための、確かな技術力が求められる。瀬戸内のジーンズ工場は、技術力が評価され、海外の高級ブランドからの発注も数多く受けている。しかしそれらの工場の待遇は、ファストファッションの煽りも受け、悪化する一方だ。

アパレル業界では、産業構造の問題として、工場にしわ寄せがきてしまう。工場で生産された商品が消費者に届くまで、商社や卸などの仲介業者が入る。メーカーが消費者のニーズに合わせて、低価格な商品を好むほど、工場は安価に生産することを迫られる。

この環境では技術力を維持させることは難しい。現状を打破するため、生産を請け負う工場自身がマネタイズやブランド戦略を行う動きが起きている。

呼びかけたのは、瀬戸内の技術力を世界に発信する「EVERY DENIM(エブリデニム)」。共同代表の山脇耀平さんに話を聞いた。

地元、岡山の大学生ですら工場の存在を知らない現実があったと山脇氏

地元、岡山の大学生ですら工場の存在を知らない現実があったと山脇氏

■工場と消費者をつなぐ架け橋に

アパレル国内生産比率は1990年は50%だったが、続々と海外へ生産拠点が移され、2014年にはわずか3%になった。数多くの工場が経営難に陥る中、EVERY DENIMでは工場が持つ技術力を最大限に発揮し、消費者に魅力ある製品を届ける挑戦を始めた。
 
昨年、世界初の黒ベンガラを染料にしたジーンズの販売を行うため、クラウドファウンディングで資金を集めた。工場の生産者が開発の主導に立つことは例がなく、画期的なプロジェクトになった。伝統ある瀬戸内の技術が詰まった高品質のジーンズを、「生産者から消費者に」届けることには、大きな意味があると山脇さんは話す。

クラウドファンディングで資金を集めた、世界初の黒ベンガラジーンズ

クラウドファンディングで資金を集めた、世界初の黒ベンガラジーンズ

■納得できる商品を

普段、当たり前のように身につけている衣服。それらの衣服に込められた想いや、ストーリーを考える機会は少ない。一つ一つのモノに、愛着を持ち長く使うためにも、そのモノ自体について考えること、想いを馳せることは貴重な時間になると感じた。

モノを大切にする――当たり前で聞き慣れてしまったこの言葉。誰しもが持つこだわりや執着心を、今一度考えてみることがエシカルファッションの始まりなのかもしれない。

瀬戸内から発信される伝統と素晴らしい技術に込められた想いを日常の一着にする。そんなこだわりを持つ人々はどこかカッコよく映る。ファッションの新しい楽しみ方としてもこれからの「EVERY DENIM」の活躍に期待したい。

デニムの未来を見据える

EVERY DENIMは多くの壁に直面しながらもデニムの未来を見据える

知るドキドキワクワクを伝えるフリーマガジンMagadipita公式FBページはこちら☟

佐野氏05

[showwhatsnew]