「エシカルとは、良質な情報を嗅ぎ分ける感覚を磨き、より良い生活、社会のために選択していくこと」――。フォトグラファーの渡辺淳一郎さん(37)はそう考える。渡辺さんがこう考えるにいたったのは、北海道・ニセコで開かれたエシカルとオーガニックをテーマにしたキャンプに参加したことがきっかけ。エシカルについて頭だけで考えていくと、「堅苦しくなる」とし、自然の中で体感すると「一つの答えのようなものが見えるようになった」と話す。(オルタナS副編集長=池田 真隆 写真=渡辺 淳一郎)

フォトグラファーの渡辺さん。冬は山、春から秋はストリートでの撮影を行う

フォトグラファーの渡辺さん。冬は山、春から秋はストリートでの撮影を行う

渡辺さんは6月中旬、ニセコで開かれた「Ethical beauty camp」にフォトグラファーとして参加した。このキャンプを企画したのは、フードプロデュース会社SOF(北海道札幌市)。ゲストには、エシカルファッションやオーガニックの分野で活躍する第一人者を呼んだ。

日本最大のファッションとデザインの合同展示会「rooms」で、「エシカルエリア」を立ち上げた坂口真生さんやオーガニック・テキスタイル世界基準(GOTS)地域代表の三好智子さんら。参加者は、ニセコの自然の中で、心構え・行動力・外見・態度、さらに人としてのヒューマンシップの磨き方について学んだ。

渡辺さんは北海道札幌市生まれ。北海道新聞の記者として司法や安全保障をテーマに取材を続け、2015年7月に12年間勤めた同社を退社した。その後、家族でニセコに移住し、妻が営む日本茶カフェを手伝いながら、フォトグラファーとして活動している。

渡辺さんはこのキャンプに参加するまでは、エシカルに関してはそこまで精通していなかったという。「僕のキャンプはまず、エシカルとは何かを知ることがスタートだった」と振り返る。

キャンプ2日目の早朝に組み込まれた羊蹄山でのトレイル・ラン

キャンプ2日目の早朝に組み込まれた羊蹄山でのトレイル・ラン

当日、手渡された資料にエシカルについての説明が書かれていた。そこには、エシカルとは、倫理的・良心的という意味を持ち、地球や社会に配慮した選択をすることと記載されていた。しかし、これだけでは、「何だか堅苦しい」と感じた。

だが、キャンプの豊富なメニューに触れていくうちに、「一つの答えのようなものが見えるようになってきた」(渡辺さん)。「情報が過剰な現代では、感覚は鈍りがちだ。エシカルとは、良質な情報を嗅ぎ分ける感覚を磨き、よりよい生活、社会のため選択していくことなのではないか」。

キャンプ中に、ニセコでオーガニック農園「LaLaLa Farm」を営む服部吉弘氏から聞いた言葉も胸に響いた。服部氏は、「その選択基準はシンプル。好きなこと、ワクワクすることを目指せばいい。そうすれば、自分も周りもハッピーになる」。自然循環生産にこだわりを持ち、野菜を通して人々に笑顔を届けてきた経験から出た言葉には説得力があった。

しかし、良いものだとは分かるが、経済的な理由などからそれができない人もいる。こういった人たちへのアプローチをどうするかが今後の課題だ。

一般には、まだ馴染みがない「エシカル」という価値観。今後さらに普及させていくためには、「明確なビジョンが必要。そこにあるのはビジネスだけではない。指導者たちのピュアな熱意があってこそ、共感の輪が広がる気がしている」と考えた。

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