すべてが土に還せる天然素材で作られた服がある。生地は100%天然素材で、ボタンは木や貝でできている。この服をプロデュースしたのは、ミリオンヒットを7回達成した実績を持つ四角大輔さんと人気モデルの鎌田安里紗さん。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

タイの生産者から作り方を教わる3人、右から、四角大輔さん、鈴木弘美さん、鎌田安里紗さん

タイの生産者から作り方を教わる3人、右から、四角大輔さん、鈴木弘美さん、鎌田安里紗さん

この服はアパレルブランド「Atelier Fuwari(フワリ)」のアイテム。キャッチフレーズは、「誰も傷つけずに、すべてを土に還せる」だ。種類はユニセックスのサルエルパンツと、レディースのサロペットの2種類。

Fuwariを立ち上げたのは、埼玉県志木に住む鈴木弘美さん。タイに生産拠点を持ち、天然素材を使った服作りを行う。農薬をほとんど使わないリネンは日本、イタリア、フランスから取り寄せる。国産のオーガニックコットンを使用し、手作りで丈夫なため長く着続けられる製品が自慢だ。

ブランド名を「フワリ」としたのは、「心も身体もふわりとしていられる服を目指したから」(鈴木さん)。アイテムは無地なものが多く、透明感と軽快さが際立っている。

エシカルを追及した「すべてが土に還る」服を着て

エシカルを追及した「すべてを土に還せる」服を着て

鈴木さんはファッションブランドを立ち上げる前までは、日本在住の外国人を支援する団体でボランティアをしていた。冤罪の可能性がある外国人に、拘置所まで面会しに行くなど、数々の案件を担当していた。

犯罪や刑事事件を目にするたび、人が生きていくことの困難さを実感するようになる。こうしたなか、「人は幸せになるために生まれてきたんだ」と強く自分に言い聞かせるようになった。

そして、「人が日常から幸せに生きられるように」(鈴木さん)ファッションブランドを立ち上げた。鈴木さんのキャリアに、アパレル経験はない。それでもファッションを選んだのは、「(自分自身が)好きだったから」。

生産拠点をタイにしたのには、理由が2つある。一つは、縫製技術にほれ込んだから。そして、もう一つは、あるタイ人少女との出会いから。日本在住の外国人を支援する団体で、人身売買に遭ったタイ人女性を保護したことがあった。

無事、その少女をタイにある家まで届けたのだが、その少女はHIVになってしまった自分を攻め続け、自殺してしまう。少女を救えなかったという後悔から、タイへの思いが強くなったという。

タイで製造を委託している小さな工房には、5人の職人が働いている。鈴木さんも頻繁にタイに行き、職人たちと交流する。一つひとつのアイテムがハンドメイドで、丁寧に作られている。Fuwariのアイテムは軽さもあるが、着崩れしない丈夫さは、この職人たちの腕だ。

■「誰も傷つけない」に込めた思い

今回の「すべてが土に還せる服」の企画が動いたのは、今年の春ごろ。鈴木さんは四角大輔さんの主宰する私塾「Lifestyle Design Camp」の一員。この私塾では、「人生のデザイン」をテーマに学ぶ。鈴木さんは、起業を目指す人向けの特別会員だった。

鈴木さんが四角さんに、Fuwariの今後の展開について相談を持ち掛けると、エシカルファッションに精通しているモデルの鎌田安里紗さんの紹介を受けた。鈴木さんは鎌田さんと会うと、意気投合。「誰も傷つけない」を合言葉に、企画が動き出した。

14804859_1125544460859958_1166883336_n2016年夏には、四角さんと鎌田さんはタイに渡り、工房を見学した。その工房では山岳民族のカレン族の職人が働く。2人は実際に生地染めも体験。職人と話し、習い、Fuwariのコンセプトを理解してから、四角さんはパンツを、鎌田さんはサロペットのデザインプロデュースをした。

ファッション業界は、過剰な大量生産消費型の生産方式で発展してきた。しかし、劣悪な環境で働かされる労働問題や川の色を異常なほど濁らす環境汚染など、その裏側には課題が多い。

だからこそ、この服のコンセプトである「誰も傷つけない」を服作りに込めた。四角さんは現在、ニュージーランドに移住して、原生林に囲まれた湖で自給自足の暮らしを行う。東京にいたころは、レコード会社プロデューサーとして、数々の有名アーティストをブレイクスルーさせてきた。

 

 

CDの総売り上げ枚数は2000万枚を超す。鎌田さんは、著名なギャル雑誌でのモデルをしながら渋谷109のカリスマ店員として一線で活躍した経歴を持つ。さらに、慶應義塾大学大学院生として研究に打ち込みながら、エシカルファッションのプロデュースや多くの啓発イベントで発信を続けてきた。

14800691_1125539510860453_1397319131_nこの異色のコンビ、実は、長年の友人でもある。二人が手掛ける今回のプロジェクトが放つメッセージは独特だ。

四角さんはこう語る。「ぼくはよく、CDを2000万枚売った男として賞賛されます。でもそれって、土に還せない2000万枚の石油化学製品を地球にバラまいたということでもあります。そんなぼくが今回、たった数十枚の土に還せる服を創るために、徹底的にこだわり、旅をしてきました。そこに込められたメッセージをくみ取って頂ければ幸いです」。

鈴木さんはこの服への思いをこう話す。「たくさんの人に支えられてここまで来ることができた。ファッション業界から見ると私の動きは小さく、影響は少ないかもしれないが、私にできることをした。これが私にとってのエシカルだと思う」。

・Atelier Fuwariの公式FBページはこちら
・四角大輔さんの過去記事はこちら⇒無名の新人ブレイク請負人・四角大輔が語る〜才能の見つけ方
・鎌田安里紗さんの過去記事はこちら⇒エシカルファッションプランナー鎌田 安里紗さんの挑戦

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