リオデジャネイロで盛り上がったパラリンピックがいよいよ2020年東京にやってくる。大会の競技種目で視覚障害者がプレーする「ゴールボール」の体験会が先月3日、東京都江東区の特別支援学校の体育館で行われた。その模様を報告する。(水野 恵美子)

初めてゴールボールを体験する参加者(晴眼者)

初めてゴールボールを体験する参加者(晴眼者)

ゴールボールは第二次大戦後、視覚に障害を受けた傷痍軍人のリハビリとしてヨーロッパで考案されたスポーツで、1チーム3人。アイシェードで目隠しをした選手が 鈴の入ったボールを相手のゴールに投げ入れて得点を競う。

日本代表チームは、女子が2004年のアテネ大会から連続出場しており、2012年のロンドンパラリンピックで金メダルを獲得した。同大会は視覚障害者のみが参加しているが、国内の大会では晴眼の選手も参加している。選手全員が目隠しをするので、障害の度合いに関係なくお互いフェアな立場でプレーができる。

晴眼者と視覚障害者が一緒のチームでプレーする

晴眼者と視覚障害者が一緒のチームでプレーする

体験会を主催しているのは東京都ゴールボール連絡協議会。中心となって活動しているのは視覚障害者で現役のゴールボール選手・高田朋枝(たかだ・ともえ)さん。2008年の北京パラリンピックでは日本代表として出場した。その後1年間、海外に渡ってゴールボールの現状を見て周り、帰国後は競技の普及に努めてきた 。

3年前、障害のあるないに関係なく多くの人にゴールボールを楽しんでもらいたいと、未経験者のための体験会や大会を開催。その後、毎年開いている。

参加者の多くは視覚障害者。高田さんと同じく現役選手として活動していたり、この体験会がきっかけでゴールボールを知って面白さにハマり、以来参加するようになった人など様々だ。年々参加者は増え、最近は晴眼者も多いという。

主催者でゴールボール選手の高田朋枝さん

主催者でゴールボール選手の高田朋枝さん

筆者も今年4月の体験会に参加した。ボジションはレフトウィング(1チーム3人。ライトウイング、センター、レフトウィングに分かれ、センターは司令塔の役割も果たす)。

暗闇の中から飛んでくるボールをキャッチするのは初めは怖いが、センターにいた高田さんが相手の投げたボールがど こに来るかなど的確に教えてくれたり、ボールをキャッチできると「ナイスキャッチ!」と褒めてくれたりして、視覚がふさがれたことによる緊張が解けた。障害の壁がなく一緒にプレーを楽しめることがこのスポーツの魅力だと実感した。

この日の参加者は11人。うち6人はゴールボール経験のある視覚障害者で、他の5人は晴眼者で初参加。高田さんがスポーツのイベントや大会で知り合い、声をかけた人たちで、そもそもどんな競技なのか?4年後の東京パラリンピックを身近に感じてみたい、と各々関心を持つ人たちが集った。

最初にみんなでコートを作り、準備が整ったらウォーミングアップして初心者は高田さんたちからセービング(守備)とスローイング(投球)を教わり、練 習をした。最後は試合同様アイシェードを付けてチームに分かれてミニゲームを行った。

初めての参加者はあざを作りながら悪戦苦闘。音を便りに床の上を手探りでボールを探したり、10秒以内に投球しなければいけないなど独特のルールに戸惑いつつも、子どものように未知のスポーツを楽しんでいた。ゴールボール経験の豊富な視覚障害の選手と組んで試合を行い、アドバイスをもらいながら一緒にプレーするうちに初心者も上達。最後は得点を入れる参加者もいた。体験会を終えると充実した表情で「また参加したい」といった声も聞かれた。

練習で初めてゴールボールに触れる晴眼の参加者

練習で初めてゴールボールに触れる晴眼の参加者

ゴールボールの大会は毎年いくつか行われているが、経験豊かな選手が出場する大会が多い。ゴールボールを全く知らない人、 やってみたいけど機会に恵まれない人など未経験者が出られる大会を増やしていきたいと高田さんは考えている。競技人口が増えれば、ゴールボールはよりポピュラーで親しみのあるスポーツになるのかもしれない。今月29日は調布市で初心者を対象にしたゴールボール交流大会が開催される。

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