積水ハウスは11月9日、大阪都心にある梅田スカイビル(大阪市北区)の「新・里山」で、地元小学生らによる稲刈り体験を行った。同社は10年前から、都会育ちの子どもたちが田植えから稲刈り・脱穀までを行う農作業体験を、大淀小学校と連携して実施。小学5年生の児童54人が農作業に挑戦した。「新・里山」は高層ビルの公開空地に創設された「日本の原風景」を思わせる田畑と自生種の森。冷たい秋風が吹く中、初めての稲刈りにはしゃぐ子どもたちの歓声がビルにこだました。(オルタナS関西支局特派員=國松 珠実)
農作業体験は積水ハウスが取り組むCSR活動の一環で、地元の小学校や幼稚園に呼びかけ、体験教育支援の一つとして2007年から毎年行ってきたもの。土に触る機会が少ない都会の子どもたちに、農作業を通じて自然や生き物の息吹に触れてもらうのが目的だ。
稲刈りの前に、園芸研究家の畑明宏さんが、鎌の持ち方や扱い方をレクチャー。「地面の近くから刈るんだよ」という指導を受けながら、子どもたちは4班に分かれて田んぼに散った。
最初は思うように刃が入らず、悪戦苦闘する姿が目立ったが、慣れるに従いザクザクとリズミカルに刈り取れるように。「けっこう力がいる!」と言いながらも、多くの子どもたちが満面の笑顔を見せた。
刈った稲をはさ木にかけて天日干しする「はざかけ」もほとんどの生徒が初体験。ある女子生徒は「寒かったけど楽しかった!お米は餅米なので、餅つきして食べます!」とうれしそうに話した。
当初からこの教育支援活動に携わっているコーポレート・コミュニケーション部CSR室の信田由加里さんは、「身近に自然がない都市部の子どもたちは、カエル一匹見つけただけで大騒ぎ。でもそんな体験を通じて、都会のど真ん中にある『新・里山』が、子どもたちにとってかけがえのない故郷になるといいなと思っています」とコメント。
畑さんは「ここには都会ではまず見られないハイタカなどの野鳥が飛来します。それだけ生態系が豊かになっているということ。10年経った今、本物の里山になっている気がします」と感慨深げに話した。
田畑だけでなく、自生種の雑木林や竹やぶなどがある「新・里山」は、オフィスビルで働く人にとっても癒しの場になっていると信田さん。梅田スカイビルなど新梅田シティで働く会社員で結成された「新梅田シティ里山くらぶ」では、会社の垣根を越えてさまざまな人が「新・里山」での農作業に加わっている。「土を触っているときは、会社の違いも上司部下も関係ありません。みなさん自然に笑顔になって話も弾みます」。
子どもたちや会社員だけでなく、周辺住民も「新・里山」に親しみ始めていると畑さん。人との関わりが希薄になりがちな都市部で、里山を通じた温かな地域交流が生まれつつある。
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