介護業界で働く人々が交流する「カフェ」がある。介護職に関しては、低賃金や離職率などが盛んに報道されるなか、「ネガティブなイメージを変えたい」と主宰者は話す。介護の未来を「対話」によって切り開いていく。(西 樹利香・武蔵大学社会学部メディア社会学科4年)

介護の未来について語る高瀬さん 写真・近藤浩紀

介護の未来について語る高瀬さん 写真・近藤浩紀

このカフェは、「未来をつくるkaigo カフェ」という名称。主宰しているのは、高瀬比左子さん。介護、医療・福祉などに関わる人々が、介護に関する身近なテーマをもとに、話し合う。立場や役職を離れ、自由に思いを語り、介護の可能性や魅力を再発見してもらうことが狙いだ。

昨今、介護施設の職員問題や離職率などが多く報道される中、kaigoカフェ代表の高瀬さんは「介護業界のネガティブなイメージを変えていきたい」と言う。「未来をつくるkaigoカフェ」は2012年7月に活動を開始し、今年、4年目を迎えた。

高瀬さんは「介護現場で働く方は、職場と自宅の往復に終始してしまいがち。、対話できる場があることで、お互いに視野を広げることができ、変化のきっかけをつくることが可能になるのではないか」と言う。

月一度開催されるkaigoカフェの様子

月一度開催されるkaigoカフェの様子

■「未来の介護職」を模索

「介護職の人たちは自己表現が苦手で、小さな世界にとどまりがちな傾向がある」と高瀬さんは言う。目指すのは、介護に対するネガティブなイメージを変え、自分らしく介護と向き合える社会。

そのためには、介護、福祉を取り巻く地域の支えが必要不可欠と考える。地域社会に積極的に関わっていくことが業界全体を良くしていく一つのカギだと強調する。

デザインなどに関心のある学生と介護業界で働く人をつなぐ。介護のイメージにスタイリッシュなデザイン性を取り入れることで、継続的にネガティブなイメージを変えていきたい考えだ。

■対話の「気付き」を現場に

カフェでの対話を通して、課題に気付いた。それは、現場で働く職員は閉鎖的になってしまうということ。「介護職として働く中で、日々の業務に追われるばかりで、先を見据えて勉強することの難しさに気付いた」と言う。

カフェは、刺激の場であると同時に人と人とがつながっていく交流の場である。自分の考えを一から考え直し、新しい目標やビジョンを考えていく役割も担っている。

理想の介護のあり方は「利用者本位の自立支援」である。利用者が望む自分らしい生活を送れるように、支援していくことが大切だという。自立には自己決定が重要。自分自身の人生を豊かにするために生活の質を向上させていくことの大切さは、年をとっても生活の一番大切な部分となってくる。

生活者の満足感・安心感・幸福感と向き合っていくことが今後さらに重要となってくるのではないだろうか。「最期まで生きていてよかったと感じてもらえる介護を進めていきたい」と高瀬さんは言う。

対話を通して出た、意見やアイデアをまとめる

対話を通して出た、意見やアイデアをまとめる

高瀬さんは、定期的に開催しているカフェとは別に小・中・高の教育現場や福祉教育の場で「出張kaigoカフェ」も開催している。子どもたちに魅力ある仕事の一つとして「介護の仕事」を知ってもらう機会を提供し、その保護者へも介護の魅力を伝えていく活動を行っている。

介護福祉士の卵たちとグループワークなどを通して、対話の必要性を肌で感じてもらう、組織におけるファシリテーター型のリーダー輩出に取り組む。

高瀬さんは「介護業界、福祉業界を変えるには、まだまだやることが多い」と言う。目指す社会をつくるためには、活動をこれからさらに発展させていかなくてはいけない。

「日本全国にこのようなカフェができていくことが理想」と語る。情報収集をし、共有し、対話していくことが、今後様々な現場で必要になってくると筆者は考える。

kaigoカフェに参加した人が影響を受け、自ら行動し、自分の住んでいる地域などで「人と人とのつながりの場づくり」を行う試みも増えつつある。介護の未来は少しずつ着々と変化していっている。

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