タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆農地法

「日本の農地の一割は耕作放棄地だから」と末広が言うと「そんなにありますか?合計すると山梨全県位になりますか?」と敏夫。
「今の所、埼玉県位の大きさだけど、あと10年もすると秋田県位になっちゃうんじゃねえの」と末広。
「跡継ぎがいないのが原因ですよね」と啓介が言うと、末広が言った。「農水省はそう言っているけどね」
「本当は違うんですか?」と啓介。

「違うよ。跡継ぎがいないのは結果で、原因は農業がもうからねえからだよ。親父の商売がうまく行っていれば息子は継ぎたがるよ」
「そうですね」啓介が言った。「ウチの保険会社でもニューヨークでは創業者一家が創業者の跡目を狙って泥仕合していますよ」
「そうだろう」末広が目を丸くして、我が意を得たりという顔をした。

「俺だって農林業が儲かれば親父の残した土地を売ったり貸したりせんからに」
「でも敏ちゃんは田畑を売れば金持ちになれるじゃないの」
「だけどそれがそうじゃないんだぜ」敏夫が言った。「農地法があるじゃあ」
「農地法?」啓介が怪訝な顔をして末広を見た。
末広が畑の横の岩に腰を掛けると、啓介と敏夫が倒れた赤松の幹に腰を掛けた。
バースデーは三角形の中央に座って末広の顔を見上げた。
「農地法ってのはな」末広は春の柔らかい朝日を顔の左に受けて話し出した。
「農地法の原型は江戸の封建制度にあったと思いねえ」末広が落語の大家さんのように話し出した。
「日本は基本的に米本位制度なんだよ」
「米本位?」啓介が長屋の熊さんのように尋ねた。

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「米が経済のものさしだったんだ」末広が言うと「そう、米俵と金とを秤にかけて重さを計ったずら」田舎の八っん役の敏夫が言うと「違うっての」と末広が言った。「よく大名が何万石とか言うだろう?」
「言います」「言います」二人が相槌を打った。
「これは米の取れ高だ。一石は俵2俵半!」
「約150kgで大人が一年で食べる米の量だ」
「加賀のさる大名など100万石と言うくらいだから、100万人を養えたんだろな」
「へえ~加賀は猿が大名だったんですか?啓介が言うと「おめーわざと言ってるんじゃねえだろうな」
「猿が大名なわけねえだろう。カガと言えばあの前田だ!」
「前田のカカア知ってるですか?また産気づきゃがって。もう子供4人目ずら」
「わざと言ってるな」末広は舌打ちをして続けた。
「つまり田んぼの面積が経済尺度だったんだ。今は一反で八俵くらいとれるよな?」

文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。

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