サステナブルコミュニケーションの国際的識者であるトーマス・コルスター氏(Goodvertising Agencyディレクター)が3月9日、サステナビリティと経営の統合を考えるサステナブル・ブランド国際会議2017東京で講演した。トーマス氏は、事業の社会性を伝えるときに多くの企業が陥る罠があるとし、効果的な発信方法について話した。講演の要旨は以下。(オルタナS副編集長=池田 真隆 写真=廣瀬 真也・spread)

登壇したトーマス氏、「Goodvertising(グッドバタイジング)」という用語を生みだし、より良い社会の発展に繋がる広告活動に取り組む=3月9日、六本木ミッドタウン・ホールで

■サステナブルなコミュニケーション

21歳で広告業界に入った。広告を選んだ目的の一つは給与だった。広告の世界に15年以上いるが、広告マーケティングの世界では、利益や売上中心で話が進んでいる気がしている。

本来広告は人間関係があってこそ成り立つビジネスだが、利益を優先するあまりにさまざまな関係が希薄になっている。

今、サステナブルなコミュニケーションを考えることが重要になっているが、多くの企業が陥る罠がある。ぼくはそれを、「2つの頭を持つモンスター問題」と呼んでいる。

このモンスターは良い顔と悪い顔を持つ。どんな組織にも、家庭にも存在するだろう。

例えばぼくはこうして日本で講演をしているが、この話をもらったときに、日本でサステナブルな広告戦略について話ができてうれしいと思う一方で、飛行機を使うので二酸化炭素を排出することにも加担してしまうとも思った。

このようにサステナブル担当者は、事業の収益性と目的の板挟みで悩むだろう。良いことをしているが、負の部分が表出することで、本末転倒になる。では、どうしたらよいのか。

会場はビジネスパーソンやNPO関係者、学生らで満員になった

この悩みを解決する糸口は、パーパス(企業の存在意義)にある。自分たちが取り扱っているブランドのミッションにパーパスはしっかり組み込まれているか考えてみてほしい。

パーパスが組み込まれていないと、例えば、ある石油会社は気候変動を悪化させる温床と批判され、あるスーパーマーケットチェーンは、「節約することで人々の生活をより良くする」と謳っているが、コンセプトに合う商品が全体のわずか5%しかなく、十分に消費者に伝わっていないこともある。

消費者とくに、ミレニアル世代はこの2つの頭を持つモンスター問題に敏感だ。フェアトレードを推進している印象がある、スターバックスコーポレーションでさえ、ミレニアル世代から疑問を投げかけられている。

パーパスを持った企業で新しい働き方を提案している会社として、「ウィリーズカフェ」を紹介したい。太陽光発電を搭載したモバイルカフェだ。

特徴は開業資金の低さ。マイクロフランチャイズと呼ばれる。自転車を改装したつくりで、わずか30万円で開業できる。マクドナルドやスターバックス、サブウェイは最低でも1500万円以上かかる。世界中のフランチャイズ店舗をネットワーク化することがブランド戦略だ。

最後に、2つの頭を持つモンスターを追い出すためには、パーパスに光を当てるべきだと強調して伝えたい。パーパスに光を当て、それを共有することが大切だ。

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