パレスチナ・アマル(滋賀県・草津)代表の北村記世実さんは、「パレスチナのものでおしゃれを楽しむ」をコンセプトに、現地の女性たちが作ったパレスチナ刺繍のフェアトレード商品や、同国に唯一の織物工場で作った織物「ラスト・カフィーヤ」を日本で展開している。このほど、ガザに住む300人の難民女性の経済的な自立を後押しするため、日本初となる「パレスチナ刺繍ブランド」を立ち上げた。現在、プロジェクトに掛かる費用をクラウドファンディングで集めている。活動の様子や、現地の難民女性に対する思いを聞いた。(聞き手・Readyfor支局=田中 万由・オルタナS支局スタッフ)

パレスチナ・アマル代表の北村記世実さん

―――国際協力活動に興味を持ったきっかけを教えてください。

北村:大学時代の友人がパレスチナのガザを支援するNGOの現地駐在員として活躍をしていました。彼女からの紹介で、ボランティアの案内をいただき1999年に半年間パレスチナのガザへボランティアに行くことになったのがきっかけでした。

現地に行く前は、パレスチナについての深い知識があるわけではなく、「パレスチナは人は虐げられていて、可哀そうな人たちなのかな…」というイメージを抱いていました。しかし、実際に現地に足を運んでみると、そのイメージを覆されました。

皆さん本当に明るくて優しく、いつも冗談を言って笑っていました。貧しいながらにお金を工面して、日本から来た私にお茶を出してくれ、豪華な夕食を作って歓迎してくれました。おもてなしの心をすごく大切にされていて、ボランティアを通してそういった現地の方の精神性の高さにとても惹かれました。

――そこから、継続的に支援するためパレスチナ・アマルを立ち上げたきっかけを教えてください。

北村: 前回の訪問に続き、2回目にパレスチナを訪れたのが、2001年の第二次インティファーダ中(民衆蜂起)のことでした。プロジェクトページでも少し触れていますが、第二次インティファーダ中は、夜になるとヘリが海からやってきて街を破壊したり、銃撃戦に巻き込まれたり、とてもシビアな状態が続いていました。

滞在中とても衝撃的だったのは、ガザに住むパレスチナ人の友人がイスラエル軍に殺害されてしまったことでした。その時に自分の無力さを感じ、ガザの人たちのために何か出来る人間になりたいと強く思うようになりました。それが、パレスチナ・アマルを立ち上げ、継続的にパレスチナの支援をしようと思ったきっかけです。

ガザでの経験について語る北村さん

――色々な支援方法があるかと思いますが、パレスチナの伝統工芸品を販売するという方法で支援を始めたのはなぜですか?

北村:ボランティア終え、帰国しようとした時に、友人から土産屋に立ち寄ることを勧められました。私は黒い生地にバラの刺繍が入ったデザインのストールを選びました。その刺繍は、ガザの女性が1つ1つ手作業で仕立て上げているパレスチナ刺繍。滞在中、「パレスチナ刺繍は母から娘に大切に伝わっていく伝統のようなものなのだ」というエピソードを友人に聞いたことを思い出しました。商品としての魅力だけでなく、伝統を大切にしながら、生き生きと仕事をしていることも心惹かれた理由です。

パレスチナには、そんな伝統的で素敵な製品がたくさんあるのにも関わらず、日本人にあまり知られていないのが、とても勿体なく思いました。パレスチナ刺繍の魅力を日本でも広めることで、女性たちの雇用と収入源を増やし自立支援を支えることができないだろうか、と考えました。

――そういった思いでパレスチナ製品を広める活動を初められたのですね。起業してから今日に至るまで、どういった活動をされてきましたか?

北村:起業してまず始めたのは、パレスチナに唯一残る工場で作られる最後の国内製ストールである「ラスト・カフィーヤ」の販売でした。ガザは2007年以降完全封鎖されており、物の流通も人の移動も厳しく制限されています。そのため、ヨルダン川西岸地区のものだけを取り扱っており、初めはガザ製のものは取り扱うことが出来ない状態でした。しかしこの度、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の刺繍プロジェクト「Sulafa」の日本でのパートナーとなる機会に恵まれ、日本の皆さんの元にガザの刺繍製品を届けることができるようになりました。ようやく、ガザの女性たちの支援を出来るスタートラインに立てるようになりました。

写真提供:UNRWA

――これから、どういった形でパレスチナの刺繍製品を日本で広げていきたいですか?

北村:理想は、パレスチナや国際協力に関心がない人であっても目につく場所で、販売したいですね。今までは一部のフェアトレードショップやNGO団体がパレスチナの製品を取り扱うことはありました。しかし、それでは関心のある一部の人の目にしか止まりません。もちろん、まずは関心がある方に広めていかなければならないのですが、それだけでは広がる範囲が限られてしまいます。より多くの人の手に取っていただける環境を、作っていきたいと思います。

――国際協力をしたいと考えている人たちに一言お願いします。

北村:常にアンテナを高く張り、チャンスを自分から掴むことが大切だと思います。私は偶然、友人にボランティアの誘いを受けましたが、その時、ボランティアに行くのを躊躇していたら今の活動はありませんでした。あの時、お土産で心に惹かれた「Sulafa」の刺繍ストールを購入しなかったら、現在のパレスチナ・アマルは立ち上げていません。チャンスは皆、平等に訪れます。案内がきてもスルーするのか、キャッチするのか、どういった形で支援をしていくのか。すべて自分の意識次第だと思います。常にアンテナを張ることで、チャンスは来ると思っています。みなさんも常に自分から挑戦してみてください。

――最後に、今回のクラウドファンディングにかける意気込みを教えてください。

北村:私が愛用しているスカーフは使い始めてから18年も経っているのですが、クロスステッチで丈夫に編まれているため、全くほつれません。製法の精巧さ、完成度の高さは「Sulafa」の刺繍ならではだと思います。パレスチナ・アマルのコンセプトは、「高品質で魅力的な商品を通してパレスチナの伝統や文化を広く伝えたい」ということです。

一般の方々にも触れやすく、お求めやすい場所に展開することで販売数を増やしていきたいという思いがあります。その一歩として、パンフレット作りやオンラインストアを作るのはとても大切なことです。ガザに関わるようになってから18年が経ちましたが、やっと胸を張ってガザに貢献できているなと感じます。長年の夢が結実して、新たなスタートラインに立てたのだなと思います。刺繍の魅力を伝え、パレスチナのガザに住む社会的に弱い立場にある女性たちの経済的な自立を後押しするため、クラウドファンディングを絶対成功させなければいけないと思っています。

既に第一目標である100万円は皆様からのご支援により達成することができましたが、まだまだ製品を広めるためにネクストゴールとして200万円が必要です。是非、プロジェクトページをご覧いただき、私たちの活動へ応援をよろしくお願いします。

18年愛用している「Sulafa」のパレスチナ刺繍のストールを巻いてきて下さいました

北村さんが挑戦しているクラウドファンディングは、2017年5月31日23時まで!是非下記のページよりご覧ください。

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