長期化するコロナ禍で、LGBTQたちから「病院で家族として扱われるのか」「強制的なカミングアウトにつながるのではないか」――という不安の声が集まっている。同性婚の法制化を目指す一般社団法人「Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」(以降、 MFAJ)が21日に報告した。性的マイノリティーの声は可視化されづらく、社会保障などの支援が十分に行き渡っていない現状がある。こうしたことを背景に、同団体では4月6日から、LGBTQ向けにオンラインアンケートを実施していた。(オルタナS編集長=池田 真隆)
MFAJが実施したアンケートでは6日から17日までに178件の回答が集まった。「新型コロナウィルスの感染拡大により、特に、パートナーとの関係が保障されていないために、抱えている困難や不安、実際に起きた出来事など」についての質問(自由回答)に関して分析した結果、「入院・緊急・万が一の時に連絡がとれるか(家族扱いしてもらえるか)の不安」が有効回答数68件を占め最多の約4割となった。 「(感染時の)家族・友人・病院・会社・学校への報告や公表に関する不安」は24件で約2割だった。
「一人のLGBTの当事者として、あるいはその家族、友人、同僚として、抱えている困難や不安、実際に起きた出来事など」について聞いた質問(自由回答)では、 「(感染時の)家族・友人・病院・会社・学校への報告や公表に関する不安」が最多の20件、「入院・緊急・万が一の時に連絡がとれるか(家族扱いしてもらえるか)の不安」が19件と続いた。
「政府や公的機関に求めること」については、 「生活保障・資金援助・現金給付」が最多の45件、次に44件の「同性婚の実現・婚姻平等法の法制化」となった。
その他にも、下記の意見が集まった。
*入院時に病院から連絡をもらえない可能性がある、 入院時に同性パートナーでは家族とみなされず同意書を記入できない問題
*万が一亡くなった時の葬儀の参列、 遺産相続の問題
*PCR検査による予期せぬアウティング(例えば濃厚接触者として挙げられてしまうことで強制的に明かされてしまう)
*リモートワークで生じる予期せぬアウティング(オンライン打ち合わせの時に背景や声が入るなど同棲などの生活感が見えてしまう)
*定期的に通院が必要となるトランスジェンダーとしての不安
*外国人パートナーのビザの問題
*国からの補償が世帯単位なので、 世帯にカウントされないという問題
※4月6日アンケート開始時は一律10万円給付報道がされていませんでした。
*パートナーの子供をみるために仕事を休むことができない(休校措置などが影響)
*ある自治体では同性カップルは家族として認められないので、 不要不急とみなされ、 会うことさえもできなくなる。
*LGBTQコミュニティでリアルなコミュニケーションができず孤独感が高まる(一方、 オンライン会議システムなどをうまく使ってコミュニケーションを取り合い励まし合っている事例も)
MFAJではアンケート回答者に個別に電話ヒアリングも行い、当事者が切迫した状況に置かれていることが明らかになった。「LGBTQ当事者であるが、以前はこういったアンケートに回答することはなかった。しかし新型コロナウィルスの感染拡大で命の危険、経済やプライバシーの問題が間近に迫ってきたときに、当事者として声を上げられずにはいられなかった。今まで、将来のことと後回しにしてきた問題が、喫緊の問題として目の前にやってきた感じだ」といったコメントをもらったという。
子どもを育てている同性パートナーからは、小学校休校対応時の保護者向けの助成金が受給できるか不安に感じているという声が寄せられた。MFAJ所属の弁護士が厚労省に問い合わせたところ、1)小学校休業等対応助成金(事業者向け)2)小学校休業等対応支援金(フリーランス向け)のいずれも、同性パートナーであっても、「子どもを現に監護している者」であれば認められるという回答を得た。
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