「空き家バンク」とは、市民が利用しなくなった家屋を登録し、市外の移住希望者が購入できる制度だ。熊本県南西部に位置する自然豊かな天草市では、この制度を皮切りに、「移住コーディネーター」や「子ども医療費助成制度」など移住・定住希望者への施策を充実させている。(武蔵大学社会学部松本ゼミ支局=長谷川 紗知)

取材した天草市役所地域振興部地域政策課定住促進係(左)津崎龍也さん、(右)平武蔵さん、天草市は年間の平均気温が約 17℃と快適な気候で過ごせる

天草市は2市8町が合併し、2006年に誕生した。天草諸島の中心部の島で、山林に覆われ平野部は少ない。市街地や農地は河口や海近くに広がっている。

「空き家バンク」には、2017年5月までに77件の空き家、10件の土地が登録されている。こうした移住・定住希望者のための政策が充実している天草市は、移住希望者が年々増加している。中でも特に2015年から年間の移住希望者数が以前と比べて2倍近くに増えた。多くの移住希望者に対応するため、同年に「移住コーディネーター」を設置した。

これによって以前より一人ひとりの希望に添った移住・定住生活をデザインできるようになった。また、天草市の移住・定住支援制度は子育ての面でも充実している。2014年までは、移住する人の割合は仕事を退職してセカンドライフで年金暮らしをする人が多かったというが、翌年からは30代40代の子育て世代が増加した。

その理由として天草特有の多様な子育て支援制度があるが、具体的には中学生までの医療費を全額助成する「子ども医療費助成制度」などがある。天草には、農業にも特有の制度が存在する。

国の制度では新しく農業を始める 人への給付金が研修期間の2年間で150万であり、年齢制限が45歳となっているが、天草は65歳まで受け入れている。この制度も、移住者に比較的役立っているという。

住まい・仕事・暮らしの支援を主な柱としており、移住・定住に関して様々な工夫を凝らしているが、天草には大学がないという理由から、進学のために出ていく若者の方が多いのが現状だ。

こういった人口減少を緩やかにすることを目標として政策を行っている天草定住促進係の津崎さんは、「他の地域にないような天草の人の良さが移住者の定住につながっており、移住ブームである今、移住相談会や移住セミナーによって一般の人はもちろん、地場産業のプロを呼び込むことも今取り組むべきことだと思う」と話した。

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