フェアトレードカンパニー株式会社のフェアトレード専門ブランドのピープルツリーは、2017年9月1日から9月30日までの1ヶ月間、オーガニックの良さを広めるための様々な「オーガニック・セプテンバーキャンペーン」を展開する。(松尾 沙織)

その一環として、2017年9月7日にピープルツリーの母体団体であるNGOグローバル・ヴィレッジが主催する「つくる人も、買う人もハッピーに!フェアトレード&オーガニックなライフスタイル」イベントが東京ウィメンズプラザで開催された。

今回は、クラウドファンディングで約120名から資金調達をし、インドフェアトレード生産者団体クリエイティブ・ハンディクラフト(以下CH)」のプロジェクト・オフィサーと生産管理担当者を招き、ビジネスにおいて貧困問題や環境問題に取り組む”フェアトレード”の意義や成果、オーガニックコットンの重要性についての話を伺った。

さらに、司会にはグローバル・ヴィレッジ代表の胤森なお子氏、ゲストにピープルツリー代表ジェームズ・ミニー氏、アンバサダーであるエシカル協会代表・代表理事の末吉里花氏、モデル・エシカルファッションプランナーの鎌田安里紗氏を招き、オーガニック商品やフェアトレード商品をライフスタイルに取り入れることで、生産者も生活者も幸せになれる社会についてのトークショーを行った。

1984年にシスター・イザベルマルティン氏が設立した「CH」は、オーガニックコットンの厳しい基準である「GOTS認証」を取得している社会的企業だ。インドの西に位置する都市ムンバイでは、人口の80%がスラムに住んでいる。団体はここに住む女性たちに、収入と教育を提供することをミッションに掲げている。現在は300人の女性が就労し、季節労働者も含めると1,000人以上が関わる。

まずは、ゲストの一人であるロージィ・ミネシュ・ソランキ氏(以下ロージィ氏)に話を伺った。ロージィ氏は、夫による家庭内暴力があり、誰も助けてくれないような状況だった。貧しいことから実家に帰ることもできなかったロージィ氏は、2人の子ども達の存在に奮い立たされ、シスターイザベルの元を訪れたのち、CHに加わることとなった。

「当時私は縫い方も知らず何もできない状態でしたが、CHが必要なものすべてを与えてくれました。私は生産者グループに入り、見本作成や品質管理に携わりました。今では25年が経ち、マネージャーをやっています。2人の子供は学校を卒業でき、とても幸せです。特別な教育を受けていない私が、日本で話をできていることをとても嬉しく思っています」とロージィ氏は涙を浮かべながら語った。

CHは、ロージィ氏のように子育て中の母親も多く勤務しているため、子どもを預けることができる「デイケアセンター」も併設している。3〜5歳の子どもが対象となり、栄養や教育といったことにも配慮される。また、勤務中はジーンズやワンピースといった自由な服装で働くことができ、女性たちがのびのび働く環境が整っている。

さらにCHは、4~16歳の子どもや女性を対象とした様々なプログラムも行っている。

女性研修センターでは、CHに勤務希望でまだ技術がない女性たち向けに、4〜6ヶ月の期間で有給トレーニングを行っている。支給される賃金は、1,000ルピー(約1,715円)だ。刺繍と縫製の方法を習うことができる。ここでもし縫製技術が身につかなかったとしても、弁当販売に関わることができる。彼女たちは毎日500人分の弁当を作る。

また、働く女性向けに貯蓄と融資のプログラムも行う。利息がとても低いため誰でも参加でき、一定の貯金をし6ヶ月を超えるところで融資がもらえる仕組みだ。これによって女性たちは医療費などを払っている。

これらの研修の企画・運営は、プロジェクト・オフィサーであるサロジ・キラン・カンブル氏(以下サロジ氏)が担当している。またCHでは女性への暴力をなくすために、カップル向けに健全な結婚についての講座、女性向けに護身術を習うプログラム、子ども向けに性の講習なども行う。さらに、被害に遭った女性向けにカウンセリングも行っており、一人ひとりに合わせて対処法を教える。

「多くの人の人生が変わっていくのを見ることにとてもやりがいを感じます」とサロジ氏は語る。

なかなかこういった生産者の生の声を聞く機会は少ない。ブランド顧客と生産者の触れ合える機会をつくり、ものの背景を知ることや生産者の顔を知ることで、消費者はより商品に愛着を持つことができる。また、消費者の声を届けることでの商品価値の向上や、生産者のモチベーション向上にも貢献する。

二人の話のあとは、ピープルツリーアンバサダーとピープルツリー代表であるジェームズ・ミニー氏(以下ジェームズ氏)によるトークセッションが行われた。

ジェームズ氏はバブル期に来日、自身がフェアトレード商品を求めた時に欲しいものがなかったことから、パートナーのサフィア氏と「ピープルツリー」を設立。

同ブランドは、2013年からCHとともに商品開発を行ってきた。それまでオーガニックコットンの扱いがなかったCHは、ピープルツリーの提案から新しく商品を開発。オーガニックコットンのジーンズ、シャツなど、レディースだけでなくメンズ服も扱う。努力を重ね、GOT認証を取得するに至った。

この日アンバサダーの二人が着ていた服は、ピープルツリーの2017秋冬の新作。末吉氏のワンピースは、持続可能な森林にあるユーカリを原料とした、排水にも配慮してつくられたテンセルを使用している。ロンドンにあるヴィクトリア・アンド・アルバート博物館とのコラボコレクションだ

「作業をするスタッフも、作業に対していくらもらうべきという意識を持ちながら働いています。私たちは、フェアな収入でないと感じる時にはきちんと声をあげることができる環境づくりにも配慮しています」とサロジ氏。

ピープルツリーは一方的に買い叩くのではなく、バイヤー団体と生産者団体との間で、どういうコストを経ているかをきちんと調べてから仕入値を話し合いで決定し、且つ消費者が買いやすい値段に調整している。

オーガニックコットン商品は値段が高いとの声もある。高価なイメージがついてしまっているが、アンダーウェアやタオルなど手に取りやすい商品もある。「一つでも良いから取り入れることから始めてみることでエシカルな商品の魅力を実感してもらえるのでは」と鎌田氏は話す。また、「もし日常用に使うには気が引けるなら、特別な人へのプレゼントで贈ってみることもおすすめ」と末吉氏。

環境に配慮した商品はまだまだ市場が小さく、コストがかかってしまう。消費が進み、市場が大きくなれば、もっと手に取りやすい価格になっていく。未来を思い、できるところから行動することが、社会にとって良いとされる市場を育てることにもつながると末吉氏はまとめた。

最後に登壇者からの消費者へ向けてメッセージが送られた。

ロージィ氏:「いつも私たちといてください」

サロジ氏:「フェアトレードのものを買って私たちを支えてくれたら嬉しいです」

ジェームズ氏:「私たちは、女性たちの生活のさらなる向上、フェアトレードが特別でない世界を目指しています。みなさんが求めてくれたらそのスピードも早まります。どうぞよろしくお願いいたします」

鎌田氏:「店頭で商品の背景を聞いても答えがもらえないことがほとんどなのに、ピープルツリーさんは、こういったイベントや店頭できちんと背景を伝えてくださる貴重なブランドさん。本当にありがたいなと思います。今後も応援していきたいと思います。」

末吉氏:「今日は生産者さんの言葉に心を打たれました。活動を続けることを悩んでいる際に、エシカルブランドの創設者の方に、”あなたがそれをやめてしまったら、あなたは問題の一部になる。続ければ解決の一部になる” と言われたのを思い出しました。人は行動で価値が決まります。お二人のお話を聞いて行動あるのみと思いました。みなさんもぜひ一緒に行動しましょう」

和やかな雰囲気の中、イベントは幕を閉じた。

綿農家は農薬を使用することで年間およそ2万人の人が亡くなっており、およそ300万人が健康被害に苦しんでいる。また、農薬を買えず生活苦に陥ることが原因で、30分に1人の割合で人が亡くなっている。さらには、世界の全耕作面積のうちの2.5%を占める綿農地において、全世界で使われる殺虫剤の16%、農薬の7%が綿農家で使用されているそうだ。これは環境汚染にも繋がる。(国連HP)

私たちがオーガニック商品を選ぶ行為によって、途上国の弱い立場の人を支援することができる上に、綿農家の健康や命を救うこともできる。

さらに、全世界で取り組みが進められ日本でも盛り上がりを見せている「持続可能な社会(SDGs)」においても「フェアトレード商品」や「オーガニック商品」を選択することは、目標達成にも貢献することができる。

こういった”エシカル消費”は、社会変革を推し進めるにあたり、消費者である私たちにとってなくてはならない視点ではないだろうか。

■ピープルツリーのオーガニック・セプテンバーキャンペーン

・オーガニックコットンアイテムを含むアイテムがおうちで試着できる!
返品・交換が無料になる「試着無料キャンペーン」

・¥15,000以上お買い上げの方先着100名さまにオーガニックコーヒープレゼント

http://www.peopletree.co.jp/special/ocsep/

■「クリエイティブ・ハンディクラフト」とは

インドの大都市ムンバイで、社会的に不利な立場に置かれているスラム地域の女性たちの経済的自立を応援する企業。30年以上の活動を通じて、13の女性縫製グループを運営する。2015年には、オーガニック衣料品の生産ラインをつくりオーガニック認証を受けた。カーストや性、宗教の差別のない人権的で自給持続が可能なコミュニティを作ることを目標としている。

■登壇者

サロジ・キラン・カンブル氏 プロジェクト・オフィサー Saroj Kiran Kamble

CHで働いて4年目。大学で社会福祉を学び、ソーシャル・ワーカーとなる。CHでは子どもと女性のためのプロジェクト(貯蓄プログラムや女性向けの研修)を担当。

ロージィ・ミネシュ・ソランキ氏 生産管理担当 Rosy Minesh Solanki

CHで働いて20年以上。大家族に嫁いだが家計が苦しく、家族の生活を支えるためCHのトレーニングセンターで縫製の研修を受け、作業グループのひとつに加わる。グループのリーダーに昇進し、トレーニングセンターで教えるように。数年後、本部の品質管理担当に抜擢され、作業グループの生産管理を任されている。

末吉 里花(すえよし りか)氏 一般社団法人エシカル協会代表理事

慶應義塾大学総合政策学部卒業。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。また司会や、レポーター、モデレーターもこなす。フェアトレードやエシカルを中心に活動を展開し、日本全国の企業や高校、大学などで講演、各地のイベントでトークショーを行う。著書に『祈る子どもたち』(太田出版)。新刊『はじめてのエシカル』(山川出版社)。消費者庁「倫理的消費」調査研究会委員(2015.5〜2017.3)、東京都消費生活対策審議会委員、日本エシカル推進協議会理事、NPO法人FTSN(FairTrade Students Network)関東顧問、1% forthe Planetアンバサダー、ピープルツリーアンバサダー。 http://ethicaljapan.org

鎌田 安里紗(かまだ ありさ)氏

1992年、徳島県生まれ。モデル、エシカルファッションプランナー。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科前期博士課程修了。高校在学時に雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。エシカルな取り組みに関心が高く、フェアトレード製品の制作やスタディ・ツアーの企画などを行っている。著者に『enjoy the little things』(宝島社)。環境省「森里川海プロジェクト」アンバサダー、JICA「なんとかしなきゃ!プロジェクト」メンバー、ピープルツリーアンバサダー、慶應義塾大学SFC研究所上席所員。

胤森 なお子(たねもり なおこ)氏

グローバル・ヴィレッジ代表。

■ピープルツリーについて www.peopletree.co.jp

ピープルツリーは、フェアトレードカンパニー株式会社のフェアトレード専門ブランド。アジア、アフリカ、南米の16か国、約140団体と共に、オーガニックコットンをはじめとする衣料品やアクセサリー、食品、雑貨など、できるだけその地方で採れる自然素材を用いた手仕事による商品を企画開発・販売しています。私たちは、手仕事を活かすことで、途上国の経済的・社会的に立場の弱い人びとに収入の機会を提供し、公正な価格の支払いやデザイン・技術研修の支援、継続的な注文を通じて、環境にやさしい持続可能な生産を支えています。

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