震災の経験を次世代に継承することを目的に、産経新聞社、積水ハウス、大阪ガスが協働で取り組む「防災キッズ育成サポートプロジェクト」がこのほど始まった。非常食づくりや防災学習ツアー、防災・減災の専門家を招いたトークショーなど、3日にわたる多彩なプログラムで、子どもたちに防災・減災の大切さを伝えていく。(オルタナS関西支局=立藤 慶子)

子どもたちに防災の大切さを教える東田氏 写真提供:産経新聞社

「ベッドと本棚はどこに置くのがいちばん安全ですか?」――。積水ハウス構造・防災研究開発グループ・東田豊彦氏が、3つの部屋の間取り図を見せながら質問すると、会場に集まった小中学生の親子・総勢51名から次々と手が上がる。

「ベッドから本棚が離れているパターンA…いや、接しているけど本棚の向きが違うパターンBじゃない?」

9月10日、積水ハウスが運営するオープンイノベーション施設「住ムフムラボ」で実施した同プロジェクトのオープニングイベントのひとコマだ。

「防災キッズ育成サポートプロジェクト」は、東日本大震災の翌年2012年から、産経新聞社が災害の記憶継承と地域再生力をテーマに開いてきた催しを発展させたもの。

昨年までは積水ハウスとともに、500人を対象とした1日だけのシンポジウムを開催してきたが、災害の記憶をより深く将来世代へつなぎ、自分たちの身近なことがらとして蓄積された防災ノウハウを「使う力」を育てようと、今年は大阪ガスも加わり3日間に及ぶ体験学習プログラムへと発展させた。その1回目が上述のオープニングイベントだ。

オープニングイベントでは、まず東田氏が、日常生活において災害時の対応力をつけるノウハウを紹介。家具の配置のほか、備蓄した食品を定期的に消費し、食べた分だけ買い足していく「ローリングストック法」の考え方や、いつもの整理整頓がいざというときの避難路確保になることなど、多彩なノウハウが紹介された。

新聞紙で紙皿づくりワークショップ。左は指導する東田氏。 写真提供:産経新聞社

災害時に身近なもので暮らしを続ける方法として、新聞紙でスリッパや紙皿を作るワークショップを実施。後半は、災害時非常食を子どもたちだけで調理し、炊飯器ではなく鍋で、しかも水がない場合を想定し、コーラや野菜ジュースなど身近な飲料で米を炊くなどの実験も行った。

子どもたちからは「災害のことや非常食についてたくさん知ることができておもしろかったです」「新聞で作ったスリッパがここちよかった」などの感想が聞かれた。

災害時非常食づくりのワークショップ。指導するのは甲南女子大学名誉教授・奥田和子氏
写真提供:産経新聞社

2回目のプログラムは10月15日に予定されている「子どもたちの防災&減災体験学習ツアー」だ。小中学生が、「大地震両川口津浪記石碑」※(大阪市浪速区)や、防災に関する研修・研究施設「人と防災未来センター」(神戸市中央区)を見学する予定だ。

3回目は「次世代につなぐ防災&減災フォーラム」が、12月17日大阪ガス・ハグミュージアム(大阪市西区)にて開催される。1・2回のプログラムに参加した小中学生による報告会のほか、人と防災未来センター長・河田惠昭氏など防災・減災の専門家によるトークショーを実施。参加無料。

※安政元(1854)年11月4日・5日に発生した地震と津波で犠牲となった人々の慰霊と、後世への戒めを語り継ぐために建てられた石碑。まさに前回の南海トラフ地震が大阪を襲ったことを伝えるため、地域の手で守り継がれてきた。

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