個人の手作り雑貨などを売買するサイト「Creema(クリーマ)」を立ち上げた丸林耕太郎社長(34)は、元DJという異色の経歴を持つ。音作りの経験から、クリエイターの「こだわり」には敏感に察知できた。「売買においてフェアな経済圏をつくりたい」という思いから、立ち上げ4年で、日本最大級のECサイトに成長させた。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
ソーシャルメディアの普及で、個人間のつながりが強化され、CtoC市場は盛り上がりをみせる。「ホビー白書2013」によると、2013年度の国内でのホビー・ハンドメイド関連市場は8246億円と推計されている。続々とハンドメイドに特化したサイトが出てきているが、その市場を牽引しているのがクリーマだ。大企業の資本を受けている競合サイトの躍進が目立つが、独自の道を進む。
丸林社長は2010年にクリーマを立ち上げた。出店クリエイター数は約18000人で、作品数は、50万点に及ぶ。月間100万人以上のユーザーが利用し、流通総額は3年連続で400%以上の成長を続ける。
毎年400%以上の成長を続けるが、丸林社長は、「実は、戦略と言えるほどの施策は打ってこなかった」と告白する。
立ち上げ初年度は、同サイトのクリエイター数は2500人だったが、それから3年で利用者数は7倍に増えている。しかし、利用者を増やすためのプロモーションはほとんど行ってこなかったと言う。年度ごとに目標数字も一応は掲げるが、「執拗なまでに数字は追っていない」。
丸林社長は、前職でセプテーニ・ホールディングスに4年間勤めており、メディア部長やアフィリエイト事業部長を歴任していた。サイト運営において、日々のPV数や市場分析はマストだったが、クリーマでは違う。丸林社長が創業時から大切にしてきたのは、マーケティングのノウハウではなく、自身が学生時代から抱いていた「違和感」だ。
■3000人のクリエイターが結集
その違和感は、「モノづくりにおいて、本当に良いモノが評価されるフェアな空間をつくりたい」という信念に変わった。この思いを形にしたのが、クリーマである。作り手のこだわりを消さないように、そして、買い手もフェアに商品を選べるように、「丁寧に大切に地道に」サイト運営を行ってきたと振り返る。
丸林社長が違和感を抱いたのは、慶應義塾大学に在籍していたときだ。在学中から、プロDJとして活躍し、国内外500を超える音楽イベントに参加してきた。しかし、周りのDJ仲間に対する評価のされ方に疑問を感じだした。
「自分よりも技術的にうまいDJがいるのに、コミュニケーション下手で仕事をまったくもらえていない人がいたり、その逆もいた」(丸林社長)。音楽文化をつくっていけるような潜在能力を持った逸材も、仕事がなくなり、泣く泣くサラリーマンになっていったという。
この経験から、「作品に対してフェアな評価ができる空間」が求められているはずだと感じた。そして、この思いを持ち続け、独立したのだ。
2013年にはネット上だけでなく、リアルな場でもその思いを形にした。東京ビッグサイトでハンドメイドの祭事を主催し、2日間で26847人が来場した。今年も、7月19・20日に同会場で行う。名称は、「ハンドメイドインジャパンフェス2014」だ。
会場では、3000人のクリエイターが手作り作品を出展する。丸林社長は、「誰かが決めた良いモノを何となく消費するのではなく、モノの背景やストーリーを知り、大切に思えることの楽しさを知ってほしい」と話す。有名無名問わず、フェアに商品を選ぶことのできる空間となる。
【ハンドメイドインジャパンフェス2014】
とき:2014年7月19・20日(11:00~19:00)
ところ:東京ビッグサイト(西2ホール・アトリウム・屋外展示場)
入場料:前売券:800円(1日)/1500円(2日) *小学生以下無料
当日券:1000円(1日)/1800円(2日) *小学生以下無料
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