タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆農地転用

「月に30万円の収入じゃ、俺たち4人は喰えめえ」
「喰えめえですね」啓介が頷いた。
その時、敏夫の電話が鳴った。
勢いよく電話に出た敏夫の声がだんだん沈んで行く。最後は「ほーですか。待ってます」と言って電話を切ったが、待っていたくないような声になっていた。
「どうした」末広が聞いた。
「農業委員会の田山さんが『工事は待てし』と言っている。今来るそうです」
「なんで工事してはいけねーんだ」
「農地転用がされていないからだってこんです」
「農地転用?なんだそりゃ」
そんなやり取りをしていたら、市の白い軽乗用車がやって来た」不機嫌な顔をした田山という40年配の小さな男だった。日に焼けた顔に皺が深い。
車から降りると敏夫に言った。「農地転用をしなければいけんずら」
「なぜだね」
「どうすりゃいいですか?」敏夫が言った。
「この農地は青地だからソーラーパネルなんか置いてはいけんよ」
「ここは青地かね」敏夫が言った。「親父は生前白地だって言ってたもんで」
「立派な青地だ。第一種農地ってこんだ。一旦撤去してもらってそれからの相談てこんだ」
「じゃあ今相談したらどうでえ」末広が気色ばんで言った。「どうしたらいいかここで決めようぜ」
「そんなに簡単に言わんで下さい」
「わざともったいぶる必要もないだろ」末広は必要をしつようと発音した。
「執拗にいっているつもりはないですよ」
「執拗にいってるとは言ってねえ。必要と言っているんだ」
「しつようはねえって言ってるだけじゃねえか」
「社長!地元は俺に任せて下さい」敏夫が言った。田山に向き直って「すみません。教えてください」と言った。「白地ならどうするってこんですか」
「白地なら農転ができる」
「白地と青地の違いを説明してください」敏夫が言った。
「青地と言う農地は、優良な農地を指すだよ」
「優良って?」
「隣の農地を買収したり借りたりしてどんどん大きくなれる土地ずら」

「隣は森だけんど」敏夫が言った。
「森だけんど地目は農地ってこんだよ」
「田畑じゃない農地なんてあるですか」
「30年前はじゃが芋を作っていた。だけんど30年間放っておいたから雑木林になったってこんだ」
「この農地だって一年以上なにも植えてない。隣の森も30年間何も作っていない。そんな農地が大規模な農地になりえる優良農地ですか?」
「法律ではそういうこんだ」
「だから俺たちはそういう農地だったところを再び畑にしようとしてるんじゃないか」
末広が野太い声で言った。
「それはいいですが、太陽光パネルはダメです」
「なんでダメなんだ。パネルは空中だぜ。農地にソーラーパネルを敷き詰めるんじゃないぞ」
「でも上を覆うでしょう」
「じゃなにかい。飛行機も畑の上を飛んじゃなんねえって言ってるんか」
「ほうではないです。だけど前例がないです」
「じゃあ前例を作ろうじゃないか。耕作放棄地が復興して、放射能の心配がない発電が出来るんだぜ」末広の口調が熱気を帯びた。「太陽光発電の仕事を俺はケニアでやって来た。野生動物の保護の為に設置してきた」田山の方に向いていた敏夫が今度は末広に向って驚いた顔をして尋ねた。「社長はケニアにいたんですか」
「いたよ、象が町に出ないように電気の柵を作ったんだ」
「電気柵ってこんですか?」田山が末広を見上げて言った。
「うん。サバンナには電気がねえからソーラーで発電した」
「鹿や猪の電気柵ならこの辺にいくらでもありますけど、象の奴は大きいんでしょうね」
田山は引き込まれるように質問して、しまったと言う顔をした。
「いやこのパネル2枚で十分だが、範囲は広いよ。あの山の麓くらいまでだね」
心配そうに近づいてきたリズに啓介がやり取りを通訳した。始めは怪訝そうな顔つきだったリズが大きく頷いた。「He told me that」

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