障がい者の就労支援などのソーシャルビジネスを展開するゼネラルパートナーズ(東京・中央)は、このほど、周囲に配慮を必要としていることを知らせる「ヘルプマーク」の認知度・利用状況に関するアンケート調査を行った。20代から60代の身体・知的・精神障がいのある379人に聞いたところ、約半数がヘルプマークを「知っている」と回答した一方、そのうちの利用率はわずか22%に留まった。ヘルプマークが普及していくためには、認知度を向上させるだけでなく、認知している人を利用につなげていくための仕組みが不可欠だ。(オルタナS編集長=池田 真隆)
義足や人口関節を使用している人、難病や妊娠初期の人など、外見では分からなくても援助や配慮を必要としている人は多い。その為、周囲に配慮を必要としていることを知らせ、援助を得やすくすることを目的に作成されたのがヘルプマークだ。東京都が作成し、2012年から都営地下鉄大江戸線で配布が開始された。今年7月には日本工業規格(JIS)に登録され、今後は全国へ普及されていくことが予測される。
そこで同社では、運営する調査・研究機関「障がい者総合研究所」において、ヘルプマークに関するアンケート調査を行った。認知度や利用状況、その課題を明らかにすることで、普及の促進につなげていきたい考えだ。
調査結果によれば、ヘルプマークを「知っている」と回答した人は47%。特に首都圏の認知度のほうが55%と高く、その他の地域は38%という結果になった。一方で、ヘルプマークを知っている人の利用率は22%と低く、首都圏でも29%に留まっている。その他の地域では利用率はさらに低く11%。知られてはいても、利用されていないという実態が明らかになった。
なぜヘルプマークを利用しないのか。ヘルプマークを利用したいと思っている人が、まだ利用していない最も多い理由は「入手方法が分からないから」(58%)だった。ヘルプマークは都内であれば、都営地下鉄の各駅や都営バスの各営業所、都立病院などで無料配布している。障害者手帳などの提出書類は必要ない。しかし、こうした情報が、必要としている人々に十分に届いていないものと思われる。
次に、ヘルプマークを利用したくない人の理由は「利用時の周囲の反応が気になるから」(35%)、「認知不足により役に立たないと思うから」(33%)だった。
このほか、同調査では、ヘルプマークについて改善してほしいことも聞いている。回答には、入手方法についての普及を求める声や、身体に付けやすいデザインへ改良することを求める声が出た。なかには、「ヘルプマークを付けている人に対する差別的な世間の目を変えていかないと普及は難しいと思う(40代/男性/身体障がい)」といった、認知やデザインの問題だけではなく、社会全体の意識の変化を求める声もあった。
「公共交通機関で席を譲ってもらいやすくなった」という声も見られるなど、ヘルプマークが一定の成果を出していると評価もできるが、今後の課題は入手方法の広報と社会全体の意識の啓発だろう。
障がい者総合研究所の中山伸大所長は、「ヘルプマークを利用したくない人は、利用することで差別や偏見の対象になることを恐れていることが伺える。ヘルプマークが普及するためには、認知を向上させるだけでなく、障がい者など援助を求める人に対する社会全体のまなざしも変えていく必要がある」と述べた。
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