アートや音楽、映像などエンターテインメントを通じ、誰も排除しない「まぜこぜの社会」の実現を目指す一般社団法人Get in touch。代表を務めるのは、女優の東ちづるさん。障がいや病気、国籍や性別などで「他の人とは違う」とみなされ、それによって生きづらさを抱えるマイノリティーの人たちと共に、「違い」をアドバンテージにして、楽しめる社会をつくります。活動について、お話をお伺いしました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■エンターテインメント通じ、「違い」をアドバンテージに

Get in touch代表の東ちづるさん(右)。「MAZEKOZEブルーペイント」で、アーテイストの尾形理子さん(左)と

東ちづるさんが代表を務める一般社団法人Get in touch(ゲットインタッチ、東京)。誰もがそれぞれの個性を生かし、豊かな人生を創造できる社会の実現を目指して、障がいのあるアーティストの作品展やライブ、ファッションショー、映像制作などエンターテインメントを通じ、違いをアドバンテージにできる社会の実現へ向けて啓発活動を行ってきました。

10万人以上を動員した『東京レインボープライド2017』では、Get in touchもパレードに参加

「行っているのは、マイノリティのPR活動。障がいの有無やLGBT、貧富の差や国籍の違う人たちと、互いの違いを『認め合う』といえばきれいだが、そうでなくても、ただ一緒にいる空間や時間、人間関係を作っていくことで、だんだんわかってくることがある。エンターテインメントなら、こういった課題に興味がない人たちも巻き込みながら、楽しく理解を深めていくことができる」。エンターテインメントの分野に特化して活動する理由を、東さんはそう語ります。

排除される人たちが出てきてしまう、健常者中心の「障害社会」

「障がい者」と「健常者」という概念、そしてその間に立ちはだかる壁について、東さんは次のように指摘します。

Get in touchファミリーの皆さんと、世界自閉症啓発デー『Warm Blue2017キャンペーン』のPRで東京都庁を訪問し、小池都知事と面談

「存在しているのは『障がい者』ではなく、マイノリティに生きづらさや暮らしにくさを与えている『障害社会』。 障がい者や難病患者、LGBTやシングルマザーなどが、その特性でマイノリティにカテゴライズされ、生きづらさを感じたり不具合があるならば、それは社会に問題がある」。

現在の日本社会は、マイノリティの人たちを想定してつくられていない物事が多く「周囲に迷惑をかけたくない」と街中へ出ることを遠慮している人たちがいるといいます。

「東京レインボープライド2017」のパレードでGet in touchのフロートに登場したメンバーたち

「車椅子ユーザーがいるのに、公共の場に階段はあってもエレベーターやスロープがなかったり、小人症の人がいるのに公衆トイレの水道が高い位置に設置してあって、手が洗えなかったり。『自分の住んでいる地域にはマイノリティはいないから大丈夫』と思う人でも、だとしたら『なぜ、マイノリティがいないのか』を考えてみてほしい。必ずいる。では『なぜ街に出てこられないのか』、考えてほしい」と訴えます。

「違い」以外はまったく同じ。障がい者は「聖人」ではない

「健常者と変わらず趣味や嗜好、性欲だってあるのに、障がい者をまるで聖職者や聖人のように思っている人が多いのではないかと感じる」と東さんは話します。

アート展「MAZEKOZE ART3」準備の様子

「障がい者は弱者で、性欲や趣味嗜好もなく、毎日を楽しみ、自分らしく生きたい、幸せになりたいと思っていない、と悪気なく世間の多くの人たちが思っている。『違う』部分にばかり意識がいきがちだが、障がい者も『違い』以外はまったく同じ。『支援する側』『される側』ではいつまでたっても、関係はパラレル。そうではなく、互いに違いをおもしろがりながら、依存し合って生きていく。そんな『まぜこぜ』な社会を実現したい」

■失敗を受け入れ、「遠慮」ではなく「配慮」を学ぶ

普段接する機会がないあまり、街中で困っている車椅子ユーザーや白杖を手にしている人たちを見かけても「正しく理解して、失礼のないように対応したい」と声をかけるのをためらったり、身構えてしまうが、どうすればよいか──。

そんな質問に、東さんは次のように答えてくれました。

「大事なのは、普段から互いを知ること。もし困っている人を見かけたら『困っているように見えたけれど、違ったらすみません。何か手伝いましょうか?』と一声かけるだけでいい。そうすれば、相手からも反応がある。完璧なんてないし、失敗や間違いを繰り返しながら、互いに『配慮』を学んでいく。対等な気持ちさえあれば『遠慮』は全く必要ない」

■「違い」をアドバンテージにできる社会の実現を応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、Get in touchと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

集まったチャリティーは、Get in touchが来月10日にさまざまな特性を持つパフォーマーやアーティストと一緒に作り上げる舞台「月夜のからくりハウス」開催のための資金となります。

平成まぜこぜ一座『月夜のからくりハウス』は、小人プロレス、車椅子ダンサー、全盲の落語家など、摩訶不思議なパフォーマーたちがくりひろげる一夜限りのエンターテイメント。2017年12月10日(日) @クラブeX(品川プリンスホテル)で開催

「月夜のからくりハウス」開催への思いを、東さんは次のように語ります。

「自分の身体の特性をアドバンテージにして、努力を重ね、プロのアーティストとして活躍したいと思っている人はたくさんいる。しかし現在の日本は、周囲の人が妙に気を遣い、マイノリティが見世物になることがどこかタブー視され、マイノリティの人たちが活躍できる場は非常に少ない。…マイノリティがかわいそうだから?彼らを笑うと悪いから?そうではない。彼らはプロとして、自分の身体に誇りを持ち、笑いをとりにいっているのだから。彼らがプロのアーティストとして表現できる場所を、もっと増やしていきたい」

「JAMMIN×Get in touch」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にスウェットやパーカーなどあり

チャリティーアイテムのデザインは、アーティストとして活躍する田久保妙(たくぼ・たえ)さん(ダウン症)のイラストと、JAMMINのタイポグラフィーの合作。楽しく、ゆるくつながりながら「誰も排除しない、まぜこぜの社会」を目指すGet in touchの活動を表現しています。

チャリティーアイテムの販売期間は、11月20日〜11月26日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、東さんが活動に至った東日本大震災での出来事や、Get in touchの活動について、より詳しいインタビューを掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてください。

「配慮」があれば「遠慮」なんていらない!誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指す〜一般社団法人Get in touch

山本 めぐみ(JAMMIN):
京都発チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」専属ライター。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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