伊藤忠商事は東京都教育委員会と共に、11月16日から、本社横に構える伊藤忠青山アートスクエアで「第3回 東京都特別支援学校アートプロジェクト展」を開催している。都内69の特別支援学校に在籍する児童・生徒から813点の応募があり、そのなかから東京藝術大学美術学部の協力による審査を経て選ばれた、優れた50作品を展示した。枠にはまらない作品を通して、一人ひとりの個性を感じることができる。(オルタナS編集長=池田 真隆)
同展覧会は障がい者の理解促進を図るために、東京都教育委員会が企画した。伊藤忠商事では社会貢献活動の柱の一つに次世代育成を掲げており、この取組に賛同し、会場提供している。
会場の伊藤忠青山アートスクエアは同社の本社横に位置する「次世代育成」、「地域貢献」、「国内外の芸術や文化の振興」等を目的としたギャラリースペース。青山周辺のビジネスパーソンらがアクセスしやすく、アート作品を通して、様々な社会問題の啓発を行ってきた。
同展覧会では展示する作品を公募した。都内69の特別支援学校に在籍する児童・生徒から813点の応募が集まり、そのなかから50点を展示した。審査および展示方法には、東京藝術大学美術学部が協力した。
東京都教育庁指導部特別支援教育指導課長の伏見明氏は、「障がいがある子どもの作品としてではなく、一つの美術作品として観てほしい」「色の使い方や線の書き方、構図などに注目してもらいたい。作品を通して子どもの内面を知ることができる」と話す。
都立特別支援学校では東京オリンピック・パラリンピックに向けてボランティアマインドを醸成する一環として、2016年度から新たな社会貢献活動を始めた。それは、高齢者施設での交流である。これまでも、水やりや清掃などのボランティア活動はしていたが、「人」に対して貢献する活動を始めた。
伏見氏は、「トラブルが起きてしまうことを恐れ、直接、人に対しての貢献活動はまれであったが、実際に施設を訪ねてみると、高齢者の方にも喜んでいただき、子どもたち自身の成長も見られた。これまで、周りの大人たちが子どもの可能性に枠をはめていた」と述べた。
展示している作品についても、「既成概念に縛られていない」として、「枠にはめないで、子どもの才能や可能性に着目してほしい」と話した。
渡辺雄成さん(都立石神井特別支援学校中学部3年・知的障害)は、水彩絵の具やクレヨンで数字や言葉を画用紙いっぱいに書いた。伏見氏は、「ここに連なった言葉を見て、自閉的な傾向がある子どもの内面を知ることができる」と話した。
菅原浩史さん(都立文京盲学校高等部2年・視覚障害)は、陶芸の作品をつくった。弱視だが、高さ30センチほどの立体物を製作した。
今回、審査や展示にも協力した、武内優記・東京藝術大学美術学部美術教育助教も、「固定概念を壊される作品に出合えた」と評価した。
梅澤快斗さん(都立久我山青光学園中学部3年・視覚障害)は視覚障がいがあり、手指の感覚も十分に生かしながら、人の形をした陶芸作品を作った。
この作品について、武内氏は、「若干、へこんでいる頭の形や、目の位置など、手で触りながら制作しているので、整った形ではないが、自然体である。視覚的に整えた作品でないからこそ、迫力ある表情とかわいらしさを両立できている。これを作れと言われても、作ることは難しい」と称賛した。
同展覧会の名称は、「第3回 東京都特別支援学校アートプロジェクト展 未来へ~心ゆさぶる色・形~」。11月30日までで会期中は無休。入場料は無料。