スターバックス コーヒー ジャパン(東京・品川)は2012年、震災遺児の進学支援を始めた。寄付付きプリペイドカード「ハミングバード」を1枚1000円で販売。このカードがきっかけで、地域貢献活動も年々増えている。(オルタナS編集長=池田 真隆)
同カードは千円から発行でき、顧客の発行金額のうち100円とカードで支払った金額の1%相当額を同社がマッチングして寄付する。寄付先は、東日本大震災を機に設立された震災遺児の進学支援を行う公益財団法人みちのく未来基金。
売上高の一部を寄付に充てるコーズマーケティングは、寄付金が年数とともに漸減する傾向になることが課題だ。そんななか、この取り組みは年を経つごとに寄付金額を上げていった。2012年の寄付総額は1943万円だったのが、2016年には2437万円を記録した。
このカードは毎年デザインを変えて9─10月の約2カ月限定で10万枚程度販売してきた。2016年には販売枚数を12万枚に増やしたが、1カ月半で終了した。各店舗のレジ前などにPOPを置き、パートナー(従業員)が客に説明する「人海戦術」で広めてきた。各店舗の発行枚数や寄付額を社内で共有し、店舗スタッフの士気を高めてきた。毎年3月に、み
ちのく未来基金が開く、奨学生との交流会があるが、寄付成績上位の店舗から参加者を募っている。
■8千件の地域貢献活動
1店舗平均で年に100枚ほど発行する。カードの売上枚数が伸びたのは国内店舗数が増えたこともあるが、「地域とのリレーションシップを構築するきっかけ」として各店舗が価値を認めたことが大きいという。
この企画を考えた同社広報部の酒井恵美子氏は、「店舗ごとに地域貢献を行う重要性を考えるようになった」と話す。同社では社会貢献活動の柱の一つに、地域貢献活動を掲げる。
各店舗では、清掃活動や中学生向けの職場体験、母親向けに「ママカフェ」などサードプレイスとしての場を生かした取り組みを行う。2010年度は約5千件(店舗数912)だった取り組み件数が、2017年度は8千件に増えた。
2016年にカードを最も販売(1265枚)した守谷サービスエリア(上り線)店の永妻千尭ストアマネジャーは、「この企画の背景を伝えることを重視した」と言う。このカードがきっかけで、客とパートナーの会話が自然と生まれるようになり、「思いを共有できるようになった」と手応えを述べた。
人海戦術の効果で、みちのく未来基金への寄付額が毎年9月に上がる。同団体の末田隆司・業務執行理事は「例年3月11日前後に寄付額が上がり、秋には下がる傾向にあるが、キャンペーンに呼応して一定レベルが維持されてきた。店頭で基金を知った方からの支援だろう」と述べた。
震災から6年が経過し、風化しつつある。東北を忘れさせないために、来年度からはこのカードをリブランディングして展開する。販売開始時期は2018年3月を予定している。