皆さんは、チベットの歴史をご存知ですか?もとは一つの独立国家でありながら、侵略を受け、土地や文化をも奪われてしまったチベット。現在、生きる場所を失った多くのチベット人たちは、世界各地へと亡命し、難民として生活しています。亡命後も生活は苦しく、才能を持ちながらも高等教育を受けられない若者たちが大勢います。奨学金支援を通じ、チベットの若者に高等教育を届け、平和への願いを託し続けるNPOを紹介します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■後を絶たない、焼身抗議による死者

チベット人は、子どもを含めてほとんどがチベット仏教徒。「難民」という境遇と引き替えに、信仰の自由の中に暮らしている

自らの体に火を放ち、中国の政策に抗議するチベット人──。

ある情報によると2009年から2014年の5年間で、136人のチベット人が焼身抗議を行っています(そのうちの死亡者は113人)。焼身抗議を行ったチベット人の数は、現在160名を超えているとされますが、その正確な数は明らかになっていません。

亡命政府が置かれ、ダライ・ラマ法王も暮らすインド・ダラムサラはチベット仏教の聖地でもある。世界中から訪れる観光客に混じって、チベット仏教の僧侶が歩く姿が日常的に見られる

彼らはなぜ、たった一つしかない自らの命をかけて、焼身抗議を行うのか。命をさし出してまで、彼らが訴えようとしていることは何なのか──。

現在、世界中に約134,000人の亡命チベット人が暮らしています。それぞれの地で、祖国を思いながら暮らしている人々。チベット人は、過酷な状況下に置かれています。

■チベットの若者の高等教育を取り巻く現状とは

チベットの手工芸品を売る店。チベット人にとって、観光産業は大切な収入源となっている

NPO法人レインボーチルドレン(奈良)は、難民としてインドで生活するチベットの若者が大学や大学院などの高等教育機関に通うための奨学金支援を行ってきました。

インドに亡命したチベット難民の進学の現状について、レインボーチルドレン代表の石川辰雄(いしかわ・たつお)さん(47)は、次のように語ります。

「生活が苦しく、ほとんどの若者が大学に進学できない。日本のように親が学費や下宿代を負担して子どもを大学へ進学させるケースはまず無い」

レインボーチルドレン代表の石川辰雄さん

その背景として、インドにおけるチベット難民の生活状況が影響していると石川さんは指摘します。

「インドに住んでこそいるが、インド国籍もなく、インド社会で生きて行く術も持たない彼らは、そのほとんどが手工芸品やアクセサリーなど故郷であるチベットを売りにした観光産業に頼らざるを得ない。細々とした生活の中で、子どもを進学させる余裕がないのが現状」

チベットの未来のために、高等教育の機会を提供、今後はリーダー育成にも注力

2017年秋に行われた奨学生ミーティングで、首都デリーの様々な大学に通う学生たちと、日本の文化を伝える”布わらじ”をTシャツで作るワークショップを行った時の様子

石川さんは、才能あるチベットの若者の未来のために高等教育の機会を提供したいと6年前に活動を開始。保険営業の仕事とNPOの運営、二足のわらじでこれまで活動を続けてきました。

3人の学生への支援から始まった奨学金支援は、2017年には念願だった100名への支援を達成しました。奨学生の中から世界と対等に渡り歩き、社会を良くしていく「未来のリーダー」を育てていくために、今後は人材育成の部分でも彼らを支援していきたいと話す石川さん。

レインボーチルドレンの支援を受けて大学に入学した奨学生たち。彼らの夢を尋ねると「教職」が一番人気。中国にあるチベット自治区と違い、インドにある自治区では、教師として次世代の子どもたちへチベットの言葉と文字と文化を教えることができるからだという

「チベット人として古くから引き継がれてきた文化や誇りを受け継ぎながら、教養を身につけ、どんな分野であれ、次世代を担うリーダーが生まれてくれたら」。そんな思いで、社会問題を自ら変えていくことができる人材を育成するためのプロジェクト「BE THE CHANGEプロジェクト」を開始しました。

3月には、チベット政府の協力の元、チベット人奨学生100名と日本人大学生20名とが交流する「日本チベット学生会議」を、デリー・ダラムサラの2箇所で開催します。

「BE THE CHANGEプロジェクト」に参加し、3月に開催される「日本チベット学生会議」で日本の学生を代表して現地へ赴く大学生の皆さん

団体初の試みとなるこの会議では、レインボーチルドレンが支援するチベット人奨学生と、日本から現地を訪れる大学生がワークショップなどを通じて交流し、国籍や文化、信条などあらゆる違いを乗り越え、刺激を受ける中で、参加者が自分の可能性を自覚し、人として成長することを目標としています。

「チベット人は、たとえ非常に有能な奨学生であっても、難民というその特殊な立場から、海外を自由に行き来することは難しい。今回の会議で、歴史や文化を全く異にする日本人学生との交流を通じて、彼らが異文化を知り、新たな視点や刺激を受けて成長する機会になれば」。このプロジェクトへの思いを、石川さんはそう語ります。

■日本人とチベット人が共通して持つ「平和の遺伝子」

笑顔が素敵なチベット学校の女性の校長先生。曰く「愛情をたっぷり受けて育った子どもは、他へ愛情を伝えることができるようになる」。チベット学校の多くは全寮制の制度を取り、親の代わりに同じ敷地内に住む先生と寮母さんの愛情を1日中受けて成長する

活動当初から、チベットの学生と触れ合うたびに彼らの深い精神性に感銘を受け、彼らが平和的な社会のリーダーになる資質を持っていることに気づかされたという石川さん。日本人とチベット人が共通して持つという「遺伝子」の存在について教えてくれました。

「日本人とチベット人が高い数値で共通して持つ遺伝子がある。これはつまり、現在のチベット人集団と日本人集団はそれぞれ、太古の昔をたどると同じルーツを持っている可能性が高い。私は、日本人とチベット人、両方が持つこの遺伝子を『平和の遺伝子』だと感じている。世界平和を考えたとき、チベット人と日本人は大きなカギを握っているのではないか。チベットと日本、ここから、平和をかなえるリーダーが生まれてくれたら」

3月に開催される「日本チベット学生会議」には、石川さんのそんな思いも込められています。

■「日本チベット学生会議」へ赴く日本人大学生たちを応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、「レインボー・チルドレン」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

集まったチャリティーは、3月に開催される「日本チベット学生会議」で、日本を代表してインドへ赴く20名の大学生に今回のオリジナルデザインのTシャツを購入するための資金になります。

「JAMMIN×レインボーチルドレン」1週間限定のチャリティーデザイン(ベーシックTシャツのカラーは全8色。他にスウェットやパーカーなどあり)

JAMMINがデザインしたアイテムには、チベット旗に描かれる「雪獅子(スノーライオン)」が描かれています。山間の隔たりを物ともせず、堂々と気高く飛び越える姿は、平和への橋渡しとなる人々を表現しました。

Tシャツ1枚につき700円が、レインボーチルドレンにチャリティーされます。

「何かできることがしたい」と今回のプロジェクトに参加し、毎月研修を重ねてきた大学生の皆さん。ぜひ、今回のコラボTシャツを着て、初開催となる「日本チベット学生会議」の成功を応援してください!

チャリティーアイテムの販売機関は、1月15日〜1月21日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、チベットの現状について、そしてレインボーチルドレンの活動について、石川さんのより詳しいインタビューを掲載中!
こちらもぜひチェックしてくださいね。

国を持たないチベット難民の若者に、世界へはばたき、リーダーとして平和を担う高等教育を〜NPO法人レインボーチルドレン

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

【JAMMIN】
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