独居老人や高齢化などの課題を抱える神戸市では、ソーシャル(社会問題に関心を持つこと)を切り札にまちの課題解決に力を入れる。このほど、「こうべソーシャルフォーラム」を開き、神戸を拠点に活動する行政、企業、NPO、フリーランス、学生など20人以上のゲストが登壇した。今年3月からは、企業や行政とNPOをつなぐ取り組みも実施する。(オルタナS編集長=池田 真隆)
こうべソーシャルフォーラムは去年に続き2回目。企画したのは、NPO法人しゃらくやコープこうべ、神戸YMCAなどの有志からなる実行員会。昨年はボランタリーな取り組みであったが、今年は神戸市が協賛についた。
独居老人や高齢化などの課題を抱える神戸市では、ソーシャルを切り札にまちの課題解決に力を入れる。今年3月から、「KOBEソーシャルブリッジ」を実施。これは、「社会貢献に取り組みたい企業の社員や行政の職員」と「NPOなど社会課題に取り組む団体」をつなぐ事業だ。
神戸市市民参画推進局市民協働推進課の山根賢治氏は、「近年、行政だけでは解決できない様々な社会課題が顕在化しており、NPO、企業、学生、行政などが連携しながら課題解決に取り組むことが必要だと考えている」と話した。
こうべソーシャルフォーラムについては、「ソーシャルな活動に取り組んでいる企業の社員や行政の職員、教員、学生、個人が参加し、交流しつながることにより、新たなソーシャルな流れが生まれることを期待している」と述べた。
当日は通信制高校に通う生徒の進路支援を行う認定NPO法人D×P(ディーピー)の今井紀明理事長の基調講演で幕が開き、その後、7種類の分科会が開かれた。
テーマは「公務員」「教員」「企業」「学生」「NPO」「フリーランス」と各セクターに分けて、それぞれの立場でソーシャルな活動を実践する経緯ややりがいなどについて話し合われた。当日の企画・運営に関わった甲南女子大学生による特別セッションも行われた。
■神戸で活動する4人の学生が登壇
神戸市で活動する学生が登壇したセッションでは、4人の学生が登壇した。和ろうそくの手作りキットの販売や体験教室を開く甲南大学マネジメント創造学部の若林瑞穂さん、災害復興支援や防災活動を行うNPO法人ワカモノヂカラプロジェクトの副代表理事の原結麻さん、フードロスに取り組み学生団体ぶさいく・べじたぶる(通称:ぶさべじ)の木村有希さん、ITで新長田南地区商店街の活性化を行う神戸星城高校3年の出射詩音さん。モデレーターは、神戸への移住支援や企業へのインターンコーディネートを行う鶴巻耕介さんが務めた。
東日本大震災が発生したとき中学生だった原さんは、その日、学校を早退した。TVで、ディズニーランドが浸水している映像を見たことが忘れられなく、「地域のために何かしたいと思った」と振り返る。
中学、高校の間は金銭的にも時間的にも余裕がなく、大学生になってから復興支援に取り組みだした。原さんは、「ずっと心の中にあった思いを実現したかった」と話した。
フードロスに取り組むぶさべじの木村さんは、「過疎化が進み、食糧廃棄や農家の後継ぎ不足が喫緊の課題になっている」とし、「いますぐ大きくは変わらないが、地域単位で少しずつ変わってきていると実感している」と述べた。
ファーマーズマーケットや学生が農家へインターンする動きなどで、若者の新規就農者も出てきている。木村さんは、「まだ進路は定まっていないが、この領域で活動していきたい。お世話になった農家さんや地域に還元できたら」と将来について話した。