ラダックは、インドのジャンムー・カシミール州東部のヒマラヤ山脈やカラコルム山脈に囲まれる山岳地帯である。夏は気温が30度まであがり、冬はマイナス40度にもなる厳しい気候の地域だ。ほとんどの人々は農業や牧畜をして自給自足の生活を営んでおり、チベット文化が色濃く残っている。

助け合いが文化として成立するインド・ラダック photo by bourgeoiscosta


人々は小麦や大麦、野菜などを栽培している。多くの農作業は住民同士で協力して行う。畑によって、作物の成長する時期が違うので、みんなで一緒に働けば必要なときに必要な作業を迅速に行うことができるからだ。農作業が忙しい時期には農具や家畜も、労働、あるいはミルクやチーズなどとの交換で共有される。

このように「助け合い」によって、労働や物々交換がなされ、経済を形作っている。他人と協力する習慣が生活の中に根付いているため、ラダックの人々は家族だけではなく、隣人や他の村の人まで、他人を助けるのは自分たちのためだと考えている。トラブルが起こった時には仲介人が入り、3者でじっくり話し合い、解決される。

一方、私たちが生きている社会は、いかにして「個」として生き残るか、という課題が根底にある競争社会だ。ラダックの人々のように緊密な関係がある共生社会のほうが、人間らしい生活を送れるのかもしれない。(オルタナS特派員 猪鹿倉陽子)

参考:ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ『ラダック 懐かしい未来』