2月1日、全国で中学・高校受験シーズンが本格的に到来しました。受験生は厳しい寒さのなか、会場に向かいますが、そこには仮設住宅から受験に挑む子どももいます。中学3年生の田中駿くん(仮名)は熊本地震で被災し、家族4人で仮設住宅で暮らしています。認定NPO法人カタリバが行う夜間学習会などに毎晩通い、勉強に励んできました。駿くんは「合格したとしても来年もまだ仮設かもしれない。けれど将来は家族に恩返ししたい」と前を向きます。駿くんと母親に話を聞くと、進まない生活再建と将来へ不安を抱く子どもたちの現状が明らかになりました。(文・クラウドファンディングサービスReadyfor)
2001年に設立された教育NPO「カタリバ」。震災や貧困などどんな環境に生まれ育っても未来は創り出せると信じられる社会を目指して、活動を行っています。ここが運営する、熊本地震で被災した子どもたちのための放課後学習支援「ましき夢創塾」には、今でも212人の子どもたちが通い続けています。熊本県立高校の前期入試が2月1日に始まり、ましき夢創塾の「夜間学習会」と「放課後学校での学習会」に通う中学3年生の約30人が試験本番に臨みます。日々勉強に励む彼らが立ち向かっている現状とは何でしょうか。
今年1月中旬、家族4人で仮設住宅に暮らし、ほぼ毎晩「ましき夢創塾」で勉強をしている、中学3年生の駿くん(仮名)とお母さんに、お話を聞くことができました。
撮影された以下の動画から、その様子を見ることができます。
――仮設住宅での暮らしはどうですか。
駿くん:仮設住宅には、同い年くらいの子どもがいない。ここには、中学3年生は何人かいるけど、男子は僕1人。弟とサッカーしたり、小さい子たちの面倒を見たりしています。元の家だったら仲の良い友達と遊んでいたけど、いまは遊ぶ回数は減りました。
――受験に向けて勉強は順調ですか。
駿くん:勉強は嫌いで…、受験勉強は本当に辛いです。今それでも頑張れるのは、第一志望の高校に行きたいし、落ちたときは後悔すると思うから。頑張るのはあと2、3ヶ月だって、やる気を出しています。
今は、カタリバ(放課後教室)が楽しい。教えてもらって解き方がわかることが嬉しい。仮設の部屋に帰っても勉強をやらないといけない、そう思っても、部屋は暗くて、ドアがなくて、隣の部屋からテレビの音も聞こえる…。両親は、寒くないようにこたつを買ってきてくれて、弟もできるだけ僕の邪魔にならないように、協力してくれます。
――受験が終わったらやりたいことや欲しいものはありますか。
駿くん:願いが叶うなら、サッカーができる場所が欲しい。高校に進学して、部活でサッカーすることしかほとんど考えられないくらい、サッカーがしたい。今は周りが、コンクリートや砂利の狭い場所しかないから。それと、来年はまだ仮設に入っているかもしれないけど…、将来は、恩返しもしたいです。
■進まない生活再建、子どもたちに必要な「心の復興」
2016年4月に熊本地震が発生してから、もうすぐ2年。全国的な被災地への関心は風化していますが、特に被害の大きかった益城町(ましきまち)の復興は長期化しています。未だ3000人以上が仮設住宅で暮らし、生活再建が進んでいません。
現時点でその6割は、自宅再建の目処が立たなかったり、賃貸住宅が見つからなかったりすることを理由に、「入居期間の延長」を選ばざるを得ない状況です。
そんな中、多くの子どもたちは将来に不安を抱いたままです。熊本地震の影響で心のケアが必要とされる子どもたちの数は、2000人以上とされ、増加傾向にあります。
実際、阪神淡路大震災では、心のケアが必要な子どもは、3年後に一番多くなったそうです。また、その数が減り始めるまでは5年の歳月がかかりました*。今年4月に、震災発生から2年となる益城町では、「心の復興」に対して、これからの支援が肝心となります。
(*参考「災害を受けた子どもたちの心の理解とケア 研修資料」平成23年3月31日 兵庫県教育委員会)
インタビューを受けてくれたお母さんは、「カタリバでは、集会所を夜間解放してくれているので、子どもはそこでも必死に勉強してくれているけれど、仮設住宅の環境では本当に集中できない。申し訳ない気持ちでいっぱいです。いまは家が欲しい。それが一番です」と話してくれました。駿くんの第一志望校の入試は、3月。本番に向けて、ラストスパートの今、懸命に勉強に励みます。
・「ましき夢創塾」を応援してください
カタリバは、これまで約24万人の高校生にキャリア学習を、東北の被災地の子どもたち約2700人に、学ぶ機会と心のケアを届けました。その経験を活かして、熊本地震のおよそ2カ月後、益城町で「ましき夢創塾」を開校し、放課後教室を開いてきました。
未だ復興の道半ばの熊本。大人たちは生活再建に忙しく、子どもたちは誰かに話を聞いてもらいたくても相手もいない。プライバシーが少なく狭い仮設住宅では落ち着いて過ごせない。
安心して勉強できる居場所と心のケアができる放課後学校を、仮設住宅最後の中学生が卒業する、2019年3月まで続けるため、寄附を募っています。子どもたちが「震災があったから夢を諦めた」そう思わないで済むように、皆様の力を、どうか貸してください
クラウドファンディング実施中です。ご寄附をよろしくお願いいたします。
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