人口増加、シンギュラリティ、食料・水不足問題、エネルギー問題… 未来に対しさまざまな社会問題が予測され、問題に向けてのたくさんのソリューションが求められている現代。理想や外枠の大きな話は語られていても、私たち一人ひとりがどういうあり方で、どう具体的に行動すればいいかといった議論についてあまり多くは語られていない現状があります。これからの社会に向けて、私たちは具体的にどういったマインドセットで、どういったアクションを起こせばいいのでしょうか?
そこで、一般社団法人ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン代表理事/放送作家/京都造形芸術大学教授の谷崎テトラさんと、国際環境NGO 350.ORGの日本支部 350Japan 代表 古野真さんのお二人にお話を伺いました。(松尾 沙織)
■あなたが望む世界は?『WorldShift』で未来を考える
テトラ:『WorldShift』の宣言シートは、「あなたはどういう世界を望みますか?」という問いを投げかけるものでもあるんです。すでにある社会の仕組みのなかに僕たちはいます。それは変えられないという基本的な思い込みがある。それが、僕たちの望む方向に変えていくことができるんだってことに気づくことがとても大切なんです。
まず誰もが「こういう世界を望んでいる」ということに気づくことから始める。そのためには現実に「どんな課題があるのか?」ということを考えてみる。矢印はそのソリューションということになります。宣言(アファーメーション)をすることで自分が望む世界に気づき、それぞれの仕事や関心がある分野でできることがある、ということに気づくことができる。
350 Japan は、具体的なアクションを持っているけれど、WorldShift はそのアクションを人びととつなぐ存在でもあるし、究極的には意識の変換を促すメディアになっていく必要があると思っています。
古野:おっしゃる通りです。ダイベストメントは、政治と化石燃料産業のつながりが強すぎて政策が変わらない状況があり、私たちに何ができるのか?と考えたところから生まれました。3〜4年おきに投票するだけでは、状況は変えられない。そこで、この社会システムを成り立たせている自分たちのお金の流れを変える必要があるということに行き着いたんですね。
「政治家が何もやってくれないから社会が変わらない」ではなく、「自分たちのお金が社会をつくることに貢献していて、状況を変えることができる」に考え方を変える必要があります。私たち一人ひとりにはそれだけの責任がある。
一人では社会を変えられない、政府や大手企業が動かないと変わらない、というのがほとんどの人の認識だと思うのですが、政府が変わらない現状で誰かが行動をとらないと状況は変わりません。
ダイベストメントの活動の魅力は、誰でも参加できること。ほとんどの人が預金口座を持っていますし、自分の判断で預け先を選択することができる。自分と社会とのつながり、自分のお金の流れに気づくためのきっかけでもあり、そのつながりを見える化するための仕組みでもあります。小さな変化のように感じられるかもしれませんが、それが積み重なれば社会にインパクトが出せるのです。
■草の根運動が世界の金融の中枢へ!誰もがソーシャルイノベーターになれる
古野:行動を起こすとこういう意味があって、こういう変化が起こせるというストーリーを提示することが私たちの役割だと思っています。350.ORGの代表は、気候変動の状況を非常にシンプルな数字で説明しました。温暖化を2度未満で抑えるためには、燃やせる炭素は残りおよそ600Gt、現在ある化石燃料の埋蔵量のうち8割が燃やせないと。
アメリカのダイベストメントの例では、大学から始まり、宗教的な団体、自治体、保険会社や金融機関にまで影響するようになりました。最近ニューヨーク市が、年金基金の運用先をダイベストメントするという宣言を発表したことが報道されましたが、これは草の根運動が金融の中央部にまでたどり着いた結果です。
世界の金融の中心部がそのような宣言をしたということは、化石燃料の価値が無くなりますということを言っているのと同じ。しかし、そういう認識が日本で広まっているかといえば、まだ種が撒かれた状況です。ただ、ダイベストメントがより広いセクター、金融機関を動かす力になるのは確かだと思っています。
WorldShift 京都フォーラム
2018/02/04 (日)
13:00 – 18:00
京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)
谷崎テトラ:
1964年生まれ。京都造形芸術大学教授/放送作家。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。
http://tetra4.wixsite.com/home/profile
古野真:
1983年千葉県生まれ。5歳まで日本で過ごしオーストラリアのブリスベンに移住。クイーンズランド大学卒業後、カンボジアで国際協力ボランティアとして1年滞在。その後オーストラリアの環境省に勤務。7年間勤めた環境省を辞め、コンサルタントとしてサモアやパナマ、東ティモールなどで国際協力の仕事に従事。2015年に日本に戻り、環境NGO 350.ORG 日本支部を立ち上げる。
https://www.facebook.com/350Japan
http://linkedin.com/in/shinfuruno
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