人口増加、シンギュラリティ、食料・水不足問題、エネルギー問題… 未来に対しさまざまな社会問題が予測され、問題に向けてのたくさんのソリューションが求められている現代。理想や外枠の大きな話は語られていても、私たち一人ひとりがどういうあり方で、どう具体的に行動すればいいかといった議論についてあまり多くは語られていない現状があります。これからの社会に向けて、私たちは具体的にどういったマインドセットで、どういったアクションを起こせばいいのでしょうか?

そこで、一般社団法人ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン代表理事/放送作家/京都造形芸術大学教授の谷崎テトラさんと、国際環境NGO 350.ORGの日本支部 350Japan 代表 古野真さんのお二人にお話を伺いました。(松尾 沙織)

対談した古野真さん(左)と谷崎テトラさん(右)

■『WorldShift』で意識のシフトを『ダイベストメント』で最初の一歩を

月から見た地球

テトラ:1968年12月24日にアポロ8号が月軌道に到達し、人類が初めて外から地球を見た。10万年の歴史のなかで、人類が客観的に地球を見てから50年しか経っていないわけです。

それまでは月から見た写真はなかったから、イメージのなかで地球は丸いんだって語られていた。私たち人類は、外から美しい地球の姿を見て、そのかけがえのなさを知り、資源を循環させないといけない、壊すわけにはいかないと理解した。そこで大きな価値観や意識のパラダイムシフトが起きた。その意識の変化こそが WorldShiftの源泉 です。

僕は気候変動などの問題をまずは知ってもらうこと、そしてそこで考えるきっかけを得た人が、次の一歩を踏み出すこと、アクションにつなげることが大切だと思っています。そこに例えばダイベストメントがあるのかなと思います。

古野:入口でいうと、環境問題は環境分野の人しか関われないという雰囲気や、環境活動のイメージがまだある。それを変えないといけないと思っています。科学的な現状に基づいているものですから、どうしても真面目で真剣に関わらないといけないというのが前提にあるなかで、専門知識を持っている人しか関われないような空間になってしまう。

そこで私たちは、楽しく課題に向き合ってクリエイティブなアプローチで発信していこう、問題を伝えようとしています。例えば「アースマン」というキャラクターをつくったり、映像クリエイターさんと動画をつくったり、ライターさんと記事をつくったり、アーティストさんと絵を描いたり、実験しながら発信しています。

私たちの活動は、関わりたい人の個性やアイディアをサポートするかたち。決まったやり方だからっていうのではなくて、ゴールを達成するにはどんな方法があるかを広く持って、違った角度からやってみようというのを団体の活動のテーマに据えています。

入口になるもの、興味を引くものは人それぞれ。だから、一本線で発信していくと限られた人にしか受け入れられません。さまざまな働きかけ方があることによって、いろいろな人が関わることができるようにしています。

友澤健太郎さんが描いた気候変動をテーマにしたアート作品。左は気候変動に対し行動を起こした場合の未来、右は何もしなかった場合の未来を表現している

スタッフが活動に参加する理由は「自然が好きだから、守りたいと思ったから」その気持ちの表現として、それぞれの好きな自然の風景を集めて展示していた

テトラ:入口の多様性は必要ですよね。今回のフォーラムでもそういう多様なアプローチをしていますし、これからの社会を変えるための経済、金融やお金のあり方というのが大きなテーマになっています。

さらにはそれぞれのパートのテーマは、「まなぶ」「つながる」「うごく」となっていて、「まなぶ」のパートでは、東北大学准教授である佐藤正弘さんをお呼びしています。彼は「エコロジー経済学」の翻訳者でもありますし、AIの専門家でもあるんです。

そして、これからの時代にテクノロジーで上がった生産性によって得られたものを、いかに社会に分配するか、そこで重要となってくる「ユニバーサルベーシックインカム」についてを説明してくれるのが佐々木重人さん

また、マネーの資本主義から関係資本や信頼資本、もしくは自然資本と呼ばれるあり方へとこれから変わっていくにあたって、信頼による資本主義が最大化されていく社会を応援していく財団の仕組みをつくった、公益財団法人信頼資本財団 理事長/アミタホールディングス株式会社 代表取締役の熊野英介さんもお呼びしています。

そして「つながる」のパートでは、電通の並河進さんをモデレータに、文明哲学研究所の田中勝さん、映像作家の丹下紘希さん、勉強家の兼松佳宏さん、ミラツクの西村勇也さんでトークセッションを行います。

さらに「うごく」のパートでは、社会を変えるために心の不動の点をつくるという意味で、心のイノベーションについて、京都でもっとも古い禅寺である建仁寺両足院の副住職である伊藤東凌さんにお話いただきます。

そして、今回のフォーラム全体の司会には、ワークショップファシリテーションの第一人者である京都造形芸術大学副学長の本間正人さん大江亞紀香さんがつとめてくださいます。

Sustena LIfeより過去の開催の様子

古野:ダイベストメントは個人及び団体として単独で行うアクションですが、関心を持っている多くの人や団体がこういう理由で行動していますと宣言することでつながってムーブメントを引き起こし、社会にメッセージを届けることができる。その部分は WorldShift と似ていますね。

テトラ:そう。これからは世界で同じ意識の人がつながって発信していく時代。スウェーデンからは、バートゥーラさんというソーシャルキャピタリストフォーラムやインパクトジャーニーをコネクトしてきたキーパーソンも来日します。彼は、世界中のソーシャルアクションをつなげてきた人。今回のフォーラムでもたくさんの人に来ていただいて、皆さんがつながっていった先に、大きなムーブメントをつくっていきたいです。

 


【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加



オルタナ51号では寄付を特集

第一特集は「2020年、寄付3兆円規模へ」

オルタナ51号(12月18日販売)では、「寄付」を特集しました。寄付を社会課題の解決に不可欠な武器ととらえ、戦略的に寄付を集める国内外の取り組みを紹介しています。詳しくはこちら

お知らせ オルタナSでは、社会問題の解決につながる活動を行う若者を応援しています。自薦・他薦は問いませんので、おすすめの若者がいましたらご連絡お待ちしております。記事化(オルタナS/ヤフーニュースほか)に加えて、ご相談の上、可能な範囲で活動の支援をさせていただきます。お問い合わせはこちらから