京都市は2016年にソーシャルイノベーションクラスター構想を掲げました。「社会貢献」や「信頼」、「関係性」といった「目に見えない価値」を経済で循環させていくことで、社会をよくしていこうと宣言してから、産官学金融協働のソーシャルグッドなプロジェクトやイベントなどをいたるところで行ってきました。(詳しくはこちら)
今回は、WorldShift コミュニケーターであり、環境番組の放送作家、京都造形芸術大学の教授でもある谷崎テトラさんと、日・中・韓の芸術文化や伝統文化などの促進や交流を目的とした『東アジア文化都市2017京都』を契機に、チェンジメーカーとなる創造的実践者を紹介するメディア『PLAY ON』を立ち上げた、一般社団法人リリース共同代表の桜井肖典さんを訪ねました。
2018年2月4日、京都造形芸術大学内にある京都芸術劇場 春秋座で「Worldshift京都フォーラム2018」が開催されます。観光だけでなくソーシャルムーブメントもますます盛り上がりを見せる京都。この動きの渦中にいるキーパーソンのお二人に、変わりゆくこれからの時代に向けて必要な視座、意識のあり方についてお話を伺います。今日から4夜連続でお届けします。(松尾 沙織)
動画:
https://www.youtube.com/watch?v=OpFwK-YRiDM&feature=youtu.be
◆残酷な地球の現実と美しい生態系との出会い。その対比から見えてきた人類が向かうべき未来
桜井:テトラさんが今の活動に出逢ったきっかけについて聞いてもいいですか?
テトラ:僕は放送作家の仕事を25年やってきたんですが、「ウゴウゴルーガ」とか「浅草橋ヤング洋品店(ASAYAN)」とか、いわゆるテレビ番組のゴールデンの番組をしていたんです。1995年に、番組のネタを探しにインド、アフリカ、南米を旅しました。そこでは、その後の人生のテーマとなるような地球の現実や、世界の現実を見たんです。
インドの本当の貧困地域、足が不自由な人たちやホームレスの人がたくさんいるところも見たし、アフリカの砂漠化していく現実や、そこの人たちが先進国からくる人たちを憎悪の眼差しで見ているところも見ました。それは命の危険を感じるくらいの憎悪。
そして決定的なのは、南米のアマゾンのケロ族の集落に行ったときのこと。何週間か過ごして、圧倒的に美しい生物多様性の自然、何百年も続いてきた伝統的な文化や歴史を見たときに、文明の古い部分でなくて新しい部分を見たんですよ。
彼らの植物や動物、命への純粋な視線。幸せの定義。彼らは飛行機も宇宙船もないけれども、とても洗練された人たち。人類が彼らのようなマインドセットに到達することが、未来必要だと思ったんですね。
ここであまりの世界の美しさを感じたがゆえに、帰りの飛行機で涙を流すぐらい感動しましたね。先住民の長老が吹いた口笛を思い出すだけでも泣けてきたり。僕のなかでは大きな感情の高ぶり、静かだけど大きな変化が起こったことを感じました。一体自分が東京に帰ってきて何をするんだろうと思ったんですね。
◆『BeGood Cafe』と『Earth Day Tokyo』ができるまで
そのときすでに、それまでと同じような番組をやるイメージはなくなってて、今の自分に何ができるかを考えたときに、環境番組なら作れそうな気がしたんですね。20年前の当時、僕は世界の問題の知識がまったくなかった。今まで環境活動の人たちを横目で見ていたけど、ちゃんと話を聞いたことがなかったから、そういう人たちにちゃんと話を聞こうと、そんな番組を作りたいと思ったんです。
それで1996年に帰国して、1997年に京都議定書が出て、そこで地球温暖化を知るわけです。今でこそ誰もが温暖化は知っているけど、当時は気候変動や温暖化はまるで知られていなかったし、僕も知らなかった。
今までの温帯が熱帯になるんだったら、サンバでも踊って楽しくやればいいんじゃないのくらいに思っていたけど、そうではないと。食料問題でもあるし、そこから砂漠化が始まり、生物多様性が失われ、病気が増え、さまざまな社会を崩壊させていく。
それによって今度は、国家間の紛争すらも起きて環境難民が生まれ、資源を巡って争いが起きる。さまざまなことが関係していることがわかってきたんですね。でも、そのことを一生懸命番組にし始めるとネガティブな気持ちになってしまって、自分も落ち込んでしまう。
そこで、解決策やソリューションを持っている人をインタビューしていこうと、世界中のエコビレッジを巡り始めるんです。1998年からオーストラリアのクリスタルウォーターズ、イギリスのフィンドホーン、イタリアのダマヌール、アメリカのアルコサンティなどを回って、そこでの知恵を学び伝え始めるんですね。
転々としながら、パーマカルチャーや地域通貨、そういった制度をつくるための民主的な議論の仕方も学びました。ここで起きていることは、人類の未来のアイディアとヒントの塊だということがわかった。これらのことを広めようと始めたのが『BeGood Cafe』、そして2000年に東京で始めたのが『Earth Day Tokyo』だったんです。
そしてこの流れから2008年リーマンショックがあって、単なる環境だけでなくて経済と社会を結びつけた文明の転換が必要だなった。それで今の『WorldShift』の動きに関わるようになったんですね。
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【WorldShift 京都フォーラム】
2018/02/04 (日)13:00 – 18:00@京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)
谷崎テトラ:
京都造形芸術大学教授/放送作家 1964年生まれ。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。プロフィール詳細はこちら:http://tetra4.wixsite.com/home/profile
桜井肖典:
1977年生まれ。2000年よりデザインコンサルティング会社を経営後、企業や自治体との事業開発を経済における広義のアートと位置づけ、京都を拠点に年の半分近くは国内外を移動しながら「芸術と社会変革のあいだ」で、ひと・もの・ことの営みを幅広くプロデュースする社会芸術家であり起業家。共著に『青虫は一度溶けて蝶になる(春秋社)』がある。一般社団法人RELEASE; 共同代表、オンラインメディア『PLAY ON』編集長、京都市ソーシャル・イノベーション研究所コミュニティ・オーガナイザー。http://release.world
取材協力:shiny owl cafe