「遺伝するかもしれないから」「私の障がいが理由でいじめを受けるのではないか」「親としての威厳が保てない」――。このたび、身体・精神・知的障がいがある当事者306人に出産・子育てに関するアンケートが実施された。子どもがいない人の約半数が出産を願う一方で、約7割が出産や子育てにおいて「障がいがハードルになる」と回答している。当事者が抱える本音とは。(オルタナS編集長=池田 真隆)

障がい者が出産・子育てに対して抱く不安を聞いた

この調査を行ったのは、障がい者の就労支援などのソーシャルビジネスを展開するゼネラルパートナーズ(東京・中央)の調査・研究機関「障がい者総合研究所」。回答者の71%は子どもがおらず、そのうちの44%が子どもを授かりたいと回答している。

約半数が子どもを授かりたいと回答

このように、出産を願う人の割合は半数に迫るが、一方で65%が出産において「障がいがハードルになる」と考えているようだ。その理由を見ると、遺伝や薬の影響、身体特性を心配する声が多い。

・遺伝性の病気による障がいのため、子どもにも病気が遺伝する可能性ある(男性/視覚障がい)
・薬の副作用で胎児に何かしら後遺症が残らないかが心配(女性/統合失調症)
・出産まで自分の足で体重を支えられない(女性/上下肢機能障がい)

約7割が出産において障がいがハードルになると回答

また、出産だけでなく、子育てに関しても70%が「障がいがハードルになる」と回答している。特に、親が障がい者であることを子どもに理解してもらうことの難しさや、自身の障がいが原因で子どもがいじめられてしまうことへの不安が多く見られた。

・授業参観や集まりなどで我が子が他の子どもたちの親と接し、「自分の親はできないのに他の親はできること」「外見が自分の親は変わっていること」などに精神的ショックがありそう。いじめの原因にもなりかねない(男性/体幹機能障がい)
・子どもが学校に行く年齢になった場合、自分の親が周りとは違うということで落ち込んでしまった際の受け皿がない(女性/下肢機能障がい)
・周りの子どもたちのお父さん方は、ほとんどがフルタイムで働いている中、自分だけがアルバイトしかできないという境遇をどう子どもに分かってもらうか(男性/神経症・不安障がい)

また、今回の調査では、実際に子どもがいる人に対し、出産・子育てを経験した前後で、障がいによるハードルへの印象が変わったかを聞いている。その結果、「想像していた通りだった」という回答が4割と最も多く、「想像していたよりもハードルは低いと感じた」という回答も3割あった。

これら「想像していた通りだった」と答えた人からは、「事前学習のおかげ」(女性/心臓機能障がい)や「パートナーや両親の協力」(女性/聴覚障がい)が理由として挙げられている。

また、「想像していたよりもハードルが低いと感じた」と答えた人からも、「夫婦がお互いにできることをコツコツ行うことで不安が解消された」(男性/下肢機能障がい)という声が聞かれた。

このほか、「子どものためなら何でもできると思い、覚悟で子育てするから乗り越えられる」(男性/下肢機能障がい)、「工夫次第で思っていた以上にできることがあった」(男性/視覚障がい)などの声が挙がっている。

障がいによるハードルへの印象は、出産・子育ての前後で変わらない人が最も多く、想像していたよりもハードルが低いと感じた人も3割いた

今回の調査結果について、障がい者総合研究所の中山伸大所長は、「障がいによるハードルの印象が想像よりも低いと感じた人については、パートナーや周囲のサポートを得ているケースが多いようです。このことから、周囲の理解や支援により、障がい者の子育ての負担を軽減していくことが求められます」と話した。

■ゼネラルパートナーズ社が行った障がい者の出産・子育てに関する調査の結果はこちら

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