国内最大規模のソーシャルビジネスプランコンテスト「みんなの夢AWARD」の初となる地方版が3月17、岩手県陸前高田市で開かれた。「復興支援から復興ビジネスへ」をコンセプトに掲げ、7人のファイナリストがビジネスプランをプレゼン。グランプリには、農業を通したリハビリで高齢者の所得向上計画を提案した富山泰庸さんが輝いた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

グランプリを受賞した富山さんと陸前高田市の戸羽太市長

グランプリを受賞した、富山さんは調剤薬局の運営などを行うロッツ(岩手県大船渡市)を、2011年8月に起業。高齢者へ農業を通したリハビリを行い、所得倍増を狙ったプランを発表した。

日本全国に展開できるビジネスモデルをつくり、「復興請負人」になりたいと力を込めた。富山さんには、最大500万円の出資交渉権が贈られた。

富山さんは、「一番うれしかったのは、会場に来ていた160人の高校生たちが全員『いいね』のプラカードを挙げてくれたことです」と喜びを語った。

「高齢者には理解していただけると思っていましたが、子どもたちにもサポートしてもらえたことはとても大きかったです。これからの陸前高田は高齢者が元気で、かつ子どもたちが超高齢化を理解した上でどう活躍するかがカギになりますので、このアワードを機に、市民の皆様と交流して、一緒にまちづくりをしていきたいと思います」。

陸前高田市の戸羽太市長は、「素晴らしいアイデアばかりだった」と評価。アイデアをこのコンテストで終わりにしないで、しっかりと実現までサポートしていきたいと話した。

「みんなの夢AWARD in 陸前高田」は、公益財団法人みんなの夢をかなえる会と陸前高田市の共同プロジェクト。

プレゼンを聞いて、共感した企業はプラカードを挙げて応援の意思表示

開催にあたって、昨年10月から、同市で、ソーシャルビジネスに関するセミナー「ソーシャルマネジメントカレッジ」を展開。「企業のミッション、ビジョン、戦略のつくり方」や「NPOや地域おこし協力隊向けに地域ならでの強みを生かした事業戦略の立て方」などについて教えてきた。

今回のファイナリストは、このセミナー参加者から選ばれた。それぞれが陸前高田市の地域資源を生かした「夢」を描き、具体的なビジネスプランに落とし込んだ。

米崎町大和田牡蠣養殖代表の大和田信行さんは、牡蠣養殖の近代化とイタボ牡蠣の養殖を実現させ、牡蠣養殖の革命家になりたいと訴えた。

乾燥フルーツComeCome代表の新沼真弓さん(竹駒町)は、地域資源を通じて、震災の教訓を伝え、三方よし社会をつくるプランを発表。合同会社ぶらり気仙代表の鍛冶川直広さん(小友町)は、広田湾の海産物の価値を高める「地域活性ビジネス」を考案。

村上製材所専務の村上英将さん(矢作町)は、木材需要をつくり、次世代に託せる山づくりを掲げた。特定非営利活動法人りくカフェ理事の及川恵理子さん(高田町)は、健康活動を広げて「市民健康応援団」になりたいとアピール。

企画制作代表の昆野玲さん(東京)は、壁や困難を乗り越えて、人が集まるコミュニティーをつくり、「企画実現プロデューサー」になりたいと強調した。

各ファイナリストのプレゼンが終わるごとに、その取り組みに共感した協賛企業がプラカードを挙げ、一般観覧者は「いいね!」と書かれたカードを掲げた。会場一体となり、ファイナリストたちの夢を応援した。

審査では、「社会性」と「地域経済への貢献」が重要視され、観覧者の投票と審査委員の合議の結果、各賞が決まった。準グランプリには、及川さんが選ばれた。減塩・低カロリーランチの開発などが評価された。

及川さんとグランプリの富山さんは副賞として、同市が中心市街地に建設を計画している「チャレンジショップ」を利用できる権利も獲得した。来年は、みんなの夢AWARDの地方版を10カ所以上で開催する予定。


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