タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆疑いのない春

植民地時代は花が咲いていただろう壁の前にフラットに潰れた車が置いてあった。車に轢かれた大ガエルが、さらに何台もの車に轢かれて干物のように路上に放置されているようだった。塗料が所々はがれていたが、それは紛れもないライトブルーのプジョーだった。

「まいった」と小室が顔を歪めた。裁判官がピーターに尋ねた。「リオ」ピーターが誇らしげに裁判官に正対して言ってから小室を見た。裁判官は末広を見た。
「イエスサー」
「ウィーアーオールミステイクン」とオシロが英語で言った。

裁判官は満足した顔になった。だからと言って何も変わらなかった。ピーターが勝って日本人が負けても、ダットサンがプジョーでも。刑量だって変わらないだろう。監獄で引きずる鉄の球が白からブルーになることもないだろう。

皆が口裏を合わせて白のダットサンと言う事が、そしてそれが覆っても、、、、しかし冤罪はこんなことから起きるのだ。しかもすごく簡単に、勘違いや口裏合わせからでも。そして何の損得も、事件へのかかわりのない人によって、、、、
ベースボール頭のあの被告だってシロかもしれないのに、、、、

「シロ、シロ、シロだー」シロシロと二回言おうとしたが声にならなかった。
三回目に叫んだシローは声になった。
「ワットイズシロ?ダイスケ」リズの声が顔の上から聞こえた。馬を柵のなかに放してから戻ってきたリズの顔が末広の顔の上に合った。末広は畑の法地で寝転がっている。
「シロ?シロイズホワイト。」
「アイ ノー わかってる」
「アンド シロイズイノセント。無罪」
「ユーアーイノセント、オーライ」

日差しが強くて爽やかで、高原に位置するナイロピの様だった。リズの顔がもっと近づいてきた。エンジンの音がする。パーンと撥ねるような不完全燃焼の音がした。リズは顔を末広から離して下の方を見ると軽トラが戻ってきた。バースデーが尻尾を振って迎えに走る。降りて泥まみれの前足で二人のズボンを汚してから末広たちの方に戻ってからまた車の方に向かっていった。それを3回繰り返すと二人が末広たちの所にやってきた。

「社長、すぐ撤去しろなんて言っています」末広は立ち上がった。立ち上がって尻を叩いた。リズが背中の草を叩いた。「気持ちのいい風が吹き上がって来るじゃねえか」
色々な鳥が梢にいた。そこは疑いもなく春だった。

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