日本国内では、1年間に投入される食資源は9千万トン。そのおよそ三分の一が食品廃棄物として排出され、その中でまだ食べられるのに廃棄されてしまう食品(食品ロス)は、年間500万〜800万トンに上ると言われています。
一方、日本のコメの収穫量は年間約850万トン。つまり、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品(食品ロス)の量と、コメの収穫量が、ほぼ同じという現状があります。(JAMMIN=山本 めぐみ)
■まだ食べられるのに廃棄される食料を引き取る
「食は、いのちへとつながるもの。まだ食べられるのに廃棄されてしまう食べ物を、必要な人たちに届けたい」。そう話すのは、認定NPO法人フードバンク関西(兵庫)代表の浅葉(あさば)めぐみさん(70)。
阪神芦屋駅から徒歩5分。静かな住宅街の一角にある事務所兼倉庫にお伺いすると、そこにはたくさんの種類の食料品が入った段ボールが、天井に届くまで積み上げられ、ところ狭しと並んでいました。
聞くと、これらはすべて企業や個人から寄贈された食料品。販売期限切れや包装破損などの理由で商品としては扱えなくなったものや、個人で使い切れなかった食料品だといいます。
「生肉や生魚、牛乳などの日配品(鮮度が重要で、毎日店舗に配送される食品)を除く様々な食品、いずれも賞味期限内の、れっきとした”まだ食べられる”食品です」と浅葉さん。
では一体なぜ、まだ食べられる食品が廃棄されてしまうのでしょうか。
「食品関連企業では、配送途中に箱が壊れたり、ラベル印字ミスがあったりすると、商品として扱えなくなります。店舗が決めた販売期限を過ぎてしまった売れ残り品は、賞味期限が切れていなくても店頭から回収されます。ほかにも、賞味期限が近づいた企業の災害備蓄食品や売る時期を過ぎた季節商品なども、食べ物としては全く問題なくても、企業側からすると商品ではないので、廃棄の対象です」
「『支援を必要とする人達に無償分配する』という約束のもと、企業との間に信頼関係を築き上げ、こういった食品を寄付していただいています」
■見栄えが悪い食品、売れ残り品も廃棄の対象
企業からはほかにも「味には全く問題ないけれど、見栄えが悪くて売ることができない」という食品も引き取っているといいます。
「たとえば、検品落ちしたスモークチーズ。一旦燻製の香りや色がついてしまうと、練り直して再製品化できない。スモークがまだらになったものは見た目がよくないので、検品の際にはじかれてしまうが、味は正規品となんら変わらない。蒸す際に皮がはがれてしまった豚まんなども、商品とならないので引き取らせていただいています」
「他にも、たとえば活動当初から取引していただいている尼崎の外資系量販店からは、日々約200kgのパン野菜果物の売れ残りが出ています。他のスーパーからも販売期限を過ぎてしまった食品などを受け取っています」と浅葉さん。
■食品ロスは、一般家庭からも
食品ロスが発生するのは食品関連企業だけではなく、家庭からもたくさん発生しており、個人からも食品の寄付を受付ているといいます。
「家庭から捨てられる生ごみの4分の1が手つかずの食品で、その中のさらに4分の1は賞味期限が切れていないという調査結果があります。個人からは、食べきれない食品・余った食品を持ち寄り、フードバンクがそれを回収する『フードドライブ』に取り組んでいただき、直接宅配便で送っていただくというかたちで食品を回収しています」
■寄贈された食品は、子ども食堂や福祉施設、母子家庭などへ
フードバンク関西が引き取った食品は、一体どんな場所へ届けられるのでしょうか。
「神戸や大阪を中心に、児童支援施設やホームレス就労生活支援団体、障がい者の通所作業所やDVシェルター、老人介護施設など、食料を必要とする人達を支える福祉団体・施設、子ども食堂など100箇所あまりに、月に1〜3回、無償で届けています」
「他のNPOと連携して貧困母子家庭約40世帯に毎月1回宅配で送ったり、行政からの支援要請を受けて、困窮する市民へ緊急支援食品として届けたりすることもあります」と浅葉さん。
「食品を引き取る際に、企業や個人の方からも『捨てないで済んでよかった。ありがとう』と言っていただけるし、受け取った方からも『ありがとう』の言葉が返ってきます。食べ物は、いのちの糧。それを最後まで活用することは、とても意義のあること。食べ物を集めて回るのも、配って回るのもとっても楽しい」
■フードバンクが守られない、日本の法律の現状
食品ロスを減らし、必要としている人に届ける──。素晴らしい活動ですが、日本国内でこの活動が広がらない背景には、法整備の遅れという課題が潜んでいると浅葉さんは指摘します。
「フードバンクに関しては、日本は後進国。アメリカ、カナダやヨーロッパ諸国、韓国では、食品メーカーに対して、食べられるけれど商品価値のないものは寄付を促す法律があり、フードバンクに余剰食品が流れるような仕組みが出来ていますが、日本はこういった法整備がまだありません」
「もう一つは、もし企業がフードバンクに寄付した食品で、何らかの事故が起きてしまった場合、フードバンク先進国では、食品提供企業とフードバンクは免責される法律や公的賠償制度があるが、日本には寄付をした企業や活動団体を守る法律がまだ整っていません。日本がフードバンクの後進国にならざるを得ない一つの理由です」
「日本の食品自給率はたった39パーセント。足りない部分を海外からの輸入に頼り、また貧困などによって満足に食にありつけない人がいる一方で、まだ食べられる食品を次から次へと廃棄しても良いのか、というのがこの活動の根本的な問題意識」と語ります。
■フードバンクを応援できるチャリティーキャンペーン
チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)はフードバンク関西と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。
「JAMMIN×フードバンク関西」コラボアイテムを1アイテム買うごとに、700円がフードバンク関西へとチャリティーされ、廃棄される食品を救出し、食料を必要とするところへ無償で届けるための資金になります。
JAMMINがデザインしたデザインに描かれているのは、袋にいっぱい入った食ベ物が、手から手へと渡される姿。食べ物をつなぎ、いのちをつなぐフードバンク関西の活動をストレートに表現しました。
チャリティーアイテムの販売期間は、5月28日〜6月3日までの1週間。チャリティーアイテムはJAMMINホームページより購入できます。
JAMMINの特集ページでは、食品ロスが発生してしまう背景にある課題やフードバンク関西の取り組みについて、浅葉さんへのより詳しいインタビューを掲載中!こちらもチェックしてくださいね。
・「もったいないのおすそわけ」。余った食べ物を引き取り、必要な場所へ届け、いのちをつなぐ〜NPO法人フードバンク関西
山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。2018年3月で、チャリティー累計額が2,000万円を突破しました!
【JAMMIN】
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