当NPOの事務所から徒歩8分のところに石森小学校があります。運動会準備で、連休前の5月2日朝6時から1時間、4名の地域住民で校庭の草刈り作業を終えたところに教頭先生から「砂場の木枠が壊れて、運動会や記録会を前に使えず困っている」との相談。理由は市内企業の寄付で砂をダンプ2台分入れてもらう時にハマッてしまい重機で引き上げる際に壊れ、それから立ち入り禁止にしているが、善意なので補修依頼も気が引け、予算も無いので手付かずとのことでした。(特定非営利活動法人故郷まちづくりナイン・タウン事務局長=伊藤 寿郎)

昭和45年頃。入学式の朝、母と共に学校に向かう

その話を聞いた草刈メンバーの一人が、携帯電話をかけはじめました。
まずは、木枠の材料となる電話の古い木柱があるかを友人に電話。持っている人を知っているので確認してもらい了解を取り付けた。次に、木柱の運搬用トラックを確認。承諾の回答。更に、木柱の組み込み加工・設置は、行政区長を通じて工務店の社長に連絡。了承を得た。しかも、これらは全て無償奉仕であることを、依頼する時点で了解してもらっているのである。

この間約30分、午前7時過ぎの校庭で、まさに朝飯前のできごとであった。
実は、砂場の木枠は28年前に電話の主がPTA役員時代に設置したことを思い出し、当時のメンバーに相談したのだ。若い頃の活動が今も活かされていることに感心した。

縮小する地域における課題解決方法は、課題を共有できる関係性が鍵であり、そこから解決力が広がる。その資源のひとつが過去からの長い【つきあい】だと思った。一人一人の技術や資源は小さくても、それらをつなぐ仕組みがあれば、解決できる。それが田舎だ。

【最小の資源を最大化する=つきあいと言う先行投資】

これが地方での災害やトラブルへの対応力を高めることに直結していると言える。
言葉で綺麗に語られる「協働」とは違う一般市民の柔軟でしなやかな、ロングスパンで創りだされる多様なチカラを、強固な単年度基準の組織理論でうちのめすようなことが無い時代を迎えたい。

年寄りや先輩との飲み会が「無駄だと思える世代」も、「昔話だけに花を咲かせる世代」も互いに交流できたなら、【いつか役に立つつきあい】で守るべきものを守れる時が来るのだろうと思った朝でした。

『地域のチカラ』で補修された砂場では、記録会に向けて走り幅跳びに汗をかく子どもたちの笑顔と歓声が響いている。