人間の勝手な事情から、無造作に捨てられてしまう小さな命。適正飼育や終生飼養を理解しないまま猫を飼うと、「もう飼えない」「繁殖しすぎた」「近隣住民の迷惑になっている」などといったトラブルにもなりかねません。
北海道初の保護猫カフェとして2008年にオープンしたとあるカフェ。「一匹でも多くの猫に希望(Wish)を」という思いで、2011年にはNPO法人を設立し、猫の保護・飼い主探しのほか、啓発活動にも力を入れています。(JAMMIN=山本 めぐみ)
■保護猫の過ごしやすさを一番に考えた施設
「一匹一匹に、必ず幸せになってほしいし、そうなるために、確実なご縁をつなげている」。そう話すのは、「NPO法人 猫たちを守る十勝Wishの会」代表の原田美加(はらだ・みか)さん(49)と、理事の青砥美穂子(あおと・みほこ) さん(49)。北海道帯広市で、飼い主のいない猫の保護を目的としたカフェ「Cat Cafe Wish」を運営しています。
「在籍している猫はすべて保護猫で、彼らと新しい飼い主さんとの出会いの場を提供する保護施設。猫カフェと言ってはいるが、私たちが飲み物や食べ物をお客さまに提供するということはなく、お客さまから入場料を頂戴するかたちで運営している」と理事の青砥さん。大きな窓があり、日当たり抜群のカフェ内の広場では、保護された猫たちがゆったりとくつろいでいます。
「カフェは猫にとって居心地が良いかどうかを考えた造り。日当たり、広さや過ごしやすさ、気温なども注意しながら、現在は約80匹の保護猫が過ごしている」と代表の原田さん。しかし、夏場こそ快適なものの、冬になると厳しい寒さが行き場のない猫たちを襲うといいます。
原田さんによると「十勝は北海道でも極寒地域のため、凍えたりせずに快適に過ごしてもらえるよう暖房器具が必須」。寒さ対策に灯油料金だけで月に20万円ほどの経費がかかってしまうといいます。
■引き取り手を見つけるのが難しい猫たちも保護
「Cat Cafe Wish」に在籍するのは、健康チェックやウイルス検査、ワクチン、避妊去勢手術を済ませた健康な猫たちだけではありません。1階の猫広場には、猫エイズウイルス感染症(FIV)の猫が生活しているほか、一般公開していないケアルームには、障がいがある猫や、カフェに来て間もない猫たちが全部で26匹ほど生活しています。
「障がいがある猫をかわいがってくださる方がいればそれに越したことはないが、つきっきりのケアが必要な猫を飼いたいという方はなかなかいないのが事実。引き受けた時点で、きっと最後まで面倒を見るんだなという覚悟と責任感を持って、他の猫たちと変わらず深い愛情を注いでいる」と原田さん。
ケアルームで生活する「くるくる」と「とんとん」兄弟も、そんな中の一匹。
「『くるくる』と『とんとん』は、不妊去勢をせず39匹にまで繁殖した多頭飼育の現場からSOSを受けて引き取った25匹のうちの2匹。近親交配による先天性の障がいにより、『くるくる』は全身を自分で支えることができず、くるくると転がってしまう。『とんとん』は、後ろ足が不自由で、前足しか使うことができない。二匹とも排便がうまくできず、スタッフが毎日こまめに掃除したり、シャンプーしたりしている」(青砥さん)
「猫といっても皆が健康で、引き取り手がすぐに見つかる仔ばかりではない。保健所で引き取り手がなく最終的に残ってしまった仔や障がいのある仔の受け皿として、引き取れる時には引き取り、彼らが安心して過ごせる場所を提供したいと願っている」(原田さん)
■人間の正しい知識と理解が、不幸な猫を減らす
「猫たちを守る十勝Wishの会」は、引き取った猫の保護・譲渡活動のほかに、猫の適正飼養にかかわる相談や情報提供、動物愛護精神の啓発活動も行なっています。
最近では、高齢者やその家族からの相談が増えているといいます。
「『おばあちゃんが1人で5匹ぐらい飼っていたが、病院や施設に移ることになり飼えなくなった』『高齢の親が野良猫を餌付けしていたら、ものすごい数になって近隣に迷惑をかけている』などという相談がある。『避妊手術を受けさせるのはかわいそう』『かわいいから』という理由で猫をどんどん増やしてしまったら、最終的に命を脅かされるのは猫たち。ただかわいいからではなく、猫たちの幸せを考え、正しい知識と責任感を持って猫と接してくれる方が増えることを願い、啓発活動にも力を入れている」と青砥さん。
「間違った理解や悪しき慣習さえ改善すれば、猫にとって住みやすい、すばらしい環境になる土台が、ここ北海道にはあるはず。今後も、地道に活動を続けていければ」と話します。
■どんな猫も、生きる権利がある
「動物が好きという気持ちでこの活動を始めたが、実際にカフェをオープンして、好きという気持ちだけでやっていくのは簡単ではないと痛感することも多くあった」と原田さん。
それでも活動を続けてこられたのには、支援者やボランティアの方たちの温かいサポートと、保護した猫たちが素敵な飼い主に巡り会い、その後幸せに暮らす様子を見てきたからだといいます。
「どんな猫も、生きる権利がある。一匹一匹、確実に幸せになってくれたら」と目を細めます。
「一匹一匹の猫に物語があり、特徴があり、個性がある。団体としての譲渡数は多くはないが、引き取っていただいた後の長いお付き合いも考えながら、一匹一匹が確実に幸せになれるよう全力を尽くしたい」(原田さん)
■保護猫たちが毎日食べるゴハン。彼らの食費をサポートできるチャリティーアイテム
チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は「猫たちを守る十勝Wishの会」と1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。
「JAMMIN×猫たちを守る十勝Wishの会」コラボアイテムを1アイテム買うごとに、700円が「猫たちを守る十勝Wishの会」へとチャリティーされ、「Car Cafe Wish」の保護猫たちの食費となります。
一匹あたり、1日に必要な食費は100〜150円。Tシャツ1枚で700円のチャリティーとなり、1枚の購入で、保護猫1匹の約1週間分の食費となります。
JAMMINがデザインしたコラボアイテムに描かれているのはリラックスした猫の日常のワンシーン。「猫たちにとってベストな環境」に力を入れる「猫たちを守る十勝Wishの会」の活動を表現しています。
チャリティーアイテムの販売期間は、6月25日~7月1日までの1週間。チャリティーアイテムはJAMMINホームページより購入できます。
JAMMINの特集ページでは、「Cat Cafe Wish」の猫たちをより詳しく紹介しています。こちらもあわせて、チェックしてくださいね。
・「一匹でも多くの猫に希望を」。保護猫に寄り添い、彼らの幸せで豊かな暮らしをサポート〜猫たちを守る十勝wish の会
山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。2018年3月で、チャリティー累計額が2,000万円を突破しました!
【JAMMIN】
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