都心から電車で約2時間、千葉県いすみ市に「パーマカルチャーと平和道場」がある。ここは生き方や暮らし方、「生かし合う関係」を学ぶとともに実験する場所だ。ここで暮らしている人は一体どんな暮らしを送っているのか。(武蔵大学松本ゼミ支局=永嶋有芽・武蔵大学社会学部メディア社会学科2年)

パーマカルチャーと平和道場を訪れた

消費社会そして貨幣経済の中で私たちは何気なく生活している。働いて稼いで、そのお金で食べ物やものを買っている。そしてそのものがいらなくなれば捨て、またお金を稼ぎ新しいものを買う。現代ではお金がなければ生きていけない。

しかしそれを覆したのがパーマカルチャーである。「パーマカルチャーとは言葉では表現できないあり方や生き方であり、生かし合う関係性を作る。だから人間の社会にはゴミという言葉があるが、実際ゴミは存在しない。もともとゴミという概念を作ったのは人間である。ゴミは本来資源であり、その資源を生かしていないのである」。こう話すのは「パーマカルチャーと平和道場」を手掛けるソーヤー海さん。

ソーヤー海さん

実際にパーマカルチャーと平和道場を私は訪れたが、ほとんどお金を使わずに生活していた。母屋は古民家を再利用したもので、床も廃材から作られたものであった。研修生の個々の家もすべて廃材で手作りであった。

そして冷蔵庫もなく、料理をするときもガスではなく薪を使う。食にもお金はほぼかけていない。なぜそうできるのか。

自分たちで野菜などの作物を作ったり、近所の人から食べ物をもらったりしているからだ。特に近所の人から食べ物をもらうということには、近所の人と草刈りや挨拶などの交流をしているからこそ、信頼関係を築くことができているのだという。

もともとはソーヤー海さんも、9人の研修生も外からやってきた人たちである。だからこそまずは受け入れてもらうためには信頼関係を築くことが大切なのである。「地道な人と人との関係を築く。これもパーマカルチャーデザインで関係性を生かしあうこと」とソーヤー海さんは言う。

私がお話を伺ったその日はちょうど研修生9人が3カ月の研修を終えて、卒業式の日であった。そこで研修生の一人である、寺社下茜さんに今後についてお話を伺った。

「ここを離れるということはこの経験を生かしてどう広げていくかが重要である。私もこういった活動を広げてやっていきたい」と寺社下さんは語った。

ソーヤー海さんにも千葉県いすみ市でのこの3カ月間の取り組み、そして今後についてお話を伺った。「やはり、大金も必要なく、専門家も必要なく、自分たちで家を作れるようになりたい。そうすればこの活動を日本中に伝え、広げることができる。これを学ぶ場所にここ『パーマカルチャーと平和道場』がなれたらいい。ただ、その発想はあるが、実行はまだまだこれから」と語った。

千葉県いすみ市の「パーマカルチャーと平和道場」は無事最初の3カ月のプログラムを終えた。しかし、ここからが始まりなのである。毎回が実験。どこを、何をどうしていけばよいのか。つねに考え、次に生かす。これから、「パーマカルチャーと平和道場」がどう変わっていくのか、そしてここの研修生がどうその経験を生かしていくのか、楽しみである。


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