武蔵大学松本ゼミ支局はこのほど、北海道釧路市の長期滞在者や移住者受け入れの促進を行う、「釧路長期滞在ビジネス研究会」への取材を行った。釧路は羽田空港から1本で行ける便の良さもあり、近年長期滞在者や移住者が増えているという。夏場でも最高気温の平均が21℃前後で避暑地として最適で、テレワークにも力を入れる。実態を追った。(武蔵大学松本ゼミ支局=小野 文寛/福迫 大樹・武蔵大学社会学部メディア社会学科3年)

釧路長期滞在ビジネス研究会への取材風景

釧路市長期滞在ビジネス研究会は、昭和55年から人口減少しつづけているという現状を改善するために平成18年度から長期滞在者や移住者の受け入れを始めた。

平成21年度からは民間の不動産会社やホテル事業者と連携して行っている。だがそれだけでは長期滞在者を満足させることはできないので、レンタカー会社やカヌー会社、コワーキングスペースの経営をしている会社など合計47社と連携してこの事業を行っている。

現在平成30年から新たな街づくりの指針である「街づくり基本構想」の計画があり、市としての重要度も高まっている。

釧路長期滞在ビジネス研究会での主な取り組みは2つである。それはお客様の誘致と受け入れ環境整備だ。

具体的にはホームページを作って情報発信、ガイドブックによるPR、首都圏や関西圏でのPRイベントへの参加などで誘致を行っている。関西では京セラドームで北海道暮らしフェアという、移住者向けのイベントでブースに来た人へ釧路の良さをアピールしている。

周辺自治体と共同で、広域での情報やパンフレットを集め情報発信をし、釧路だけで終わらないようにしている。

受け入れ環境整備の事業としては、研究会所属の不動産会社などと長期滞在者が来やすくなるために滞在施設などをどうすべきかなどを会議して改善していく。

長期滞在者向けに空き物件などを改修工事する際には、その改修費などを市が補助する「長期滞在施設整備支援事業」も行っている。

釧路市民は博物館や美術館の入館料などを年齢での制限はあるものの割引される制度がある。長期滞在者により市民に近い感覚で過してもらいたいとの思いで、それを持っていれば市民への割引と同じ条件で同じ分だけ割り引いてくれるという「くしろステイメンバーズカード」というものがある。

その他の活動としては、来たお客さん向けに学習講座を開き、またその方たちどうしが交流できる場を設けたりしてリピーターやファンを増やしている。

これらの効果もあり、平成23年~28年まで北海道移住体験ちょっと暮らしの実績が6年連続道内No.1である。

そのような活動を行う中で徐々に釧路に長期滞在や移住をする人が増えている。平成28年度は合計1311人、在日数22105日だった。特に子育て終わりのシニア層の方が多くみられるようだ。

また先ほど関東圏や関西圏での誘致活動を行っていると述べたように、関東圏や関西圏からのお客さんが多いようだ。関東圏は羽田から釧路まで飛行機が6往復するという便のよさもあり、増えているのではないかと清水さんは予想している。関西圏では長期滞在型の団体ツアーで来るお客さんが多いという。

来てもらえるためにアピールできるポイントはいくつかある。まずは避暑地として最適であるということ。夏場でも最高気温の平均が21℃前後というかなり涼しい場所であり、それだけでも夏場の長期滞在者はかなり多いようだ。また釧路は都市まで車で1,2時間ぐらいの場所に位置しており、海外の避暑地のような機能があり、かなり過ごしやすい。
 
だが、現在の長期滞在者の訪問状況としてかなり夏場に偏ってしまっていてその他の季節は伸び悩んでいる。そこで今後は滞在の通年化というのが目標の一つだ。

まずは、滞在の通年化のためにアピールするポイントが二つある。春には花粉がないということなので、花粉症の人にはとても過ごしやすい。そしてもう一つは世界三大夕日の一つが釧路市の夕日であるという。

特に秋から冬にかけて空気が澄んでいるためとても綺麗に見える。また季節によっても違う見え方がする。

もう一つの目標がシニア層だけでなくいろいろな世代に来てもらうということだ、そのためにテレワーク(パソコン1台あればどこでも働ける)のための場所を作る事業を始めた。コワーキングスペースの利用の制度などを援助して少しでも釧路で働けるような仕組みづくりを引き続き行っていくそうだ。

取材を通して、釧路でこのような取り組みがあったことを知り、それは地方創生を考える上でとても重要であり、他の団体とは異なる視点での活動もされていたので、今後注目される事業となるだろう。


【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加