環境問題の解決へ科学技術で取り組むベンチャー企業ピリカ(東京・渋谷)は、海を漂うプラスチックゴミの流出経路の解明へ向けて調査を開始した。流出経路を特定することで、プラゴミ問題を解決する「エンジン」になりそうだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)
 

開発した装置「アルバトロス」を海面に浮かべて浮遊物を回収する

7月9日朝、東京湾でプラゴミの流出経路を特定するための調査が行われた。海面に調査装置を浮かべては取り出す作業が繰り返された。「この中から、プラスチックだけを取り出し、成分を調べ、元となる製品や流出経路を推定していきます」とゴミを手にした男性は説明した。

この男性は、ピリカを創業した小嶌不二夫社長。京都大学大学院エネルギー研究科を休学し、世界を旅していたときに、大量に捨てられているゴミを目にした。「ゴミ拾いを気軽にできれば世界が変わるかもしれない」と考え、帰国後ゴミ拾いアプリ「ピリカ」を開発した。

同アプリでは、拾ったゴミを撮影して、投稿できる。こうすることで、「時間」「数量」「位置情報」などが可視化され、利用者のゴミを拾うモチベーションを上げた。

今ではユーザーは世界82カ国60万人にまで広がり、これまでに投稿されたゴミの数は8000万を超えた。ゴミ拾いSNSでは規模は世界最大を誇る。

陸のゴミ問題に取り組んできた同社が次に目を付けたのが、海のゴミ問題だ。陸地から海へ、どのようにプラスチックごみが流出していくのか。_その実態を明らかにする調査手法の開発を進めている。

同社が開発した調査装置の名称は、「アルバトロス」。海のプラゴミを食べてしまい犠牲になっているアホウドリの英語名から名付けた。この5月に完成させ、実態調査に乗り出している。

同社が開発した「アルバトロス」

装置の全長は1.5メートル程度で、海面に浮かせると、スクリューが回転し水を吸い込むようになっている。吸い込んだ先には、網があり、浮遊物だけを回収できる仕組みだ。

集めた浮遊物は、同社の社員が自然物を取り除き、残ったプラスチック片の素材を調べ、色や形状から製品を推定する。この装置では海水1立法メートル単位でのプラゴミの数量を測ることができるため、流域ごとの数量を調査し、流出経路を絞り込んでいく。

回収した浮遊物からプラスチックを取り出す

従来の海のプラゴミの調査では、船で沖へ出て、大きな網を引き回す手法や魚の腹を切って調べる方法が主流だ。だが、この装置は1人で持ち運べるサイズで、スクリューで海水の流れを人工的に起こすため、海水の流れを待つことなく3分程度で調査を終えられる。小回りが利くため、自治体などの許可を取る回数も減り、船では入れなかった場所などを調べることもできる。

現在までに東京湾の湾岸や関東・関西の河川を中心に20カ所の調査を終えた。採取した浮遊物からプラスチックを取り出し、成分などを調べている段階だ。

流出経路が特定できれば、具体的な解決策を打ち出せる。ストローやペットボトルを禁止する動きは起きているが、「海洋に流出しているプラゴミの分析は十分ではないので、それらが主原因とは言い切れない。原因が分かれば建設的な議論ができるようになる」(小嶌社長)。

プラスチックの素材を調べて、製品を推定する

環境省や大学機関が海洋プラゴミの調査研究を行ってきたが、簡単かつ安価な調査方法はまだ確立されていないという。同社の小嶌社長は、「調査地点や測定方法のサンプルを増やし、実験を繰り返さないといけない。この問題は自社だけでは解決できないため、多くの協力が必要」と訴える。

サンプル数が求められるが、アルバトロスはまだ世界に一台しかない。将来的には台数を増やしていき、調査方法をマニュアル化し、各地域で希望者が調査を行えるようにする考えだ。調査方法も、釣りのような動きで、装置を海面に浮かべるだけなので難しくないという。

今後、より多くの協力者を巻き込むための施策を打っていく。一定のデータが集まれば一般公開し、研究機関などと連携しながら海のプラゴミの種類や流出経路を絞り込んでいく。

・ピリカについてはこちら


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