ミレニアル世代(1980年以降の生まれ)向けの新しい服の売り方がある。服の製造にかかる材料費、縫製費、デザイン費などすべての費用を公開した上で、商品に3つの販売価格を付けた。消費者は製造過程でかかった各費用を理解した上で、支払う金額を選べる仕組みだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)
この販売方法を考えたのは社団法人TSUNAGU代表理事の小森優美さん。小森さんは東日本大震災を機に、物の背景に関心を持ち、2013年に自身で草木染めのインナー&ファッションブランド「Liv:ra(リブラ)」を立ち上げた。オーガニック素材を使い環境配慮にこだわった。
ブランドを運営するにつれてこんな疑問を抱くようになった。「本当に良い物が、お金を持っている人にしか買えないのはなぜか」。
「エシカルやサステナビリティは次世代へつなげていかないと芽が育たたない」とし、若者とエシカルファッションブランドをつなげるために、今年7月にTSUNAGUを立ち上げた。
まず、若者とエシカルファッションを遠ざけている大きな要因である販売価格を下げる方策を考えた。そこで思いついたのが、一つの商品で3つの販売価格を持たせる売り方だ。
ポイントは、服の製造過程にかかわる費用をすべて公開していることだ。消費者は、生産背景とその費用を知った上で、支払う金額を選ぶ。本物を試したい人向けに「ミライの種(原価)」、プロジェクトに共感した人向けに「ミライの花(適正価格)」、長期的なビジネスの発展・プロジェクトの継続を応援したい人向けに「ミライの実(応援価格)」の3つの価格を設定した。
オーガニック素材を使っているが受注生産にしたことでコストを下げた。在庫を持たずに、小売りも介さずにメーカーと消費者を直接つなげたことで、価格を抑えた。
この販売方法で期間限定でさまざまな生産者とコラボして商品を開発していくという。第一弾は、徳島の高級本藍染め、海部藍(あまべあい)染めの職人と組んだ。本藍は、蓼藍(タデアイ)を収穫し、藍を発酵させた染料「すくも」を作り、藍建て(樫の木などの灰や日本酒などを入れて混ぜ、微生物の働きを活性化させ、ふすまや小麦の皮で糖分を加える)をすることで完成する。染料を作るだけでも9か月もかかる。
この伝統的な染料で、ワンピースやプリントTシャツ、オーガニックソックスなど5つの商品をつくった。デザインしたのは、ミレニアル世代の若者たち。若手クリエイターによるチーム「FLAT.」と東京都立国際高校の3年生有志によるチーム「H.O.P.E」と組んだ。
各商品のデザイン案を彼女たちに考えてもらい、小森さんがアレンジした。小森さんは若者と協働することで、「希望を感じる」と言う。「彼女たちの世代では、社会貢献を特別なことではなく、当たり前なこととしてとらえている。さらに、共感力が格段に高いので、商品の買い方が従来の世代とは違う。友人を応援するために、商品を購入する人が少なくない」。
現在、クラウドファンディングCAMPFIREで注文を受け付けている。最高級の藍染めとオーガニック100%スーピマコットンの光沢が美しいワンピースは、2万1000円(ミライの種)、2万5500円(ミライの花)、2万9500円(ミライの実)で販売している。
どの商品もクラウドファンディングで注文を受け付けているため、目標金額を超えないと、作らない予定だ。クラウドファンディングの締め切りは10月20日まで。
プロジェクト概要:【ミレニアル世代がお届け!】日本が世界に誇る”本藍染め”
期間:2018年8月31日(金)~10月20日(土)
・本藍染めワンピース
ページ URL:https://camp-fire.jp/projects/view/89839
・本藍染め手描きプリントTシャツ
ページ URL:https://camp-fire.jp/projects/view/90481
・本藍染めオーガニックソックス
ページ URL:https://camp-fire.jp/projects/view/90486
・本藍染めロゴプリントTシャツ
ページ URL:https://camp-fire.jp/projects/view/94985
・本藍染めソックス・海部愛染めフリンジピアス
ページ URL:https://camp-fire.jp/projects/view/94989