中途向けの採用情報から「募集要項」を外した会社がある。ソーシャルビジネス業界最大手のボーダレス・ジャパン(東京・新宿)だ。人事担当者が求職者と面談し、経験やスキルに関係なくビジョンや価値観に合わせた仕事を提案する仕組みに変えた。同社は創業11年目、8カ国で19の社会的課題の解決につながる事業を展開している。(オルタナS編集長=池田 真隆)
同社が中途向け採用から「募集要項」を外したのは8月23日の夜。9月2日までのわずか11日間で、100人からの問い合わせがきた。同社の人事担当である石川えりかさんは、「募集要項を設けていた7月には15件の応募があり、その数でも多いと感じた」と明かす。
募集要項のない中途採用について、同社では「求職者が過去の経験にとらわれず、未経験でも自分に合った新しい仕事に出会うことができる採用方法」と説明する。採用のステップとしては、まず人事担当者と面談して、求職者のビジョンや価値観などをヒアリングする。その後、人事から19の事業から求職者に合った仕事を提案する。それを受けて求職者が興味を持てば選考に進む仕組みだ。
募集要項を外した経緯として、石川さんはこう説明する。「実際に仕事を始めてみると、その仕事の経験やスキルがあるから活躍できるわけではないことに気付いた。活躍している人の共通点は過去にとらわれずにこれからに向き合っている人。そういう人と出会いたいと思った」。
同社では、通年で中途採用を行っている。広告代理店の企画営業から新規事業のマーケターに転身した社員や、ウェディングプランナーから店舗開発・設計に転身した社員などがいる。石川さんは、「未経験の仕事に挑戦して、その道のプロになった社員は少なくない」と言う。