秋晴れの空のもと、三嶋神社(愛媛県西予市)では秋の大祭・復興祈願祭が執り行われた。西日本豪雨による洪水で抜け落ちた壁は新しくなり、浮き上がりはがれていた床は張り替えられ、その上で地域の中学生が扮する巫女による浦安の舞を奉納する。氏子総代は「被災直後の状況をみたときは20年はかかるのではないかと思っていましたが、こうして今日の日をむかえることができました。ここを中心に地区の復興を進めていきたい」と目を潤ませながら挨拶をした。(寄稿・福地 波宇郎)

西日本豪雨により被害を受けた愛媛県西予市野村町。その中でも被害の大きかった三島地区に鎮座する三嶋神社は洪水により屋根まで水につかり床や壁、社務所の屋根などが流されてしまう事態となった。

被災1か月後の神社の様子、壁はすべて剥がれ落ちた

被災したのは7月7日。宮司の和氣さんや総代の宇都宮さんは、最初はとても10月に行われる秋の大祭は執り行えないだろうと思っていたという。総代や氏子たちで後片付けにあたっていたが、ボランティアには近隣住宅の片づけを優先してほしいと依頼をすることは控えていた。

少しずつ状態が落ち着いた9月、ようやくボランティアに依頼をすることとなり、西予市で活動する災害緊急支援ネットワーク・一般社団法人オープンジャパンを中心に社会福祉協議会からのボランティアが神社の復旧作業に入った。

再建された神社でお祭りがはじまる

ボランティアと並行して本業の大工たちも片づけが終わったところから急ピッチで復旧工事に着手。各地で業者不足といわれ仕事のひきもきらない中、地域のかなめとなる神社を再興し、野村の風物詩である秋祭りをなんとしてでも行おうという気概をみせた。

そして10月14日、お祭り当日を迎え、復興祈願祭も執り行われた。作業当初からかかわっていた宮城県から来たボランティアの一人は「こうしてお祭りが開かれてきらびやかな風景を見ることができました。来年もぜひ見たいです」と語った。

浦安の舞を奉納する地域の中学生たち

神事が終わると、境内には靴メーカーのキーン・ジャパン社がブースを出し、被災者への靴の配布を行った。同社は災害支援を社是としており、これまでも同地域への支援を行っていた。この日も地震で被害を受けた北海道厚真町、西日本豪雨被災地である広島県安芸区でも配布を行ったのちお祭りに合わせて野村へと到着した。

冬になれば雪が積もるこの地域、冬用の防寒靴や子供用の靴の配布に住民は「本当にありがたいし、靴もかっこよくて選ぶのも楽しい」と笑顔を見せた。

KEENによる靴の配布

同社が支援しているオープンジャパンも境内にテーブルを出し、カフェを開いて参拝に来た地域の人たちの憩いの場とした。同団体が活動してきた以前の被災地からも支援物資が届き、九州北部豪雨により被害を受けた福岡県東峰村からは地域の名産である小石原焼の陶器が、紀伊半島豪雨の被災地である和歌山県那智勝浦からは紀州の梅干しが仮設住宅などで暮らす人たちの手へと渡っていった。

本来ならば地域を一周する3基の神輿も泥だらけになっていたが磨き上げ、1基を出して境内を1周した。「来年こそはまた町を回りたい」と氏子は口々に語り、まだ被災の爪痕も色濃く残る町で復興への希望をつむぐ祭りとなった。


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