生活に溢れる日用品や食品に入れられる添加物などの安全性を確認するために、また医療などの分野でも動物実験が行われていることを、皆さんはご存知ですか?

世界では概算で1億1,530万頭、日本でも2,000万頭(推定)の命が、毎年動物実験によって失われているといいます。代替法も少しずつ開発されているといいますが、密室で行われる動物実験、その実態はまだまだ明らかになっていません。動物実験の廃止を求めるNPOに話を聞きました。(JAMMIN=山本 めぐみ)

身近に存在する動物実験

「ドレイズテスト」と呼ばれる眼刺激性試験。ウサギの片方の目に試験物質を強制的に点眼し、シャンプー等化粧品が目に入った際の刺激を調べる。刺激が大きいものだと、ウサギの目が腐ってしまうことも。2009年頃の撮影 ©PETA 

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「動物実験廃止のための活動と聞くと過激に聞こえるかもしれない。今すぐ動物実験をゼロにするのは無理でも、まず動物実験が実は身近にあるという事実を知り、考えてみてほしい」

そう話すのは「NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA・ジャバ)」(東京)の職員である山本三保(やまもと・みほ)さん(56)。JAVAは、動物と人間が共に生きられる豊かな社会を目指し、世界の動物愛護団体と連携をとりながら、動物保護活動に取り組んでいます。

動物実験の実態を広くたくさんの人に知ってもらい、その廃止を求める活動をメインに行いながら、動物実験廃止のために代替法の推進や転換を求める活動にも力を入れています。

お話をお伺いした、JAVAの山本さん(右)と石島さん(左)

日本では、動物実験の実態を知らない消費者がほとんど、と山本さんは指摘します。

「例えば化粧品の場合、EU諸国では動物実験についての知識をしっかり持った上で、消費者が買うか否かを選択している。動物実験の実態を知ると多くの人がショックを受ける。ウェブサイトやパネル展などを通じ、実態をもっとたくさんの人に伝えたい」

「動物実験反対=タブー」の現実

ヤケドの実験のためにバーナーで焼かれた犬。焼けた身体が金網につかないように中腰の姿勢をとり続け、横になって休むこともできない ©HSUS

「動物実験に反対することが、暗黙のうちにタブーとされているように感じる」と話すのは、JAVAボランティアスタッフの石島伊代(いしじま・いよ)さん(31)。

「『動物実験はかわいそうだけど、人間の生活には必要不可欠なものだから仕方ない』という認識が刷り込まれているのではないか。知る機会がないから、事実を知らないまま『動物実験に反対=タブー、過激』というイメージにつながってしまうような部分があるのではないか」と疑問を投げかけます。

2017年日本動物実験代替法学会大会にて市民公開講座を企画・開催。「動物実験の1R<代替>をめざして」というテーマで研究者、省庁担当者、文学者、マスメディアとパネルディスカッションを行った

「化学物質が使われているものについては、ほとんど全ての製品が動物実験を経てつくられていると言っても過言ではない。動物実験というと薬や医療の実験というイメージが持たれやすいが、何もそれだけに限らない。サインペンなどの文房具から、洗剤やクリーナー、化粧品、子どもの玩具に至るまで、ありとあらゆるものに動物実験が行われている」(山本さん)

痛みや恐怖に苦しめられたのち、失われる命

実験に使われた後、動物たちは殺処分される。殺されたウサギとモルモットたち ©ONE VOICE

では、実際にどのような動物実験が行われているのでしょうか。

「実験の内容によって使う動物の種類が変わってくる。ヤギは体が大きいので心臓の研究に使われることが多く、サルは人間に近い動物と言われ、医薬品の開発や医療技術の研究などに使われる。マウスは最も実験に使われる動物で、ありとあらゆる研究に用いられる。このマウスを含めラット・モルモット・ウサギは化粧品の実験によく使われ、ネコは神経系の実験、イヌは毒性試験、外科手術や移植研究、歯科の研究にも使われる」(山本さん)

ヤギは人工心臓の実験に使われることが多い。また家畜として品種改良のための実験にも使われる ©CFI

動物実験の実態はまだまだ明らかになっていないことが多いといいますが、ウサギを使った動物実験の例を語ってくれました。

「シャンプーなどが人間の目に入った時の目への刺激を調べる試験に、ウサギが用いられている。ウサギは体の割に目が大きく、また生態として涙腺が発達しておらず、涙が上手に出せないことが理由。試験物質が流されにくく、実験しやすいという点がある。3〜4日間ウサギを拘束して、定期的に試験物質を点眼する。刺激が大きいものだと、ウサギの目が腐ってしまうこともある」

眼刺激性試験のために首かせで体を固定されたウサギ ©CFI

「私たちの目に入っても十分痛い化粧品だが、市販のものはあくまで原料を薄めて配合したもの。ウサギの目に試験のために入れられるのは、薄められていない原液。当然だが、痛ければこすったり舐めたり暴れたりする。そうさせないために首かせで体を固定して、顔だけ出した状態で点眼を繰り返す。自分で目をこすることもできず、痛みで暴れ、首の骨を折って死んでしまうウサギもいると聞く。実験を行った後は、皆殺処分される」(山本さん)

心理学の実験等にも動物の命が用いられる

米ウィスコンシン大学マディソン校で2015年まで長い間行われていた「音像定位実験」。ネコには頭部を固定するステンレス製の器具がとりつけられ、頭蓋骨に穴があけられ脳に電極が差し込まれた。3ヶ月後には手術の傷が原因と思われる細菌感染をおこし、実験も失敗に終わり、このネコは殺され解剖された ©PETA

「このことは逆に、実は私たちの周りには危険なものが多いということも教えてくれる」と山本さん。「消費者として『使わない』という選択も時には必要」と話します。

一方で、動物実験は日用品のみならず心理学や栄養学、生物学、生理学の分野でも行われているといいます。小中学校で行われる解剖実習など、教育分野でも動物実験が用いられるケースは少なくありません。軍事兵器や軍事訓練のためにも動物実験が用いられています。

「動物実験は密室で行われるため、その実態をなかなか知ることができない。内部告発などで情報や写真が表に出ることもあるが、そうたやすく得られるものではない。動物実験の廃止を求める活動をしていてさえも、動物実験の実態の多分半分以上もわかっていないのではないかと感じる」(山本さん)

この犬は心理的ストレスを引き起こす実験のために、足を繰り返しハンマーで打ち砕かれた。麻酔も何の手当てもされていない。動物実験に反対する英国の団体NAVSの当時の代表であったBrian Gunn氏が、1985年に日本の研究施設を視察した際に撮影 ©Brian Gunn/IAAPEA

様々な実験に用いられる小さな命。「何も知らなかった時は『動物実験は必要なものだから仕方ない』と見て見ぬふりをしていた」と語る石島さんは、ある1枚の写真を見て、意識が変わったといいます。

「小さな犬がこちらを見ているが、足に大きなダメージを負っている写真。ストレスの心理状態を調べるために、何回も足をハンマーで砕かれ、何の手当もなく、ただ実験に使われる。こんなことが、現実で起きている。この写真を見た時、この犬の痛みや悲しみを『仕方ない』で片付けることができなくなった」(石島さん)

代替法により、動物実験はなくせる

皮膚刺激性試験に使われるウサギ。化粧品のためによく行われる動物実験のひとつで、他にモルモットもよく使われる。毛を剃られて試験物質を塗布され刺激や腐食の状態を観察される。傷を負わされてそのうえに塗られる場合もある ©ONE VOICE

近年は、動物実験に代わる代替法の開発も少しずつ盛んになってきているといいます。動物実験をなくすためには、「動物がかわいそう」という感情的な主張だけでは通らないと石島さんは話します。

「動物実験の代わりにどのような代替法があるのかということも含め、倫理的な面と科学的な面から『動物実験はなくせる』ということを主張していく必要がある。私たちは専門家ではないが、代替法の学会へ参加したり、海外の団体と連携して、他国で既に廃止になった実験に対して日本でも廃止するように省庁へ働きかけたり、海外の専門家の協力してもらって代替法を大学などの教育現場に提案したり、地道な活動を続けている」(石島さん)

2017年、「学校から解剖実習をなくそう!キャンペーン」の一環で、小中高学校の学習指導要領から「動物の解剖」の記述をなくすことを求めた約2万筆の署名を馳浩文部科学大臣(当時)に提出

「特に化粧品の分野では代替法の開発も進んでおり、ヒトの培養細胞や精巧な皮膚モデル、他にもコンピュータシミュレーションや、MRIなどによる画像診断、データ解析を使った方法などが出てきている。政府や市民団体の支援もあって高度な技術を駆使した代替法が世界各国で採用されているが、十分とは言えない。代替法の開発や普及を進めるためにも、私たち国民の『動物実験ではなく代替法で』という声が重要」(山本さん)

動物実験の実態を一人でも多くの人に知ってもらうためのチャリティーキャンペーン

2017年4月、渋谷・代々木公園で毎年開催される<アースデイ東京>にブース出展。この年は「動物愛護法の改正を求める嘆願署名」を集める。2018年1月までに10万筆以上を集め、39名の国会議員を介して衆参両議長に提出した

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、JAVAと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルのチャリティーアイテムを販売します。

「JAMMIN×JAVA」コラボアイテムを1アイテム買うごとに700円がチャリティーされ、動物実験の実態を一人でも多くの人に知ってもらうため、街頭で配布するPRティッシュの制作費用になります。

「動物実験の実態を伝えるためにパネル展などの啓発活動を行っているが、PRティッシュを配布することでより多くの人に実態を知ってもらい、そしてまた一緒に活動する仲間を増やすことができたら」(山本さん)

「JAMMIN×JAVA」1週間限定のチャリティーアイテム。ベーシックTシャツのカラーは全8色、価格は3,400円(チャリティー・税込)。他にキッズ用Tシャツやパーカー、バッグなども販売中

JAMMINがデザインしたコラボデザインに描かれているのは、人間と同じように、ありのままの姿で日常を生きる動物たち。それぞれの生き物が、同じ瞬間を何にも縛られることなく、苦しんだり痛めつけられたりすることなく自由に生きてほしい、という思いを表現しました。

チャリティーアイテムの販売期間は、11月19日〜11月25日までの1週間。チャリティーアイテムは、JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、動物実験の実態について、山本さんと石島さんへのより詳しいインタビューを掲載中!こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

身近な日用品開発の背景で犠牲になる動物たちの存在を知って。動物実験の廃止を求めて〜NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)

山本 めぐみ(JAMMIN):
JAMMINの企画・ライティングを担当。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたオリジナルのデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。2018年9月で、チャリティー累計額が2,500万円を突破しました!

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